第8話 不思議な庭のアリス
「ラティナ様は、まさか……」
(ドキッ! バレましたか?)
リオにリゼルの
だが、リオの目には
「素敵な彼氏を見つけたとか」
「……」
勘違いをしていた
「え⁉」とクエスが
「そんな訳ないでしょ」
リオの勘違いにサラが
「でも…サラちゃん、ラティナ様だってもう恋をしたい年頃だよ~」
リオが言った”恋”という言葉にラティナの心の中から引っかかりを感じた。
(私がリゼル様に恋を?)
「だからと言ってあんな時に恋する出来事が起きる訳がないでしょう。そうですよね? ラティナ様」
「ふぇ? あ、はい、違います」
「ほら、見なさい。ラティナ様も違うと言ってるわよ」
「だって~……」
「
「うぅ~な、
「
「まあまあ、二人共、
「……そうですね。すいません、お見苦しい所を見せてしまって……」
「ごめんなさい……」
「いえ、私は気にしていません。それよりも久しぶりにクエスさんとお話がしたいです」
「……そうでしたね。それでは私とリオは今日話した、ルブルーショによって追放された行方不明の人達の名前を取りまとめにしますので、ラティナ様はクエスさんとお
「ごゆっくりと……」
サラとリオの
するとサラは立ち止まり、ラティナの方へ向けた。
「その前にラティナ様。一つだけ言わせてもらいます」
「ふぇ……?」
「私達にも言えないお悩み
「……本当にすいません……」
「いえ……本当に怒っている訳ではありません。
「そんな
「ですが私もリオも人のために考えて最善に尽くします。悩み
サラは再びお辞儀をし、部屋から出た。
「……ラ、ラティナ…今日はどっちからでどこから話せばいいんだ?」
サラの言葉を受けてラティナが呆然しているとクエスがたどたどしい口調で話しかけた。
「……ふふ…それではいつもの様にクエスさんから今回の任務先での起きた
クエスは、頭が良くなく優柔不断で人と話すのも余り得意ではない。その
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ねえ、ラティナ様は本当に恋人を作らないのかしら……」
「はぁっ……またそんな
ラティナの部屋から出た後、リオの
「だってラティナ様と同じ聖女のポリッチェ様やマオ様にリアン様にはとても仲の良い相手がいるのよ。このままだとクエスさんがラティナ様の恋人になっちゃいそうだよ。
「……私もそんな不純な
「それにラティナ様は言ったわ。五年前、修道生時代のわたしが運命の彼氏を見つけて
リオには婚約者の男性がいる。ただし、今から
最近では母の代わりに家事を行う男性が増えてきたがそれが出来ない人の所へ
そのため、リオは結婚するのは三十歳になるまで保留で相手も承諾したのであった。
サラも自分が認める頼りになる後任の補佐官が就くまで結婚を断固拒み続ける気であった。
「そもそもラティナ様に結婚は無理な話なのよ。エンジェロスだから……」
「だから! 私はエンジェロスだからという理由だけで異性と恋愛をしないのが嫌なの‼ だって……それじゃあラティナ様が可哀そうじゃない……」
納得の出来ないリオは
「お…落ち着きなさい、リオ。あなたの気持ちは分かるけど…これは仕方のない
エンジェロスも元は人間。心があれば恋だってする。しかし、次の時代への新しい命である子を産む
これまでの歴史上、現在でラティナが誕生するまではエンジェロスから子が産まれる
「でもラティナ様はエンジェロスのお母様から生まれたお
「そうね……どうしてラティナ様を産む
サラはうつむいている親友の左肩に優しく触れた。
「リオ……ラティナ様を
「サラちゃん……」
「さぁラティナ様のためにも私達の今出来る
「うん……」
サラとリオの二人は再び歩き始めた。
(そりゃ私だってラティナ様の将来が心配だわ。でも…ただの人間である私達ではいつまでも支える
ただの人間と寿命も老いも無く、病気で死ぬ
サラもリオもいずれは老い、弱まり、現役から退くしかないであろう。善意の悟りを開いてエンジェロスへと転生しない限り。だが、サラはなろうという気持ちはあるが恐らく自分の性格ではエンジェロスにはなれないだろうという思いも在って半分諦めていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
クエスとの楽しい会話は彼女が話のネタを尽きてしまったので、終わりとなった。
クエスが部屋から出て行き、ラティナは一人となった後、再びリゼルの
(う~ん……好きかどうかは分かりませんがやっぱりあの人の
ラティナは
(ここはサラさんの言う通り、ジャンヌさん達に相談したいのですが、流石にリゼル様の
ラティナがいつまでも想い切れないもやもやと考えているとある物が目に入った。
それは部屋に無かった
「ここにこんな大きな鏡ありましたっけ?」
気になったラティナは鏡の表面を触れた。
すると触れた右手が沈み始めた。
「ふぇ…? ふわ? ふわわわ~⁉」
水の中に沈んで行く
吸い込まれた先にラティナが目にしたのは、一面緑の草が生え、
完全に鏡に吸い込まれ、ラティナは向こう側の庭の芝生へ倒れ込んだ。
「ようこそ、ラティナ=ベルディーヌさん」
ラティナは声がする方向に顔を上げた。
椅子の上に優雅に座る十歳
そこに香りの良い紅茶の匂いがした。
「わたしの名はアリス。一緒にお茶会にしませんか?」
「あ…はい……」
アリスと名乗る、目の前の椅子に座っている少女に誘われ、ラティナはつい釣られて二人だけのお茶会の参加に即答で返事してしまった。何故、
「ではお座り下さい。今、お茶をご用意しますので」
「はい」
返事をした後、ラティナはアリスと向い合せになる反対側の椅子に座った。
「ホワイト。ラティナさんの分のお茶を」
「はい、ただいま」
第三者の声が返事をした。
ラティナかの視点から右の方にいつの間にか奇妙な人物がティーポットとカップを持って立っていた。
その奇妙な人物とは、体は黒い
「どうぞ」
ホワイトとうい名前らしき
「ありがとうございます」
普通の人だったら
ラティナの眼下に置かれた紅茶から温かい湯気の中に混じった
「ふわぁ~美味しいです」
「ふふふ……良かった。その紅茶は私が育てた
アリスと言う名の少女も
ラティナはティーカップを皿の上に置き、今いる辺りの赤い
ラティナは次にアリスを観察してみた。見た目は、髪は長い金髪だが同じ金髪で直進的なストレートヘアーを持つジャンヌとは違いこちらはふんわりとしたウェーブがかかった柔らかそうなゆるふわパーマで、その頭の上に付けた、風や頭の動きに従い揺らして動く
「どうかしましたか?」
アリスはラティナに見られている
「あ…あの……
現在、精霊教会に認定され、所属している
妖精の国の
空の国の
和の国の
超人の国の
砂漠の国の
人獣の国の
娯楽の国の
湖の国の
夜の国の
眠れる森の
そして花畑の国を代表する
だが、ラティナは、リオから十三人目の癒療師が現世に存在しているという真実なのか嘘なのか定かではない
それが”世界の聖女”アリス=リデル。彼女の
「私がアリス=リデルだとしたら?」
「どうして
「それはね……」
アリスは口元に右手の人差し指を当てた。
「秘密です♪」
「……秘密……ですか?」
「それでは今度は私が質問をする番ですね。貴女の悩み事(こと)は何ですか?」
「そ、それは……」
ラティナは迷ったが、直(ただ)ちに決断した。
「実は……」
ラティナは三日前、アップグリーン・パークで起きた出来事、ディアボロスに襲われ、その次に機械化兵団という集団が現れ、カワキが殺され、自分が大量の血を見て気絶して彼の命を救えなかった
「そうか……それが
「はい…あの時、私が……いえ……
ラティナはあの時、今でも思い出すのがとても嫌に
脳も心臓も停止した以上、どんな重傷も再生できる聖属性の回復の理術だろうと
「私は…自分が情けないです……」
ラティナの宝石の
「
アリスはカップを置き、空いた右手を上に差し伸べた。
「人から進化したエンジェロスといえど神でもなければ万能でもありません」
アリスの
落とされた水がアリスの小さな掌から
「この
水が
「この
「ふえ⁉」
ラティナは話していない
「な、
「くすくす……ごめんなさい♪ 実は知っていたの」
笑いながらアリスの右手から
「
先程ラティナを
しかし、ラティナがこの世界に連れて来られた鏡も今アリスが持っている
「さて
「そ、それは本当ですか⁉」
驚きのあまり、テーブルに両手を置き、身を乗り出すラティナ。
「今その方はどこにいるのですか? ある場所というのは……」
「奴は危険だ」
ラティナが質問の最中にいきなり第四者の声が出た。
声は男性のものだが
「やあ。お初にかかる。私はマッド・ハッターと呼ばれている者。こう見えて商人さ」
「は、初めまして……」
自らを商人と自称しているが、
「彼…“
「あ…あの人は、
「なんでそう思うかね?」
「私と三日間一緒にいましたがちょっと怒りっぽいですがそんなに悪い人ではありませんでしたし、今記憶喪失ですよ」
「そんなの君が記憶喪失中の彼から見えるだけの範囲で勝手に思っているだけだ。今は記憶喪失でも過去は過去。私達は知っている。
マッド・ハッターは立ち上がり、ラティナを帽子の空いた穴から冷たく鋭い眼差しを見下ろした。
「今記憶を失っても人間を拒絶しているまま。近づく者は容赦なく傷付ける。そして何かの
ラティナはしばしの間だけ、顔を地面に向けて考えた。それから表情が、何か打開策を思いついたのか決断した顔へと変わり、帽子男の眼へと向けた。
「……そうなる前に……私がリゼル様を更生させます‼」
「そう簡単にいくと思っているのか? その前に君がリゼルに殺される」
「私は三日間もリゼル様の近くで過ごしました! 殺される
マッド・ハッターの帽子の頭がラティナの顔に近づき、穴から覗く冷たい眼光がより鋭く
「君は
マッド・ハッターから感じられる圧に押されながらもラティナは勇気を振り絞って答える。
「……確かに
「本気かね? なんでだね?」
「はっきりとした
「ふ……ふはははははは‼」
突然と腹を押さえて大笑いするマッド・ハッター。
「えっ……?
「ふぅ……それはそれで
「はい、それもまた正解のひとつ。それでこそ聖女ラティナ=ベルディーヌです♪」
両手を軽く叩いて拍手するアリス。
「実を言えばね、彼にはやってもらわなければならない役割があるのだよ」
「その役割というのは?」
「詳しい
「世界の命運? ……それってま、まさか世界が滅びるかもしれないという
「今世界は
「私ですか⁉」
「
「うむ」
アリスに名を呼ばれたマッド・ハッターは右手を握り締める。それから手を開くと何も無かった
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