第6話 狂った復讐者達
下水中の沈殿性物質と汚泥を分離・除去するこの場所、地下下水処理場の沈殿池施設は広いが天井の照明は全て点いてはおらず、現在では薄暗い場所となっていた。
そして照明が照らされていない暗闇から六人、ラティナとリゼルの前に姿を現した。
その内の一人は見覚えがあった。
「
悪い笑みを浮かばせた帝国軍少佐のカワキ=ハダイだ。
「…と
カワキと共に現れた残りの五人は
紺色のスーツとも軍服とも見える服を着ている
最後の
「久しぶりだね~、リンカ。二年間の眠りから覚めた気分はどうだった?」
リゼルを見てリンカと呼び、金髪の仮面の男の昔馴れしんだ友人の
「誰だ、お前ら?」
「誰だって……おれだよ、ザキ=クロトだよ」
「あの~リンカってリゼル様の
「……マジで?」
「マジです」
「説明していなかったが、あの娘の言ってる
カワキも答える。
「ぶははははははっ!!」
「なんで笑うんだよ!!」
リゼルは怒るままに叫ぶ。彼の心中はザキと他四人の顔を見てから
「そうだ、笑い
ヘルメットを
「リィンカァ~~、お前がオレ達にした
「そうだぁ~~!! てめぇが、てめぇがオレの…オレ達をぶった斬りやがったお
「殺してやる‼ 殴ったり、斬り返したりじゃ気が済まねぇ‼ バラバラにぶち殺してやるっけん‼」
ヘルメットの男も酔っ払っている
「おい、
「カワキ=ハダイ将軍だ!! 変なあだ名で呼ぶな‼」
リゼルに変な名で呼ばれてカワキは怒り出した。
「ごほん……こ奴らはある別の組織から賃貸として派遣された
「え? それってつまり、まさか……」
カワキが発した言葉の意味を理解し、ラティナは驚き、リゼルはより鋭くなった目付きで
「……つまり、お前は俺を裏切るという訳か……」
「ふん…仕方があるまい。お前が記憶喪失になってからというもののやる気を全く起こさない。そうならずとも聞けば以前のお前は扱いにかなり面倒だったという。ならばお前を殺して“魔神の紋章”を俺が新しい所有者になれば
「「 “魔神の紋章”?」」
「……キ、キキキキキィィィイイイィィィッ!!」
始めて聞く単語に首を
金属製のカメレオンの仮面、鋼鉄の皮膚を
「キィィィタナァーイッ‼ ゴミ、掃除ィィィィィィッ!!」
前へ大きく飛び出し、着地と同時に小柄な体に反して異様に長い両腕が変形して銃となり、
リゼルは右へ素早く足を動かし、迫り来る複数の針を避ける。後ろにいたラティナも慌てて左へ避けた。それから転んだ。
「モイ、ずりぃぞ!」
大柄の男が先に攻撃を仕掛けたモイという名らしい低身長の男、に怒鳴りつける。
それでも低身長の男は仲間からの文句も耳に入らないまま、リゼルに向けて針を撃ち続けた。
「キキキキキキキキキキキキキタナイッ‼」
(クソっ!
リゼルはモイの機械の
リゼルは走り続け、回り込みながら、やがてカワキの前を通り過ごした。
「な!? ちょ、ちょっと待てーーー!!」
針の連弾は止まらない。
さっきまでカワキの近くに居た四人の機械化兵達はリゼルの進路と目論みに気付き、離れていた。カワキが気付いた時は
「ぎゃああああああ!!」
カワキはそのまま針の
「……!?」
カワキの蜂の巣から血の花が激しく咲き乱れた壮絶な死に様を目の当たりにしたラティナは気絶をした。
リゼルは(ざまぁみろ…)と心の中でカワキを
針の連続撃ちが止まった。理導針銃に
リゼルは相手の弾が切れた
「オレ達もやらせろ!」
だが、他の機械化兵も動き出す。
大柄の男は同じくクォーツを動力に回転する
リゼルも返り討ちにしようと両手の指全てを硬く黒く鋭く熱い鉤爪に変えて向かって来る敵を返り討ちにしようと動く。
ザキの爪が振り下ろされ、リゼルの爪が受け止める。
「ぐっ!!」
触れた
リゼルが電流で怯んでいる間、今度は
リゼルは三人の攻撃を何とかかわし続けている。
「うぃぃぃっ、ザキ、シュン、邪魔だ!」
『邪魔はお前だけんっ、ゴウ! このクズは俺が
相手の三人は獲物を一番に採りたいという熱意が高いため、連携が取れないみたいだ。
リゼルは今度こそ反撃しようと
「ぶわっ!?」
リゼルを突き飛ばした白い液体はヘルメットの男、シュンが電気鞭から消火器を強化した物に取り替え、それから吹き出したのが化学消火剤だ。
「う~ん……はっ! 私、気絶してしまいました……あ、リゼル様!!」
気絶から目を覚ましたラティナはリゼルの
「おっと! 近づくと危ないぜ、美しいお嬢さん」
ラティナの後ろにいつのまにか居た五人の内一人の優男みたいな機械化兵、マッキーに肩を
「いいか、お嬢さん。あいつは人類を滅ぼそうとした悪党でおれ達は正義の味方でなんだ。だから、あいつを殺さないと世界は平和にならないんだ」
「正義の味方……」
ラティナはカワキを殺しても気にしていない様子の機械化兵団を正義の味方とはとても信じられなかった。そこで理術能力の《心眼》を発動させて心の本性を覗いてみた。
リゼルは暗い闇の中から燃え上がる炎。純粋なる怒りと憎しみの炎。
対して機械化兵達の心は怒りと邪悪なる
彼らはリゼルを一気に殺さず、じわじわと痛め付けて苦しめるつもりの
これらを見比べてラティナは即時に腹を決めた。
(止めなくては……!)
再び、消火器の化学消火剤をかけられ、リゼルの動きが止められた
その時、リゼルの前に割って入る人影が現れた。マッキーの手を振り切って駆け付けたラティナだ。
ラティナは《アンペイン・ローゼ》を具現させ、一枚分離させた花弁状の羽をザキに貼り付かせ、残り五枚のみ合わせた傘形態で
だが、《アンペイン・ローゼ》の防御能力は決して完璧ではない弱点があった。
《アンペイン・ローゼ》は“水”と”風”と”土”そして“聖”属性のマナで構築された物で“火”属性、高熱には非常に弱い。
《アンペイン・ローゼ》の花弁の盾が理導鋸で斬られたが非常に柔らく厚い壁とあらゆる力を弱める効力によって回転する鎖状の刃を止める事が出来た。そんな守りの壁を突如、突き破られ、ラティナの腹を貫いた。
ラティナは《アンペイン・ローゼ》を具現させ、一枚分離させた花弁状の羽をザキに貼り付かせ、残り五枚のみ合わせた傘形態で
だが、《アンペイン・ローゼ》の防御能力は決して完璧ではない弱点があった。
《アンペイン・ローゼ》は“水”と”風”と”土”そして“聖”属性のエレメントで構築された物で“火”属性、高熱には非常に弱い。
《アンペイン・ローゼ》の花弁の盾が
《アンペイン・ローゼ》の盾と彼女を打ち抜いた物の正体は高熱を帯びた金属の
モイの頭部から身体そのものが
ゴウとザキがリゼルに攻撃を加えようとした瞬間、モイも
「ラ…ラティナーーー!!」
ゴウとモイとしてはカワキから聞いた、理術使いというリゼルに似た化物の力を持つラティナを
「……何が
「あ?」
ゴウの持つ
「え!?」
ゴウは
リゼルは一歩も動いていない。だが、彼の後ろ腰から黒く鋭い片刃の剣が尾の
「て…てめぇ~」
「オ前ラ…
異変はまだ終わらなかった。フードを取るとリゼルの頭から二つの長く鋭くねじれた悪魔の角が生え、体の左半分が黒く染まり、口の部分も黒に覆われ、鋭く凶悪な牙が形成された。両目も血走り、白の部分が全て赤く染めた。左手の甲に血の
「……
「化物め……」
全身兵器となった五人の
(ダメ……止めないと……)
腹に
やがて永遠に続くかの様な激しい痛みを感じながらも彼女の意識は闇に落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます