第7話

「と、まあそんな感じで妖狐あやかしになってたわけだ!もう三百年ぐらい前の話だけどな!」


あちこち住処を変えて、ここにたどり着いたそうだ。

人に触れられるのか。妖狐あやかしは人と関われるのだな。


「人に触れたのはあの時だけだな。それと、妖怪あやかしって言っても色々いるからな!俺はたまたま神崩れだったけど、元々ってのもいたしな!人でも動物でも神でもないものってところだ!」


そうか。


妖狐あやかしは『セキリュウ』と言った。

名を娘にもらったらしい。

ただの藤である私には無いものだ。

そのうち人が勝手につけるかもしれない。とセキリュウは言う。


藤が神になったという話を聞いてみた。

させられたのか、自らなったのかはわからないが、いずれにしても、あり得ることだそうだ。

人々があまり熱心に求めると、私もそうなってしまう可能性もあるらしい。


「お前は神になりたいのか?」


セキリュウに問われた。


なりたくない。


「じゃあこれからは、人が来たら狐火で追い払ってやるよ!少し脅かしてやれば、人は来なくなるさ。」


セキリュウの言葉通り、徐々に人は来なくなった。

それでも、以前願いを叶えてもらったから。そう言って来る者もいる。


最初はセキリュウもあの手この手で脅かしていたが、変わらぬ人の想いに諦めたようだ。


「たまにいるんだよな。何度脅かしてやっても来るヤツが。しょうがない。お前も諦めてくれ。」


私は以前より人が来なくなっただけでも良かったので、たまに少しならかまわないと言った。


そうして、私はセキリュウと日々を過ごすことになった。





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藤の花のひとりごと 天乃三葉 @Mituba_amano

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