第2話
それでも花を咲かせる時期になると、人間をよく見かける。
「見事だ。」
「ここまで来て良かった。」
どうやら良いことを言っているようだ。
私を撫でる者もいる。
何をしているのかよくわからないことが多い。
満開になったある日、一人の人間がやって来た。
「わたしは、藤神様のいらっしゃる御神木のある場所まで参拝することが叶いません。どうかどうか、わたしの願いを届けて下さいまし。」
どうやら神になった藤に願いを叶えてもらいたいらしい。
恐らくここより遠いので、行けないのだろう。
そうは言われても、私は何も出来ない。
人間の願いを叶えることはもちろん、願いをどこぞの藤神に届けるなんてことも出来ない。
鳥達に頼んでみようか。
だが、彼らは気まぐれだ。
頼んだところで聞き届けてもらえるかはわからない。
その人間はひとしきり願ったあと、何か食べ物を置いて行った。
その食べ物は雑食の動物が食べて行った。
私が神なら即座に願いを叶えてやれたんだろうか。
ただの藤である私には何もない。
きっと願いは叶わないだろう。
ほんの少しだけその人間がかわいそうだと…。
かわいそう?
なんだろう。不思議な感覚だ。
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