『残虐王』スカーレット②

 スカーレットのドゥナトゥリアは通称『魔導国』と言われている通り、世界で一番魔導師たちが集まる場所だ。その総面積と人口は世界で四番目に数えられ、世に出回っている一般人用の“人形ドール”や魔法道具の八割もここで開発、製造されている。ちなみに『撃滅王』アーバンクの軍事基地に設置されている通信機も、ここで製造された物である。

 街並まちなみはレンガづくりを基調きちょうとしていて、道を歩くのは多くの魔法使いたちと、獣の耳が生えた獣人じゅうじんたちや、ドワーフと呼ばれる幻想世界にしかいない者たちである。この国は他のどこよりも、人間たちが普段暮らし、目にしている「現実」と、現実には存在しない幻想生物たちが生きる「幻想世界」が色濃いろこまじわっている場所でもあるのだ。

 その他の大きな特徴として、国の至る所に立てられたはしらに、電線の代わりに透明なパイプが張られている。パイプの中を流れているのは、この国の王であるスカーレットの魔力だ。

 パイプは各地にある貯蔵庫ちょぞうこを経由し、国全体に行き渡るよう計算されている。スカーレットの魔力はそれぞれの家の電気やガスに変換されたり、街を走る市街電車や道に立っている警備人形たちを動かす魔力電池にもなっている。言葉通りスカーレットは一人でこの国を支えているが、彼も一国を背負う『王』の一人だ。このぐらいわけはない。

 そんな魔導国の中心街から少し離れ、ひっそりと建っている巨大な屋敷が彼の住んでいる所である。屋敷の周りは生きたいばらで囲われ、普通の人間たちは敷地内に簡単には入れないようになっている。

 屋敷の隣には巨大な時計塔が立っており、この時計塔は街のシンボル的存在にもなっている。

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