第19話「血脳髄鼻血脳髄髄髄髄髄」

「ほらおじさん。私の事、好きにしていいのよ…」


 裸でベッドの上に横たわる少女の口からその言葉が放たれた瞬間、男の目の前は暗闇よりも暗い黒闇くらやみに包まれ、次に気が付くと男はその行為をしていた。


「はぁはぁはぁ…いい!いいぞ!もうすぐだ!もうすぐ一緒に逝ける!」


 荒い息遣いの中でそう言い放った男は自身の一物を握る左手を激しく動かした。


「がごがが……ぎぎぎぎ……」


 男が自身の一物を握る左手とは反対の右手には少女の肉体のぬくもりがあった。男はベッドの上で少女に馬乗りになり、右手を少女の喉元深くまで差し込んでいた。その右手が少女を苦痛と快楽の狭間へと誘っているのだろうか、顔を紅潮させる少女の陰毛の生えていない股間はじっとりと濡れていた。


「ほら!ほらほら!ほらほらほら!気持ちいいだろ!?最高だろ!?息出来ないって最高に気持ちいいだろ!!」


「がぼががが……うごぼおおお……」


 虚ろな眼差しの少女の口許からは涎と血液が混ざりあった液体が絶え間無く溢れ、その生温いぬくもりが男を快楽の絶頂へと連れていった。そして、男が欲望に満ちた生命の源を発射しようとしたその時だった。


「うぎあああっ!?」


 男は突如言葉こえにならない叫び声を発した。その拍子に男の右手は少女の喉元から取り出され、道寺に男の肉体が少女に覆い被さった。覆い被さる男の両目には少女が無意識に伸ばした両手の親指が突き刺さっていた。


「眼眼眼眼眼眼眼眼眼!脳髄脳髄脳髄脳髄脳髄脳髄脳髄脳髄!眼眼眼髄髄髄髄髄髄髄髄髄髄眼眼眼!鼻髄鼻脳脳鼻脳髄鼻脳鼻髄鼻!」


 少女は突如狂った様に叫び出し、眼窩底に届くほど深くまで突き刺した両手の親指を動かしながら男の鼻を噛みちぎり、露になった鼻孔の傷口へ唇を近付けると口づけをする様にしてその孔へ舌を挿入しながら溢れ出る血を吸い出した。


「あびいいいいいい!」


「血髄髄血血髄髄血血血血髄髄血!脳髄髄髄脳髄脳血血脳髄髄髄血脳髄血脳髄血血血!」


 鼻孔が露になった傷口から直接体液を吸い出された男は阿鼻叫喚の声を上げ、少女は時折傷口から唇を離しては快楽満ちた声で意味不明な言葉を発した。

 やがて、男は体液を吸い尽くされて快楽の中で絶命した。しかし、少女は男が絶命した後もその肉体から溢れ出る体液を吸い続け、八時間後に力尽きた。

 少女の死因は絶え間無く体液を吸い続けた事で引き起こされた呼吸困難による窒息死だった。

 死んだ少女の肉体は男とその行為に及ぶ以前とは明らかに異なる女の肉体へと変化しており、陰毛も生え揃ったその死体は少女ではなく女と呼ぶべき肉体になっていた。

 そして、その死体の傍には木乃伊ミイラの様に干からびた少年の死体が横たわっていた。

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