第11話「紅に染まる赤」

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 その物体はそう言っていた。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 右から左へと動き回る縦に並んだ四つの眼球が私を視た。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 眼球が私に問い掛けた。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 眼球が私を問い詰めた。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 赤から白へとグラデーションする瞳が私に何かを訊いている気がしたが、私には何を訊いているのかわからなかった。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 突然四つの眼球が弾け飛び、私の肢体からだを紅に染めた。

 何が起きたのか、何のためにそれが起きたのか、何のためにそれがそこにあるのか、私は思い出した。

 弾け飛んだ眼球の赤い瞳は紅に染まり、に輝く七つの星が紅の海を泳いでいた。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、約束と束縛。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、秩序と序列。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、差別と決別。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、無とくう

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 私は思い出した。

 透明色のそらに浮かぶあの島を。

 私は思い出した。

 闇が唄うあの曲を。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、君のための言葉。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 それは、明日へ向かう昨日の夢。

 ナギナギナギナギナギナギナギ…

 そんなに悪くはないさ。

 そう、それほど悪くない。

 赤は紅に染まり、眼球は語りかけることをやめた。

 色を持たぬ全ての透明が色を持つ全てに叛逆した。

 叛逆した透明は赤い紅の海を透明に変えようと戦った。

 もう二度と眼球が語りかけることがなくとも透明が色をなくすことはない。

 色を得た透明は全ての色を持つ透明色だった。

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