第5話 彼女の提案

 勝った。

 ぎりぎりの状態だが、なんとか、最後に勝ちをもぎとった。


「よっし。よっしよっし」


『まいりました。さすがです』


 ボイスチャット。やさしげな、男の声。


「12時間調整した甲斐かいがあったってもんだ」


『そんなにも。感服しました』


「なあ」


 言い出せなかった。ことがある。

 今日は、せっかくボイスチャットも通じてるし。

 勇気を、出してみる。


「会って、くんねえかな。わたしに」


現実リアルで、ですか?』


「ああ。べつに下心があるわけじゃねえ。その、なんだ。戦績を遡るのにも12時間かかるんだが。実際に会って喋れば、たぶん、数秒で済むんだよ。戦績の確認が」


 半分は本当。戦績の確認はしたい。相手とパラミリーについて一晩中語り合いたい。

 半分は嘘。下心はある。いちおう、年相応の欲求はあった。ただ、そこらへんに転がってる石ころみたいな男と仲良くなりたくはなかった。


「どうせなら。強いやつと」


 勇気は出した。誘った。どうだ。会ってくれるか。


『わかりました。会いましょう』


 やった。会ってくれる。


『今どこですか?』


「は?」


 今。今なんていった。

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