第4話 彼の仕事

 死にたいと、思うようになってから。どれぐらい経っただろうか。

 街を守り、人々の生活を人知れず支える。それが夢で。それを叶えるために、この仕事に就いた。

 それからは、仕事だらけの日々だった。いつしか、夢は薄れ、目の前の現実との争闘だけが、残った。そして、いつからか、死にたくなった。

 仕事仲間とも、もうかなり前から連絡を絶っている。潜入だから普通のことだが、今、誰かに優しくされたくはなかった。死んでいきたい。このまま。夢がまだ、思い出せるうちに。


「でさ。この前の合コンがさ」


「うん」


 学生仲間の話を、なんとなく聞き流す。

 死にたくても、潜入の仕事は進む。これが終わる前に、死ねるだろうか。


「パラミリーがやりたいなあ」


「またそのゲームかよ」


 パラレルミリタリー。一昔前に流行り、今はもう誰も見向きもしない対人仮想戦闘ゲーム。ゲーム人口がいないので、いつも、同じ女性が対戦相手だった。

 彼女は、とても強い。

 戦っていて、張り合いがある。

 そして、ときどき。

 自分を、殺してくれる。

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