第3話 彼女の作戦

 派手に負けた。


「くそっ」


 武器調整を、また練り直す。

 くやしいけど、これが最高に楽しかった。負けて、調整して、それがはまって勝ったときの快感。これはもう、なにものにも代えがたい。


「よっし。まずは12時間ぐらいかけて戦績見直し作業からだ」


 これをやるために、アルバイトを選んだ。アルバイトなら、自分の器量でなんとでもなる。頭はよくないけど。そこらへんも適当に隠せるし。


「あっ。ねえ。またやってるの?」


 女友達。


「おう。派手に負けちまったから、今から12時間かけて検証作業だ」


「うわ」


 女友達。いま流行りの、なんか丸っこくて甘ったるい飲み物のような食べ物のような物を、渡してくる。


「はい、これ」


「おう。ありがとう」


 一口のんで。


「甘い。むり」


「あっごめん。そっちはあたしのだわ」


 甘いものは好きじゃない。煎餅とか、するめとか、そういうしょっぱくて堅いやつが好きだった。


「はいこれ。さくらちゃんのためにブレンドしました」


 なんか丸っこくて甘ったるい飲み物のような食べ物のような物。もう一度、おそるおそる呑んでみる。


「うまい」


 これは。抹茶か。甘くない。むしろにがい。そしてそれがいい。


「でしょでしょ。かれぴっぴが作ってくれたの」


「新規のかれぴっぴか?」


「そう。今度は良いものを合コンで釣り上げました。まずは3ヶ月を目標にがんばります」


「女ってのは。大変そうだねえ」


「あなたのが、顔も身体もこれぞ女って感じなのにね」


「ばかにしてんのか?」


「してないわよ」


 最近、胸がしんどい。

 やたらと大きくなってしまったせいで、闘ってる最中に揺れて跳ねて邪魔になる。


「ちょっと持ってくれ。縛る」


「え、胸を?」


「ああ。重くはないが邪魔だ」


「痕とか、大丈夫なの?」


「痕がこわくて闘えるかってんだ」


「うん。そういうのがいい。さすがさくらちゃん。顔も身体もいいけど、性格がどぶす」


「どぶすだよ、どうせわたしは」


「だから嫉妬しなくていいわ。どこ持てばいいの?」


「ここだ、ここ」


 身体の関係なんか要らない。

 闘う相手が。殴り合える男がいれば。それでいい。

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