RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第三十九話:母を訪ねて⑪/“魔王の末裔”スティア=エンブレム&“愛花の少女”フィナンシェ=フォルテッシモ - Blood of Chaos & Rein Carnation -
第三十九話:母を訪ねて⑪/“魔王の末裔”スティア=エンブレム&“愛花の少女”フィナンシェ=フォルテッシモ - Blood of Chaos & Rein Carnation -
「死になさい、死になさい、ぐちゃぐちゃになって──死になさいッ!!」
荒れ狂うヤーノの怒りの
「スティアちゃん! 来るよ!!」
「取り敢えず──この触手を
幸いにも──怒り心頭のヤーノがけしかけてくる触手は、猛烈な勢いではあるが軌道はあまりにも
「“我を護れ 堅牢なる盾よ”──『
迫る触手を
「──スティアちゃん、何か策はあるの? はぁはぁ……
「分かってるって──危なッ!?」
作戦会議中も猛攻は止まらない。雨あられのように降り注ぐ触手の攻撃をギリギリで
単調故に避けれる攻撃と言えど、一度でも捕まってしまえば──その瞬間に無数の触手に
「あいつは今、頭に血が……スライムだから血は通ってなさそう……」
「そんな事いま真面目に考えなくていいから〜!!」
「ともかく、あいつ……
作戦は、先程吊るされていた時に仕掛けた挑発からの隙の誘発。逆に言えば、そうやってヤーノを動かさなければふたりには攻撃する手立てが無いからである。
「そもそも──この妙にデカい泉の中心に立ってるせいで、あいつの所まで行くには泳ぐか
「でも泳ぐなんてしてたら……」
「周りでうじゃうじゃしてる触手の
スティアにもフィナンシェにも、
ともすれば、ふたりの“勝ち筋”は──ヤーノの自滅、彼女自身に
「何とか直接攻撃出来る距離まであいつを近付けさせて、“
「その為には……!!」
「ひたすら挑発よ! あいつの
(行き当たりばったりじゃないでちゅか!?)
そんなふたりの
「このぉ──ちょこまかと!! 死になさい、死になさい、死になさいってばッ!!」
「ほら、どうしたの
攫った母親たちを丁重に扱っている以上、ヤーノが彼女たちに手荒な事をするとは考えにくい。しかし、相手はどこまで行っても“
そう思ったスティアは触手の猛攻を避けながらも、ヤーノへの挑発を行っていく。なんとしても彼女に“隙”を晒させる為に。
「この……つるペタ貧乳色気なしの分際で〜〜ッ!!」
「なっ──!! あいつ〜〜、妙に
「ちょっと、止まらないで!! スティアちゃんが挑発に乗せられてどうするのーーッ!!?」
(う〜ん……
我が末裔ながら嘆かわしいとカティスは頭を抱えるが、その実──スティアの挑発は少なからず効果はあった。
「ああ──もうッ、泉の周りをくるくると……!! 折角、お母さん達と家族水入らずの時間を過ごせると思ったのに……!! わたしの……
触手を
「わたし……たち……?」
「ねぇ……スティアちゃん? あの子……さっきも“わたしたち”って言ってなかったっけ?」
『
『あなたたち全員──八つ裂きにして、ドロドロに溶かして、
「言ってた……アレ、何匹かのスライムが合体してるの……!?」
「違うわ……! あの子は……最初に言ってた“喰べた
『はじめまして、可愛らしい子ねずみさん? わたしはヤーノ……
「…………?? …………????」
「スティアちゃんが理解できてないのは、その
「あ〜、なるほど~……? 分かった分かった〜、うんうん……??」
「……………………ほんと? 分かったの??」
スティアの
(寄生にしても、融合にしても、捕食吸収にしても──今、ヤーノって言う生命体の“
問題は──
(伯父様──わたしに知恵をお貸し下さい……!!)
『良いかい……フィナンシェちゃん? 肉体と精神は必ずしも
『良くあるだろう……気が付いたら、大暴れして部屋中めちゃくちゃになっていたとか、
『だから……どんな時でも冷静に。決して……自分を見失ってはいけないよ……。もっとも──今のはおじさんも知り合いからの受け売りだけどね……!』
(肉体と精神の
数ある思い出の中の1
「スティアちゃん……!!」
「…………?? …………????」
「頭から
「……………………大丈夫、大丈夫! あー……で、結局どうすれば良いの?」
「今のあの子は精神が不安定な状態になっているわ! このまま揺さぶりを掛け続ければ、“
「それで……??」
「あの身体は──ヤーノと言う“スライム”の本来の肉体じゃないわ……! なら、このまま“肉体”と“精神”の結び付きが
それは、一か八かの大勝負。ヤーノと言う“
「もし──女の子の“精神”が、完全に喰われてたり、消滅したりしてて…………“表”に出て来なかったら?」
「あの子を──“
「最高……! 寒気がして今にも吐きそう……!!」
(えらい
狙うは一瞬の“隙”──ヤーノの“スライム”と“人間”の結合が分離したその
(でも、何にせよ急がないと……アイツがアヤさん達に危害を加える前に……!!)
(
戦う少女たちを取り巻くは“焦燥感”──、
(早くあいつらを殺してお母さん達と逃げないと……! あいつらも、草原で足止めしたふたりも“ギルドの冒険者”なら──
──迫る“
そして、少女たちを渦巻くもう一つの感情──、
(守らなきゃ、守らなきゃ、守らなきゃ……ッ!! お母さんたちを……ヤーノを──わたしが守らなきゃ!!)
──それは
「わたしたちの……邪魔を──しないでぇええええええええ!!!」
戦いの舞台──静寂の森に響き渡るヤーノの叫び。その怒りの込められた叫びと共に、激しく波打つ
「スティアちゃん!! ヤーノが
「分かってる……さぁ、掛かって来なさいッ!!」
絡まり合い、一本の太く鋭く尖った触手が
「“我を護れ 堅牢なる盾よ”──」
その激しい“殺意”の
「させる──かぁあああッ!!!」
しかし、触手がフィナンシェに直撃すると思われた──その
スティアによって先端を斬り裂かれ、迫っていた触手はたちまちに弾けて
スティアに斬り落とされた触手の先端部分──勢いを失いただの
(
ヤーノの右腕が鋭い“槍”へと姿を変えていく。大きく剣を振り抜いたスティアはまだヤーノに気付いていない。それを確信したヤーノは槍へと変化させた右腕を思いっ切り振り抜く──スティアの心臓を目掛けて。
しかし──、
「──『
「────なッ!!?」
──簡単に“隙”を晒すほど、スティアとフィナンシェも、もう甘くは無い。
スティアの無防備な背中を守るように現れたのは“白き盾”、フィナンシェが唱えていた魔法。
(まさか──
突然現れた盾に攻撃を弾かれ、大きく体勢を
「あぁ──あぁあああああああ!!!」
「ようやく──お近付きになれたわね?」
斬り落とされた腕が地面に落ちて、水になって弾ける。斬り落とされた腕を
杖を構えてフィナンシェがヤーノの反撃に備える。剣を身体の正面に構えてスティアが追撃の準備を整える。
「よくも……よくも……! あの子の身体を──ヤーノの身体に傷を……ッ!!」
「そう……ヤーノって名前は、“その子”の名前なのね……!!」
「なら……ヤーノの身体も心も返してもらうよ──
「許さないわ、許さないわ、絶対に──許さないわッ!!」
怒りは
「殺す、殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す──殺すッ!! わたしの手で、あの子の身体に傷を付けた事を──後悔させてやるわッ!!」
左腕と、再生させた右腕を
「上等……!! やれるものなら──やってみなさいッ!!」
その剥き出しの殺意に、スティアは
戦いは激しさを増していく。
(さぁ、目覚めの時間でちゅよ……ヤーノよ)
決着の時は静かに近づいて来る──小さな少女の目覚めと共に。
『やめて……もうやめて……もう、戦わないで──スライムさん……!』
深い深い水の底のような精神の世界の底で、少女は声をあげる。傷付き、それでも戦う少女の為に。
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