RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第三十六話:母を訪ねて⑧/渇愛のヤーノ -Ask Affection-
第三十六話:母を訪ねて⑧/渇愛のヤーノ -Ask Affection-
ラウラとトウリと別れてから2時間後──ヴェルソア平原の一画にある森林地帯。
「
「みたいだね……
陽は大きく傾き、
「スティアちゃん……なんだか、
「そうだね……あの
徐々に
暗く、冷たい──“黒”と“闇”が口を拡げて、のこのこと歩いて来たふたりの少女と独りの赤ん坊が飛び込んで来るのを待ちわびているかのように。
「攫われた人のたち……何処に居るのかな?」
「う~ん……多分だけど、
しかし、一昨日とは打って変わり──スティアもフィナンシェも
(周囲に
だが、ふたりが不安や
カティスは意識を集中して周囲の気配に探りを入れるが、反応は奥から発せられている複数人の
(元が魔犬たちの
それがカティスには気掛かりで仕方なかった。先程、スティア達を足止めする為に百を超えるスライムをけしかけたと言うのに、
(おれも生前──あのいけ
守りがいない事──これには何か
〜〜〜
「話し声が聴こえる……! フィーネ、身を
森に足を踏み込んでから30分程歩いた所で、スティアは奥から聴こえてきた話し声に気付いた。
「
「森に入ってから一匹も“
カティスが探りを入れた通り周囲に敵影は無く、スティアとフィナンシェは一度も
「女の人の声ばっかり……攫われた人たちかな……?」
「多分……でもなんだろう……?
そんな折に聴こえてきた話し声。複数の女性の声──攫われた母親たちの声だろうか。しかし、奇妙な事に聴こえてきた声は
攫われて恐怖に怯える声でも無く、家族と引き離されて孤独に
「どう言う事なのかな……?」
「少なくても……今は
その楽しそうな声に、
ふたりが考えられる“最悪の事態”を遥かに上回る──世にも恐ろしい事態が起こっているとも気付かずに。
(もうすぐ声の所に到着しちゃうよ……!)
(あそこの大きな樹の影から様子を見よう……!)
聴こえる声が大きくなり、いよいよ鉢合わせと言うタイミングに差し掛かったスティアとフィナンシェは、小さく身を
「なに……これ……?」
「うそ……?」
(
そして──その眼に飛び込んできた光景にスティアとフィナンシェはおろか、カティス
「ほら、ヤーノ……お口にお菓子の食べかすが付いているわよ……! 拭いてあげるからこっちを向いて」
「はぁーい♡ お母さん、ありがとう」
「さぁ、ヤーノ……今日は寝る前にどの絵本を、お母さんに読んで欲しいの?」
「う~んとね……『勇者キリアリアと魔王カティス』がいいなー」
「ねぇ、ヤーノ……明日はお母さんと何しよっか?」
「えっとね……わたし、お母さんと一緒にお昼寝したい! お日様のあたる所で、夕方になるまで一緒に寝るの!」
直径20メートル規模の池を中心にした開けた空間──
「どうなってるの……? 何なのこの状況……??」
その光景に、スティアは
大きな石に腰をかけているヤーノと呼ばれた少女に、囲んだ女性たちが
「スティアちゃん……あの人たち、みんな眼が
(
その異様な光景に言いようの無い不気味さを感じながらも、スティアとフィナンシェは
「スティアちゃん、見て……アヤさんだ……!」
「アヤさん……無事だったんだ……!」
ヤーノを囲む女性たち。その中に居るスティアたちの見知った顔──今朝から行方知れずだったアヤの姿も
「アヤさんが
「
「攫われた母親たちが
「複数の女性を『お母さん』って言っているあたり、少なくてもまともな人物じゃないよね……!」
故にこそ、スティアとフィナンシェが疑惑の眼は、攫われた女性たちは『お母さん』と称して
そして、彼女は何者かなのか──と言う疑問はすぐに分かる事になる。
「さぁ、ヤーノ! もうすぐ夕飯の準備が出来るわよ!」
「は~い、すぐにお食事の準備をするね──お母さん♡」
ヤーノの側に転がっていた
「違う……アヤさんの子どもはアンタじゃない……!!」
「ひどい……! アヤさん……何をされたの……!?」
その光景──アヤの母親としての愛情を奪って、
(あの女性たち──
それは、恐ろしい企て──攫われた女性たちの脳は
(あのヤーノとか言う
スライムを寄生させ、アヤたちに自身を子どもだと認識させている以上──ヤーノが『母攫い』の主犯であることは間違いない。
(問題は──あのヤーノが
カティスは、あまりにもスライム
しかし──状況は待ってくれない。アヤの言葉に嬉しそうな反応を示したヤーノは、上機嫌に腰掛けていた石から飛び降りると集めた母親たちに語り始める。
「あぁ、わたしの
「あぁ──なんて素敵な日なのかしら! わたしを愛してくれるお母さんがこんなにもたくさん!! 素敵だわ、素敵だわ、とーっても素敵だわ!!」
20人を超える『お母さん』を
「さあ!! お食事にしましょう……!!
虚ろな瞳でヤーノに微笑みかける母親たち、大勢の人から奪った“幸せ”を無邪気に笑いながら
「だからね……♪ わたしたちの“幸せ”を邪魔する悪い子ねずみさんたちは……刻んで、喰らって──皆殺しよ!!」
「まさか──ッ!?」
「気付かれたの──ッ!?」
高らかに
次の瞬間──スティアたちの背後から、地面を突き破ってスライムでできた無数の
(しまった!? あいつ、
「なッ──!?」
「あっ──!?」
ヤーノは不気味に笑う。触手に背後を取られ、不意を突かれ、激しく動揺するスティアたちを
「はじめまして、可愛らしい子ねずみさん? わたしはヤーノ……
ヤーノは不敵に笑う。母親たちを取り戻しに来たフィナンシェたちを、まるで肉食獣の
「くすくす♡ ねぇ……わたしに教えて下さいな?」
ヤーノは
「あなたたちは──わたしの“お母さん”ですか?」
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