RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第二十九話:母を訪ねて①/Are You My Mother?
第二十九話:母を訪ねて①/Are You My Mother?
波乱と混乱渦巻く“ギルド選抜試験”から一夜明け、カヴェレ──時は
まだ朝日は地平線から顔を出したばかりであり、空の
「ハァー、参ったわ……! 私ったら、スティアちゃんとフィナンシェちゃんとあの赤ちゃんが居るのをすっかり忘れて、
まだ
彼女はアヤ。スティアとフィナンシェがこの街に到着した際に、ふたりを自宅に泊めてくれた老女フオリの嫁(※息子の妻)である。
彼女は自宅に来客がある事を
「それにしても……スティアちゃんもフィナンシェちゃんもよっぽど疲れていたのね。夕飯をたくさん食べたら、すぐに寝ちゃって……♪ あの赤ちゃんはすごい嫌そうな
早朝からの肉体労働、まだ
一昨日から自宅に泊めていたふたりの少女が、無事に“ギルドの冒険者”になれたこと、ふたりが今日から早速ギルドの
「ふふふ……うちの子もすっかりふたりに懐いちゃったし、私もふたりの将来が楽しみだわ……!」
ただの主婦である彼女の目から見ても、ふたりの少女はまだまだ半人前の駆け出し冒険者。しかし、いずれは大きく才能を花開かせれると、アヤはまるで“実の娘”を想うようにふたりの少女の行く末に心を踊らせていた。
「あら……? あの娘、誰かしら……??」
そんな折だった、アヤは前方に現れた小さな“人影”に気付いて歩みを止めてしまう。街にある小さな広場、そこにある目的地である小さな井戸、その井戸を照らすように
街灯の
(見た目はうちの息子と同じぐらい……でも、あんな娘見かけたことないわ……?)
正直に言えば──その少女にアヤは少しばかり
(でも……見ちゃった以上、しょうがないわね……。私も人の親……あの娘がどんな子であれ、放っては置けないわ……!)
例え、
「…………おはよう、お嬢ちゃん。どうしたの、こんな朝早くに独りで?」
まだ朝は早く、
「何かあったの? こんな時間に独りでいたら危ないよ……?」
「……………………」
少女の前に立ち、アヤは意を決して話しかけるが、少女は
「
アヤはそう言って優しく少女をあやす。もう少し時間が経てば、寝静まった人々が目を覚まし、やがてカヴェレの街も活気付いてくる。その時に、この少女の両親が心配するかも知れない。そう思って、アヤは少女にお母さんの元に帰ってあげるように言葉を掛ける。
まるで──実の子に声を掛ける母親のように。
「ねぇ……わたしね、“お母さん”を探しているの」
アヤの言葉の
「お母さんを探しているの……? あなたは迷子なの……?」
「そうなの……。わたし……ずっと“お母さん”を探しているの」
その少女の孤独を嘆く言葉に、アヤの心臓の鼓動は速くなってくる。緊張からか、不安からか、それとも──母親としての
「…………分かったわ。私が一緒にお母さんを探してあげる」
きっと、この娘は迷子なのだろう。もし、迷子なのだとしたら、ギルドにも“探し人”の
すると──、
「………………ほんとう? わたしの“お母さん”を探してくれるの……!?」
──少女の
「本当よ……。私だってお母さんだもの……あなたのような小さな子どもを放ってなんて置けないわ……」
「………………っ!! お母さん……あなた、“お母さん”なのね……!!」
そして、アヤが誰かの母親だと知った途端──少女は声を大きくしてアヤに強い関心を見せ始める。
「…………? そうだけど、私がどうかしたのかしら……??」
「うふふ♡ ねぇ、『お母さん』……あっちに吊るされている裸の女の人、誰か知ってる?」
「あ……あ〜、アイノア=アスターって
その少女の話に出た、裸で吊るされた女性の話ならアヤも聞き及んでいた。前日、ギルドの選抜試験を巡る一連の騒動で大騒ぎし、大勢の者からヘイトを買った結果、最終的に見るも
アヤが街灯の側から遠くに見えるギルドの支部の方に視線を送ると、確かに建物の看板の所にピンク色の髪の少女が素っ裸のまま縄で縛られて吊るされていた。
「…………何したのかしら、あの娘??」
「くすくす♡ あの女の人……わたしの“お母さん”かなって思ったんだけど…………流石に下品すぎるから違うかったわ」
不意に──アヤの背後で少女が発した不気味な一言に、彼女の背筋に一気に悪寒が走り出す。
(この
慌ててアヤは少女から距離を取ろうとしたが、
「くすくす……♡ ねぇ、わたしね……“お母さん”を探しているの。わたしを愛してくれる──優しくて、
その少女の──どこか歪んだ“願望”が、井戸から湧き上がる水のように
その事を、アヤは
「────あぁ、ああ……!!」
「くすくす♡ ねぇ……わたしに教えて下さいな……?」
不気味に
そして、アヤを捕らえるゼリー状の水を踏み分けながら、彼女に近付いた少女は──最後にアヤに問い掛ける。
「あなたは──わたしの“お母さん”ですか?」
その言葉と共に、少女の
「────!! ──────!!?」
不可解なゼリー状の水に覆われてしまい、アヤは
(あなた……お義母さん……スコア…………)
薄れ行く意識の中で、最後に彼女の脳裏に浮かんだのは自分の家族。そして、愛おしい家族の姿を想いながら、彼女は冷たい水の中に意識を落としていくのだった。
「うふふ……うふふふふ♡ わたしの名前はヤーノ。歓迎するわ……
水の中で力無く
「さぁ、行こう……お母さん♡ わたしのお家に、
そう言って、少女は捕らえたアヤを引き連れて姿を暗まして行った。街灯の近くに残されていたのは、木製の
この日、朝日が昇るまでの間にカヴェレでは──アヤを含め、実に十八名にも及ぶ女性が行方を暗ませた。これが、後にカヴェレで語られる大事件──通称『母攫い』、スティアとフィナンシェが最初に請け負った“
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