RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第二十四話:ギルド試験狂騒曲⑰/リミット10_OVER
第二十四話:ギルド試験狂騒曲⑰/リミット10_OVER
「許せぬ……許せぬ……許せぬぞ──人間どもめ……!!」
赤いカーペット敷かれた廊下を蹂躙するように駆け、目の前で
「
彼女にとって、我が子たちにされた仕打ちは屈辱的であり、とても耐え難いものだった。
大自然に於いて──生命に敷かれた“
「この場所に
人間に攫われた我が子たちを取り戻す為に、危険を
「匂うぞ……目の前の人間の
ただ、己の悦楽と快楽の為だけに行われる虐殺。自らが腹を痛めて産んだ子が、ただ“愉悦”の為だけに殺され──気高き女王は、ただ『母親』として憎悪の炎を燃やす。
「喰ろうてやる……喰ろうてやる……喰ろうてやる!! 我が子たちを殺めた分だけ──
げに恐ろしきは人の“
故に、彼女は唸る──我が子たちを愛していたから。
故に、女王は猛る──我が子たちを尊んでいたから。
故に、母は吼える──我が子たちを奪われたから。
例え、獣であったとしても、
憎悪に染まった
「許せぬ……許せぬ……
〜〜〜
(……って、
(我が子を連れ
しかし、それは魔犬の女王の都合。
“死”は避けられぬ
「で、策はあんのか、ラウラ?」
「とにかく、後ろの怪物を精一杯妨害しながら走り抜けますわ!! “爆炎よ 爆ぜろ”──『
「『後は野となれ山となれ』──ね。はいはい、
ラウラが放った火球がハウンド・クイーンに直撃し、女王が激しく吼えるのを確認すると、トウリは不敵に笑う。
(この犬の
(なんだ……このチビの値踏みする様な
四人の少女たちは長い廊下の行き止まりを目指してひた走り、見えてきた次の曲がり角を再びドリフトしながら滑り抜けるように通過する。
『おぉーっと、ハウンド・クイーンに追われている四人、走りとは思えない凄まじいドリフトを決めて曲がり角を走り抜けています!!』
『実況再開しだしたっ!!? お前はトドメ要員だろ、さっさと持ち場に着け!!』
『嫌です〜っ!! こんな愉k──んん、こんな
ハウンド・クイーンが曲がり角を完全に曲がれず壁に激突する音を、
「此処は……エントランス前!!」
そこは、ラスヴァー家旧邸宅の玄関から左右へと伸びる長い廊下にあたる部分だった。
「出口があるんですの……!?」
「そうなる……でも、みんなで出ても意味無いよ……!!」
確かに、いま彼女たちが走っている通路には玄関口がある。しかし、そこから全員が脱出すれば、ハウンド・クイーンも玄関に身体を向けて突進してくるだろう。
もし、屋外に出てしまえば、スティアたちは屋内というアドバンテージを失ってしまい、
「仕方ありませんわ……! トウリさん、その子を連れて脱出なさい!!」
その為、ラウラは赤ちゃんであるカティスの安全を最優先し、カティス抱きかかえているトウリに脱出を
「ハァ!? ふざけんな!! おれはラウラ──お前の”
「トウリさん……///」
「悪いが……いざって時は、おれはラウラの命を優先するぜ!!」
しかし、トウリは彼女の要求を突っぱねる。トウリにとってラウラは、抱き抱えた小さな命よりも大切なものなのだ。
『──ッ!! ラウラ嬢、後ろ!!』
故に、この展開は”
「──ッ!! ラウラァアアアアア!!!!」
「────キャア!!?」
四人の最後尾を走っていたラウラをとうとう“
しかし
「「えぇーーーーっ!!? 嘘でしょーーーーっ!!!?」」
その光景に、スティアとフィナンシェはあ然とするしか無かった。ラウラとトウリの逃走に巻き込まれて、そのラウラとトウリがしれっとハウンド・クイーンの追撃から逃れ、魔犬の女王の追撃を擦り付けられた。
「「いやいやいやいや、なんでわたし達だけーーーーっ!!!?」」
文句を言っても、ラウラとトウリはもう遥か後方。
「「嫌ぁああああああ!! た、助けてぇえええええ!!!!」」
怒りで我を忘れた女王はいつの間にか消えた3人に目もくれず、目の前で逃げ惑うスティアとフィナンシェを追いたてる。
(マズイでちゅ、マズイでちゅ!! まちゃか、こんな形でふたりと
トウリに抱えられ外へと脱出してしまったカティスは、すぐそこまで来ているスティアとフィナンシェの“死の未来”に
『ラウラ選手、トウリ選手、赤ちゃんを抱えたまま玄関から飛び出して無事脱出かーッ!?』
『いや、トウリ嬢は
「トウリさん!?
ハウンド・クイーンの
「こ、こんくらい……かすり傷だって……!!」
「嘘おっしゃいな!! 今すぐ“
「おれはいい! そ、それよりもスティアとフィナンシェを頼む……!!」
「トウリさん……!! 分かりましたわ、スティアさんとフィナンシェさん──この
傷付き倒れ、それでも尚スティアとフィナンシェを気にかけるトウリに促され、ラウラは
自分たちの騒動に巻き込まれた、スティアとフィナンシェを助ける為に。
「ばぶ、ばぶばぶばぶぶ!!(約:おい、おれも連れて行けでちゅ!!)」
「あなた……付いて来たいのですの……!?」
ラウラが再び立ち上がったのを観たカティスは、彼女に同行しようと短い未成熟な両腕を必死に伸ばす。
「バ、バカか、このチビ……!! おれと一緒に……ウッ、ゲホゲホッ!!」
「ばぶぶ!!(約:連れて行け!!)」
「良いでしょう……!! 但し、どうなっても知りませんわよ……!!」
「ラ、ラウラ……!!」
「トウリさん、
そして、トウリから引き取ったカティスを自分の肩にしがみつかせると、ラウラは大剣を抱えて再び邸宅へと突入する。
「ラウラ……無事でいろよ……!!」
ラウラの果敢な後ろ姿を見送ったトウリは、とうとう体力が尽きたのか──その場で気を失ってしまう。スティアとフィナンシェの命を救えるのは──あとはラウラとカティスのみ。
(このままでは、ふたりの“死”に間に合わないでちゅ!! …………ちかたありまちぇん!!)
しかし──スティアとフィナンシェの“死の未来”まであと数十秒も無い。だからこそ、カティスは──ふたりが、あの地下祭殿で観せた“
(
「な、なに……チクッと────」
カティスの人差し指に浮かび上がった金色の“紋章”から現れた光の糸はラウラのうなじに突き刺さると、瞬時にラウラの思考をカティスの支配下に置き換えた。
「────よし、後はふたりに
頭部に“天使の輪“を模した”紋章“を浮かべ、カティスは、逃げ続けるスティアとフィナンシェに言葉を送る。
『聞こえるか──スティア、フィナンシェ!!』
「な、何……!? 頭の中に声が……!!?」
「この声──ラウラさん!?」
『そうda──ですワ!!』
「「なんか偽物くさい!!?」」
『黙って聴くのですわ!! いいですか、あと20秒後にそのハウンド・クイーンの攻撃にやられて、お前たちは死ぬ!!』
「「えぇーーっ!! なんでーーっ!?」」
『その攻撃を死ぬ気で防いで、
「「………………!!」」
『10秒稼げ、そしたら──
たったそれだけ、言うだけ言ってラウラ(※カティス)の通信は途切れてしまう。走り続けるスティアとフィナンシェに聴こえてくるのは、真後ろに迫ったハウンド・クイーンの唸り声だけ。
「──スティアちゃん!」
「10秒凌げば良いんでしょ!?」
しかし、ラウラの言葉の僅かな“希望”にすがるしか無いふたりは──覚悟を決めるしかなかった。
その時はやって来る。スティアとフィナンシェが──人間への憎悪に燃えるハウンド・クイーンの牙の餌食になって命を落とす──その時が。
カティスが観た、スティアとフィナンシェの“死の未来”まで──あと10秒。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます