RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第二十三話:ギルド試験狂騒曲⑯/抗う者たち
第二十三話:ギルド試験狂騒曲⑯/抗う者たち
「な、なに今の獣の遠吠えみたいなのは……!?」
「む、向こうにある
時を同じくして、旧邸宅・廊下。裏庭の
『おい、アイノア! なんだ今の獣の咆哮と女性の悲鳴は!?
『そ、その筈ですけどぉ〜♪ アレ〜、お、おっかしいな……あんな鳴き声の
その、アイノアの予想外の
会場に放たれた
『と、とにかく、我々は事態の把握に務めるぞ……!!
『わ、分かっていますよ〜!
事態が急を要する事に気付いエスティに急かされて、アイノアは慌てて喉元に“紋章”を浮かべて声を上げる準備をする。
『“
そして、アイノアの口から
“
アイノアは自身の“歌声”を利用してこのエコーロケーションを行い、
『どうだアイノア!?』
『あ~まっずい……! ラウラ選手とトウリ選手──
「フ、フィーネ……何か近付いてきてるよね?」
「多分……わたし、すっごく嫌な予感がする」
(アイノアのあの
あたかも、受け取るべきバトンを待つリレー選手の様に後ろをちらちらと確認するスティアとフィナンシェ。そして、地響きがより一層大きくなった瞬間──廊下の曲がり角から
「ラ、ラウラ──ッ!!?」
「ト、トウリさん……!!?」
現れたのは
そして、ラウラとトウリの背後から──、
「GyaoOOOOOOOOOW──!!」
──廊下の天井に頭が当たりかねないほど巨大な魔犬が、逃げるラウラとトウリを追いかける様に現れた。
「に、に、逃げるのですわーーーーっ!!!!」
その、ラウラの絶叫は──スティアとフィナンシェに事の深刻さを伝えるには、十分過ぎる効果を発揮した。目の前には半泣きになりながら、全力疾走で逃げるラウラとトウリ。ふたりの奥には
「き、き、き──」
「き、き、き──」
一度“死”を経験したふたりの危機管理能力は凄まじかった。ふたりの脳内には瞬時に“生命の危機”を
「「きゃぁああああああ!!? ば、化け物だぁああああああああ!!!?」」
怪物を視認してから、足を一歩踏み出すまでの時間──僅か5秒。スティアとフィナンシェは、魔犬から逃げるように
『ラウラァ!!! なんだ、あの化け物は!!?』
『し、知りません! アイノアちゃん、あんな
『──アレ、どう見たってハンウド・クイーンじゃないか!? “
『み、観れば分かります〜ッ!! きっと何処かから忍び込んだに違いありません!!』
スティアとフィナンシェを観測する様に飛んでいたアイノアとエスティも
ハウンド・クイーン──その名の通り、犬の
その戦闘能力は、この選抜試験にも投入されている通常種とは比べ物にならないほど高く、一匹でも人里に現れれば──ギルドが誇る歴戦の冒険者が駆り出される程の凶暴性と凶悪性を
『まずいぞ……! ハウンド・クイーンが相手だと、待機させている救援隊では歯が立たない……!!』
ハウンド・クイーンの有する凶暴性を瞬時に見抜いたエスティは、会場に配置している
『アイノア! あいつは……“魔人殺し”はまだカヴェレに居るか!?』
エスティは、この危機的状況を打開できるであろう高ランクの冒険者の所在をアイノアに問うが──、
『そ、それが……
『なんて間の悪い……!!』
──
『仕方ない……アイノア、お前ならあの程度の
『で、出来ますけど〜♡ アイノアちゃんの“
『この“
アイノア自身もまた、騒ぎに巻き込まれた彼女たちの安全を“確実に”保証できる手段を持っていなかった。
「はぁはぁ……な、何なのこのバカでかい魔犬はーーッ!?」
「わ、
一方、ハウンド・クイーンに追われる羽目になってしまった四人の少女は、邸宅の廊下を全速力で走っていた。
不幸中の幸いか──ハウンド・クイーンの巨体にとっては旧邸宅の廊下は少々手狭であり、身体をあちこちにぶつけてしまう影響で、本来ならあっという間に捕らえれる筈の少女たちに未だに追いつけずにいた。
「はぁはぁ……ちょっと……待って下さい……!! あ、赤ちゃんと……はぁはぁ、自分の……お、おっぱいが重くて……速く走れんないです〜!!」
「あ〜、しゃーない! 赤ん坊はおれが預かってやるよ! でけー
「ひ、ひぃ〜!!」
「ほら……チビ、おれが守ってやるから、ちょっと辛抱しなよ……!!」
その隙にトウリは、色々と
(う〜む、困ったでちゅね……! 何とかちたいでちゅが、“
トウリの腕に抱かれながら、カティスは事態の対処に頭を悩ませていた。カティスの
しかし、アイノアとエスティの
(一度、『
『聴こえますかーーっ!? 必死に逃げている
カティスがハウンド・クイーンへの
『皆さんに朗報〜♡ そのハウンド・クイーン──アイノアちゃんが“処理”してあげま〜す♡』
「ホ、ホント!?」
「い、今すぐやってくださ〜い!」
『でもでも〜、ざんねーん♡ そのハウンド・クイーンを仕留めるには、今のままでは流石のアイノアちゃんでも骨が折れちゃいます〜♡』
「はぁ!? じゃあ、どうすんだよ!?」
「そうですわーっ!!
『分かってます〜♡ 皆さん、何とかしてそのハウンド・クイーンの
「はぁ、どうやって!!?」
『それは皆さんで考えてくださーい♡ と、言いたいとこですが〜』
『いまあなた達が走っている廊下には
『そこまで行ってハウンド・クイーンが動きを止めれば──
「行き止まり迄って、そんな無茶言わないで下さいませ!!」
『出来ますか、出来ませんか〜?』
「やるよ、やってやるわよ……!! あたし達を舐めないでね!!」
『その
「仕方ありませんですわ……!! “爆炎よ 爆ぜろ”──『
アイノアとエスティの策を聴いて
「Gar──r!! WowooooooN────!!!!」
魔犬の女王は高らかに吠え猛る。そう、目の前の
迫りくる“死”に決死に抵抗する、死の淵にこそ
そして、その主張を理解した女王は、鋭く尖った牙を剥き出しにする。彼女たちの抵抗を叩きのめし、絶望の淵に堕とした少女たちを喰い漁る為に。
「さぁ、抗いますわよ!!」
「しゃーねぇ、やってやるよ!!」
「フィーネ、あたし達も抗うよ!!」
「わたし達は──まだ負けません!!」
(…………この事態、どう動くのでちゅか……!?)
──カティスが観た、スティアとフィナンシェの“死の未来”まで──あと60秒。
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