RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第四話:目覚めの時④/迷宮の底にて産声上げて
第四話:目覚めの時④/迷宮の底にて産声上げて
かくして、ふたりの少女──スティア=エンブレムとフィナンシェ=フォルテッシモは
(お、お、おち、おち、落ち着け、落ち着くんだおれ……!!)
かつての魔王カティスは瞳を閉じて目の前に広がる
(まず──いま
「たいへんスティアちゃん……!」
「……っ!? どうしたのフィーネ!?」
「赤ちゃんが……泣いてないよ……!?」
「いやそれ生まれた時の話だから!? この赤ちゃん、この宝箱から生まれた訳じゃないよ!!?」
(──いや、うるせえな!?)
「おねがい……赤ちゃん泣いて……!!」
「あうあう……」
「ちょっ!? あたしの話聞いてた!!?」
フィナンシェは赤ちゃんのお腹を毛布の上から必死に
(
「ば……ば……ば……!!」
(
「…………!?」
「ば……、ばぁーー⤴⤴⤴ぶぅーーー⤵⤵⤵(棒読み)」
「「うわっ、泣くの下っ手ーー」」
(悪かったでちゅねーー!?)
「うわっ……めっちゃ眼ぇ見開いてガン見してる……」
「よかったー。赤ちゃん、ちゃんと生きてたね」
「もっと早く気付いてあげたら?」
(──なんなんだこいつ等は……!? くそ、考えが
ふたりの少女の
(
そこまで考えて、赤ちゃんの思考は停止した。
(待て……待て待て待て……!?
ここに至って、
『魔王カティス』──かつて、世界を
(
そう、生前──魔王カティスは、城を訪れた勇者ウロナ=キリアリアとその仲間を返り討ちにした後、生まれ変わりの術を自らに掛け
(その時──
魔王カティスは死の
(
だからこそ、赤ちゃんになった
(もしかちて──
(
そうならば、確かめなければならない。本当に自分が生前の──“史上最強”の名を欲しいがままにした『魔王カティス』の記憶と
「た、た、た、大変だよフィーネ!! と、扉が……
そして、その
──ズゴゴゴゴ……!!
けたたましい
それに気付いたスティアとフィナンシェがすぐに扉に駆け寄るも──
──ガコオォン!!
──と、スティアとフィナンシェの目の前で大きな音を鳴らしながら扉はピッタリと閉まってしまった。そして、辺りはひっそりと静まり返ってまう。
空間そのものが
「……………………。」
スティアとフィナンシェは仲良く閉ざされた扉を見つめる。扉が開く気配はない。
「……………………。」
「……………………。」
もう一度、閉ざされた扉を見つめる。扉が開いているなんて事は──当然、無い。
「や……や……、やぁっっっっばぁぁぁーーーい!!?」
(だから、さっきから
扉に駆け寄ってスティアは
「どうしよ……どうしよ……どうしようーー!!? 閉じ込められちゃったーー!!?」
流石に自力で動かすのは『無理』だと
当然だろう。さっきも
「今日はここでお泊りだねー♪」
「なんでこの
絶叫するスティアに、カティスは思わず同情してしまう。
(周りが『ボケ』だと、残ちゃれた奴は
うんうん、と
「赤ちゃんに同情されてるぅーー!!?」
(人の
──赤ちゃんにまで
「スティアちゃんもお布団敷いて一緒に寝よ♪」
「何言ってんのフィーネ!? もしかしたらあたしたち
「うん……だから、一緒にミイラになる
「いやぁーーー!? まだ諦めないでーーーー!!?」
ゆさゆさ、ゆさゆさ──スティアが
(目が回るでちゅ〜〜!?)
フィナンシェに
『ミイラくん、ミイラくん。少し質問良いかな?』
『あ〜魔王カティス様。いいッスよ〜〜何が聞きたいんスか〜〜?』
『わ〜、思ったより
『光栄ッス! 自分、これでも元々
『わ〜すごい♪ 蘇らせて部下にしてゴメンね♪ ……って、どうでもいいわ!!?』
『魔王様、ノリめっちゃ良いっスね!』
『貴様は元王族の癖に態度が軽すぎるんだよ!? ……まあいい。質問なのだが、『ミイラ』をやっていて
『いや、そんな事全然ないッスよ。だって自分、ミイラになる時、脳みそ
『その割にはお
『“魂”があればこれ位は余裕ッス!』
『……
『
『ああ、お疲れー。…………って、
『……我が主、そんな事を気にするより前に、お湯に浸かったらミイラ様から色々と
──────。
(……
心底、どうでも良い事を思い出していたカティスだったが、どうでも良い事に気付くと
「フィーネ……!! 諦める前にどうやったら
「…………そうだ! 肉体を
「死〜ん〜で〜るぅ〜〜!!? 意味無いよーそれー」
(はぁ……。
バカ騒ぎするスティアとフィナンシェに、「やれやれ」と言わんばかりに首を横に振るうと、カティスは堅く閉ざされた扉をジッと
元々、生まれ変わる際に『生きていく上で困らない程度の
具体的な
つまり──、
(この程度の
カティスには脱出の算段はついている。この程度の扉なら
(……ただ、問題なのは……)
ただし、一つだけ──カティスには
(もしかちたら、生前の……魔王とちての
それは──今の自分、『赤ちゃん』になったカティスが、生前の『魔王カティス』の
生前の──『魔王カティス』の振るった力は極めて、凄まじく、ぶっちゃけあり得ないぐらい強大だった。
その腕力は軽く叩いただけで大地を割り、その肉体は魔界の太陽が放つ摂氏1兆度の超高温を涼しげに耐え、その魔力はほんの少し魔石に
──文字通り、『史上最強』にして『絶対無敵』の存在。それが、『魔王カティス』である。
(もち、魔王とちての力をそのまま引き継いでいたら……ヤバいでちゅね)
もし仮に、今のカティスが生前の『魔王カティス』の力を100%引き継いでいた場合、
以前──魔王カティスは
その時、魔王カティスが込めた力の割合は──0.000001%、100万分の1である。
(
カティスは自身を包んでいた毛布から右腕を取り出して扉に向けて
もし、力加減を誤れば──扉どころか、辺り一帯が消し飛んでしまう。そうなれば、自分を抱いて大騒ぎしてるふたりの少女も『ミイラ』どころか即『
(
幸い──スティアとフィナンシェは
(やるなら……今でちゅね……!!)
そして──ふたりの“意識”が扉と自分から
──ドッッゴッオォォォン!!!
「ギャアァァァ!? 扉がブッ飛んだーーーー!!?」
「きゃあぁぁぁ!? 何が起こったのーーーー!!?」
着弾と同時に
先ほど
「「……………………!!?」」
その光景を、スティアとフィナンシェは
(や……や……や、やっちまった~でちゅ!?)
その光景を、カティス
今しがた撃ち出された魔力の
本来、
逆に、もし生前の『魔王カティス』の能力を
それを試すつもりで、カティスは軽く、弱く、手を抜いて、魔力を撃ち出した。
結果はどうだっただろう。
つまり──、
(し、
そこに居るのは──転生に
「…………スティアちゃん。…………何かした?」
「…………違う。…………フィーネじゃないの?」
スティアとフィナンシェは粉々に粉砕された扉の
『あなたが扉を壊したの?』と互いに問うているが、お互いがお互いに『あの扉を破壊するだけの能力・魔力を持っていない』のは百も承知している。
「じゃあ、つまり……あの扉を壊したのは……?」
「まさか……そんな……わたしがいま抱いているこの子が……?」
(ぎっくーーーー!!
ともなれば、
(まずいでちゅ……まずいでちゅ……!! おれは
しかし──自分が“史上最強”の存在だなんて知られるのはカティスの本位では無かった。世界の片隅で
「ねーえ、
フィナンシェが歌うような
だが、残念な事にカティスは──よりにもよってかの『魔王カティス』の
(
「教えてくれたらお姉ちゃんが『いい子いい子♡』してあげる♪」
「ば……ば……ばぁーー⤵⤵⤵ぶぅーーー⤴⤴⤴(目を逸しながら)」
((…………ぜったいこの子だ!!))
「……ともあれこのクソ
「もう、スティアちゃんったら
はしゃいでいるスティアの
(
「あっ、この赤ん坊、フィーネに
「うふふ、ほんとだ♪ かわいいー♡」
「良いなー……じゃなかった。フィーネ、早く
「そうだね。ねぇスティアちゃん、この子も連れて行って良い? このまま
(え゛っ!!? 気にちなくて良いでちゅよ!
フィナンシェの
別に、ふたりに保護して貰わなくても、カティスなら独りで
(って言うか、おれの事を『
しかし、既にカティスの強大な力の
「何言ってんのさ、フィーネ! そんなの決まっているよ……!!」
「ばぶ……(約:頼むぞ……)」
「もちろん、連れて行くに決まってる。こんな所に赤ちゃんを置いたままに出来ないよ!!」
「さすがスティアちゃん! そうと決まれば、一緒に行こうね赤ちゃん♪」
「ばぁぶぅーーーー!?(約:Nooooo(ノォーーーー)!?)」
「あははっ、見てフィーネ! こいつ喜んでるよ♪」
「ばぁっぶぅーー!?(約:違うわーー!?)」
「うふふ……よっぽど嬉しいのね。…………あっ! この子……もしかして……?」
「どうしたのフィーネ?」
「…………う、ううん、何でもないよ。早く皆さんの所に戻らないと……ね?」
「……だな!」
嫌がるカティスを再び抱き上げると、フィナンシェとスティアはゆっくりと部屋の外へと歩き出す。これ以上、この部屋に長居をしても仕方無いからだ。
(あ〜やれやれ、
ふたりは崩れた扉の
(……ところで、)
ただ、カティスだけはその部屋に少し
(さっき
カティスが気に掛けたのは黄金の棺──
(あれがこんな所にあるって言うことは、
徐々に遠く小さくなっていく黄金の棺と、どこか見覚えのある
『レトワイス──我が愛しき人形よ……』
『
『俺はボケた老人か何かか?』
『冗談で御座いますよ我が主。それでご用件は?』
『ああ、お前に頼み事があってな。この黄金の棺を見てみろ』
『うわ〜、びっくりするぐらい趣味の悪い棺ですね』
『…………そうか…………うん』
『分かり易いぐらいショックを受けてますね』
『
『……で、こちらの金ピカ棺がどうされたのですか?』
『……あー、俺が死んだらな……』
『
『話の腰を折るなよ……。俺が死んだらこの棺に俺の亡骸を入れて、この城の地下にある祭殿の一番奥に安置しておいてくれないか?』
『えっ……? 自分でやって頂けますか?』
『自分で出来ねーから頼んでるんですけど!?』
『はぁ……
『せめて
────────。
(ちゃんと
『魔王様〜〜ミイラは良いっスよ〜〜』
(ちょっと気に……なる……)
『もう肉体が朽ち果てているッスから、見た目のケアしなくて良いっスよ〜〜』
(…………で…………ちゅ…………)
『魔王様も早くミイラになると良いっスよ〜〜』
(……………………。)
『あっ、でも包帯の交換は年一回の方が良いっスよ〜〜』
(……ちゃっきから思い出の中の『
『魔王様も自分の中身見てみるッスか〜〜?』
(あれはキモかったでちゅ…………)
『魔王様もミイラになったらこうなるッスよ〜〜』
(…………よち、見るの
こうして──カティスはついぞ黄金の棺の中をあらためる事なく、スティアとフィナンシェに連れられて石室を後にするのだった。
そして、石室から人の気配が無くなったのを察知したのか、蒼い炎を灯していた燭台はひとりでに消え、石室に再び心地良い暗闇を
──黄金の棺に眠る
かくして──
その先に待ち受ける『運命』も知らずに────。
(そう言えば──この
自分の城が既に『崩壊』している事も知らずに────。
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