RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第ニ話:目覚めの時②/“駆け出し冒険者”スティア=エンブレムとフィナンシェ=フォルテッシモ
第ニ話:目覚めの時②/“駆け出し冒険者”スティア=エンブレムとフィナンシェ=フォルテッシモ
──時は少々
立ち昇った朝日に照らされ
「ねぇ〜、フィーネ? カヴェレの街ってもう少しで着くー?」
「まだ半分も行ってないよ? もう……だれるのはまだ早いよ、スティアちゃん」
黒髪の少女スティア=エンブレムのいかにも
「いや、分かってるけどさー。いざ歩きとなるとこんなにも
「ふふ……そうだね。いつも
「なんでフィーネは楽しそうにしてんのさ。ハァ……、疲れたー。もう3時間ぐらい歩いたんじゃない?」
「『もう』3時間じゃなくて、『まだ』3時間だよ?」
その街道は二人にとって初めて通る
「いやまあ、フィーネの言う通りだけどさ」
「そ・れ・に、たった3時間歩いただけで疲れてたら立派な『冒険者』になんてなれないよー?」
前向きな自分とは対照的に、
「『村を出て立派な冒険者にあたしはなるんだー』って言ってたのスティアちゃんでしょ?」
「言いました、言いましたよー。でも、フィーネだってノリノリだったじゃんか」
「ふふっ、そうでした。で、お父様とお母様に見つからない様に日の出前に村を出発したのよね」
「だって
「
「なんで?」
「……それは……危ないから?」
どうやら、二人は親に見つからない様に日の出前に故郷を飛び出して来たらしい。『冒険者』になる為に。
「はぁ〜〜、今ごろ
「だね。だからお父様とお母様がわたしたちを探して街道を
「はぁ〜い」
自分たちが無断で外出、悪い言い方をすれば“
〜〜〜
「……で、『冒険者』になる為には結局どうしたら良かったんだっけ?」
「『
しばらくふたりは歩き続けながら、今後の行動予定を相談していた。
「ギルドで
「へー、そうなんだー。フィーネは詳しいんだね」
「えへへ……、わたしの伯父様がギルドの冒険者で、むかし色々教えてもらったの」
『
薬草や食料の採取、
「色々な
「そうなんだ。知らなかった……」
「もう、しっかりしてよスティアちゃん。わたし達の村にも何度かギルドの冒険者さんが来てくれたことがあったでしょ?」
「あー、そう言えば『村の近くに出没した危険な
「そう……ギルドの冒険者さんだよ」
こう言った依頼を出す“依頼者”とその依頼を受注する“請負人”、そしてそれらを仲介する組織は、
私たちの身近な存在で言えば『フードデリバリー』がこれに当たる。依頼者の『この料理を届けて欲しい』と言う依頼が業者へと届けられ、『依頼者の元へ料理を運ぶ』と言う依頼を業者に登録した請負人が“依頼”として請け負う。
『
「で、わたしたちの村のランプにはギルドの支部がないから、隣街のカヴェレにあるギルドの支部で冒険者の
「そっか……じゃあギルドから
「
「──って訳か。じゃあ、カヴェレに着いたら早速そのギルドの支部に行ってみるか」
「だね♪」
そんなこんなで、これからの
「なんだろうあの人たち? 見慣れない人たちだね」
「そうだな。カヴェレから来たのかな?」
三人組──男2女1の組み合わせの男女は、丘の麓で何かを話し合っているようだった。そして、彼等の先には丘を
そんな風に三人組をまじまじと観察していると、スティアとフィナンシェに気付いた三人組がふたりに向かって手を振ってくる。
どうもスティアとフィナンシェに対して「こっちにおいで」と誘っているようだった。二人は三人組の事を怪しいとは思いながらも、どうしても“
「やあ、おはよう。君たちはランプから来たのかい?」
先に口を開いたのは三人組の一人──
「「は、はいっ!! 私たち、あの……ラ、ランプから来ました///」」
「へぇー、ランプから歩きなんて珍しいね。お嬢ちゃん達はカヴェレに向かう途中かい?」
次に声を掛けてきたのは三人組
「はい、わたしたちカヴェレに向かっている途中でして……」
「そこでギルドの“冒険者”になるんだ!」
「そうなのかい? まだ若いのに熱心だねぇ」
「ならお嬢ちゃんたち……オイラ達の
最後に語りかけてきたのは、
「…………なんでゴブリンがいんの?」
「わー、ゴブリンさんも
「ナチュラルにゴブリン扱いされてる!? この
小太りの男性の突っ込みに残りの二人がゲラゲラとひとしきり笑うと、笑い涙を
「いやー、なかなか言ってくれるねぇお嬢ちゃんたち。気に入ったよ。……っと、自己紹介がまだだったな。俺はヴァラス」
「アタシは名前はラウッカ。……で」
「そこにいるゴブリンが……」
「ヴァラスの兄貴何さっきのボケに乗ってんスか!!?」
「悪い悪い冗談だよ。……こいつがオヴェラって言うんだ」
三人組はそれぞれ自己紹介を
「わたしはフィナンシェって言います」
「あたしはスティア。スティア=エンブレム」
「……スティアちゃんにフィナンシェちゃんだね、よろしく」
逞しい身体をした小麦色の肌の青年ヴァラスが握手を求めてスッと手をふたりに差し出すが、流石に見ず知らずの男性と触れるのは抵抗があったのかスティアとフィナンシェは怯えた様に身を
そんなふたりの心情を察したのか、赤い髪の女性ラウッカはヴァラスの手を左手で押さえ付けて下げさせると、今度は自身の右手をふたりに差し出して改めて握手を求めて来た。
わざわざ同性のラウッカが気を利かせてくれたのにこれを
握手を無下にされたヴァラスは少し残念そうな
「そうそう……
「……もう一つですか……?」
フィナンシェのきょとんとした顔に気を良くしたのか、ヴァラスは腕を組み自慢する様な口調で話し始めた。
「俺たちはギルドから派遣された調査クラン『
「ギルドって……お兄さんたちギルドの冒険者なんですか!?」
「そー言う事。アタシたちはギルドの
「
『
「
今まで、
「つい最近、カヴェレの住人から『ランプに続く街道に
「そこで
「それも、ここは恐らく
ただでさえ、
「普通じゃ無いってどう言う事なんですか?」
「カヴェレで受けた
「その情報によると、ヴェルソア平原にはある建造物があったらしいんだ」
「…………建造物……ですか?」
「ああ、そうだ。聞いて驚くなよ? このヴェルソア平原には……建っていたらしいんだ。
「魔王……カティス……!!」
その名前に──スティアとフィナンシェは驚愕する。『魔王カティス』──この世界に住む人間なら
「まさか
「そんな……まさか伝説の魔王カティスさんが……地面の下に住んでいたなんて……!!」
「いや違うよ!!? さっきヴァラスさんが“城”って言ってたじゃん!! どー考えてもここ城の跡地だよ!!?」
「あっ……そうなんだ。良かったー、わたしてっきり魔王カティスさんはモグラさんなのかなーってビックリしちゃった」
「フィーネ……もし魔王カティスにそんな事聞かれたら殺されちゃうよ?」
天然っぷりを
「ここが本当に魔王カティスの城の跡地だって言う確証があるんですか?」
「まあ……俺達も
確かに──穴の地点から数十キロメートル離れた所に大きな湖は存在している。
フィナンシェが村で聞いた話では──その昔、
この湖があるお陰で、ヴェルソア平原は今現在の豊穣の土地に蘇る事が出来たのだ、とも。
「その湖の近くに魔王カティスの城が
「で、そこにカヴェレから
「位置的にも、この場所が魔王カティスの居城跡である可能性が高い……とオイラたちは睨んでいるッス」
ザワザワ──先程まで心地良くそよいでいた風がざわつく。スティアとフィナンシェは予感する。
──何が始まる、大きな
「そうだ……! 折角だし、二人とも俺たちの仕事を手伝ってみないか?」
故に──
ヴァラスはラウッカとオヴェラに
「えっ……、良いんですか? でもあたしたちまだギルドの冒険者じゃ……」
「平気さ、実際に調査をするのはアタシたち。アンタたちは見学だと思ってれば良いのさ」
「
「報酬もくれるんですか!?」
「当たり前さね。
「それに……手伝ってくれたらカヴェレに戻った時に俺たちの方から、お嬢ちゃんたちの“推薦状”を書いてあげるよ」
「…………本当ですか!? ねえ、スティアちゃん!」
「……うん。それならあたしも……行ってみたい……かな?」
その
まさに『
「ぜひ、あたしたちにも手伝わせて下さい!」
「わたしからもお願いします!」
「決まりだな。よし、じゃあ早速魔王カティスの
ヴァラスの
いざ
「初めての
甘ったるい美声が、ふたりの好奇心を
そんな
「くくく…………、な~んちゃってぇ。俺たちはギルドはギルドでも調査クランじゃなくて──『盗賊クラン』なんだよねー」
「いやー、あの
「
「だな。せいぜい
その男──『盗賊』ヴァラスは、
「──初めての
「アンタたちが楽しんだ後は、あのお嬢ちゃんたちの身ぐるみ
「
「あれー!? いつの間にかオイラも被害者になってるー!!?」
「…………半分
「半分本気なんだ!!?」
自分たちのすぐ後ろにいるのが、獲物を狙う獣とは気付かずにスティアとフィナンシェは
向かうは──期待と希望、欲望と
その名は『ヴァルタイスト地下迷宮』──かつて世界を
その日──ふたりの少女の旅立ちの日。そして、
即ち──『魔王カティス』復活の日。
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