プロローグ④:切り札 -Cheat-
「魔王九九九式──『
魔王カティスの言葉と共に魔法陣は勢いよく紫色の禍々しい
魔王カティスと勇者ウロナの距離はおおよそ20メートル。射出された鎖が勇者ウロナに着弾するまでの時間──僅か0.3秒。
だが、
鎖が直撃する
その反動で無理やり軌道を切り替え左に向かって大きく跳躍、魔王カティスの放った鎖を
「ほう──」
僅かに、
4本の鎖は勇者ウロナの着地と同時に進行方向をグニャりと
勇者ウロナは着地の衝撃を軽減するために、腕が床に触れるぐらいに膝を大きく曲げて姿勢を低くしている。
次の魔力放出による跳躍は
しかし──、
「──“
勇者ウロナは、姿勢を低く保ち、魔王カティスから視線を一切
──“氷雪系、究極魔法”──
「──『
そして、勇者ウロナの描いた魔法陣から放たれた白い閃光は魔王カティスの鎖を一息で呑み、―273℃の冷気で
(……なんだ、意外と冷静じゃないか)
分かっていたのだろう。この『
そんな勇者ウロナの
だが──魔王カティスの
「“
勇者ウロナの掛け声と共に、魔王カティスの掛ける玉座の足元から赤く輝く魔法陣が出現する。
そして、その魔法陣に魔王カティスが目を向けた瞬間──魔法陣は
一瞬──
(これはウロナの得意としておった炎熱系の究極魔法……『
玉座を包む豪炎に必死に目を
荒れ狂う灼熱は余りの高温に
その温度──実に摂氏10万℃。魔法陣の外周部に
(あの炎に
(あのような炎、我が主にとっては
誰もが、その程度では魔王カティスを倒すことなど不可能だと確信していた。
しかしそれは、勇者ウロナも思っていること。
(この炎……これは
地獄の業火に
この炎を壁にして勇者ウロナは次の一手に移っていると確信していた魔王カティスは、炎の先に目を
「魔王九九九式──『
そう言って自らの瞳に術を掛けると、魔王カティスの視界を覆っていた眩く燃え盛る豪炎はみるみる
視界を確保すると魔王カティスは玉座の間の
そこには魔王カティスが
そして──小さく息を吸い込むと、勇者ウロナは豪炎に包まれている魔王カティスに向かって勢いよく聖剣を
強い回転を加えられた聖剣はまるで
(再び私の首を狙うか……なら)
勇者ウロナの
すると炎は、刃物を挿れられた布地のように一筋の切れ目を現した。その切れ目から
「魔王九九九式──『
すると、魔王カティスに向かって飛んでいた聖剣は
それを確認した魔王カティスは、勇者ウロナの一手を潰してやったと小さくほくそ笑む。
だが、まだ勇者ウロナの手は止まっていなかった。
「“
いつの間にか玉座の向けて駆け出していた勇者ウロナは、休む間もなく魔王カティスへ向けて魔法によって発生させた紫に輝く
『
(聖剣は
勇者ウロナはすぐそこまで迫って来ている。
開けた視界の先にいたのは──自分の心臓に向けて
「何っ!?」
初めて、魔王カティスは驚きで目を見開いた。
勇者ウロナは聖剣を
なのに、聖剣を拾った
その答えを求めて魔王カティスは、空中で停止した聖剣に目を向ける。
そこには確かに聖剣があった。あったが、魔王カティスが
(これは……“
理解した時には
(そうだ。あの時──時間を巻き戻されたとはいえ、この聖剣は
勇者ウロナの
「…………そう、
──ことは無かった。
ガキンッ、と鈍い音を鳴らして勇者ウロナの聖剣は、魔王カティスの皮膚に傷を付けることも出来ずに受け止められる。
その光景に、勇者ウロナの顔はみるみる青ざめていった。
「なんで……だって……さっきは確かに……首を……切り落とせた……筈……なのに……!」
「あぁ……言うのを忘れていたな。魔王九九九式──『
「じゃ……弱体化…………だと……!? じゃあ、俺がお前の首を
勇者ウロナの
すると──ドスッ、と背中に鈍い
勇者ウロナが振り向くと、自分の背中に刺さっている
「さっきの……!?」
「それは
──熱い、背中に
そんな勇者ウロナの
「あぁ、久々に楽しめたよ。こんなに殺し合いを楽しんだのは、
その言葉に勇者ウロナはおろか、後方で
女神シウナウス──この世界で
その事実に、勇者ウロナは
「じゃあ……この聖剣の『
「当然の話であろう。私に
そう魔王カティスが言い切ると、勇者ウロナが握り締めていた聖剣は割れた食器のように砕けていった。
「さて……そろそろ退いて貰おうか。私は貴様のような
誰もが
(まだだ!! まだ俺には“
諦めかけていた
「なんのつもりだ……? まさか、このまま私を締め殺すつもりなのか? フフフ……随分と笑わせてくれる」
玉座に腰掛けて
(そのまま
勇者ウロナの眼前に真っ黒な光が
それは──あらゆるものをも
勇者ウロナ──その
「終われ! ──『
放たれた黒い閃光が魔王カティスを
この死に例外は無い。これを受けた相手は
それが、勇者ウロナの第二の“
だから頼む──もう死んでくれ。そう勇者ウロナは初めて
「フフフ……フハハハハハ!!!」
だから──それでも
「そん……な…………」
「私は、“生”も“死”も支配する魔王、絶対なる
血の気が引いていく。希望が潰えていく。絶望が
「
そう、魔王カティスが断言した時、勇者ウロナは
「う、うぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
勝てない、勝てない、勝てない、勝てない、勝てない──負けたくない、負けたくない、負けたくない、負けたくない──。
鎖に投げ飛ばされた勇者ウロナは最早、魔王カティスに視線を向けることすら出来なかった。
──絶望が、死が、敗北が、ケタケタと笑い声をあげながら迫ってくるのを勇者ウロナは実感した。
今まで、俺は誰にも敗れたことなんて無かった。女神シウナウスが、勝ち続けれるように
生まれた時から『勇者』だったから。今まで邪魔してきた相手は全員、最高の“
──なのに、なのに、その
けれどもうどうすることもできない。
あの魔王には歯が立たない。
あぁ、最初から決まっていたんだ。俺は……
初めから、俺に勝てる
だから──もう終わりにしよう。
投げ捨てられ宙を舞っている勇者ウロナは、虚ろな瞳で
「──第三“
「……我が主、『決まったぁ……今の俺チョーかっちょいい』とドヤ顔している場合ではありませんよー」
部屋の片隅でジッと
「……っ!! これはまさか──
玉座の間を──魔王城ヴァルタイストの全てを巨大な魔法陣が覆っていく。
それまで勝ち誇った顔をしていた魔王カティスですら、勇者ウロナが
「貴様……!!
魔王カティスが声を
「ウロナ……冗談……だよな? 私たちを殺す……なんて……」
「ウロナ……儂らは……仲間じゃないか……?」
「ご主人……さま……嘘……ですよね……?」
少女たちの
「アハハハハハ!! 何が仲間だ笑わせんな!! 最初っから──テメェらは俺の成り上がりのための
「そん……な……」
「だからよぉ、駒なら駒らしく俺の為に死ね!!」
その言葉に、三人の少女たちは
今まで、慕っていた彼は、自分たちを
今まで、自分たちが過ごしてきた日々は、自分たちが信じた勇者は
そんな、残酷な真実を知ってしまい、彼女たちは自分たちを
「我が主、この光は一体……!?」
「魔法陣の中にある全ての存在を
勇者ウロナは『
だから、最後の『
いざとなれば、
しかし──魔王カティスの
「これを使えばテメェの
そう──たかだか“あらゆるものを消滅させる”程度の魔法なんて魔王カティスには
こんなものは勇者ウロナの、自分の『敗北』を認めることのできない男の
問題は、その悪あがきで
「貴様の
「そうだ!! 俺は『負け』なんて認めねぇ!! 認めるぐらいなら死んでやる!! こいつらは──その道連れだ!!」
魔王カティスは怒りを
そんな身勝手は許してはいけない。
彼女たちには
この魔法の発動を許してはいけない。
魔王カティスは遂に重い腰を上げ玉座から立ち上がった。
自分のためではなく──愚かな勇者の道連れにされそうな
「最後に……もう一度言うぞ。貴様は──此処で死んで逝け! 勇者キリアリア!!」
玉座の間が白く染まっていく。
「死ね! 死ね!! 死ねぇ!!! 魔王──カティス!!!!」
敗北が、音をたてながら迫ってくる。
「魔王九九九式────」
決着の
「第三“
勇者ウロナの──最後の“
「────『
魔王カティスの一撃が、勇者ウロナを呑み込んだ。
──竜の咆哮のように
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