プロローグ②:朱月の空の邂逅
レトワイスと名乗ったその
別段、彼等が初めて
ただ、彼等の知っている、今まで戦ったことのある
彼等が
だが目の前に居る
四人が知りうる
「…………その魔王の
最初に静寂を打ち破り
不気味な人形に
勇者ウロナは背中に携えた女神より授けられら聖剣に手を掛け、騎士リタも
しかし、目の前の人形は彼等の予測とは違い、微動だにせず静かに先程の
「──
それは、
「…………迎えに来たとはどう言う意味じゃ? お主は儂らを
「いいえ、
「勇者様御一行ね……。つまり魔王カティス、貴方の主は私たちが
「その通りで御座います。我が主は皆様を
「…………分かった。なら案内して貰おうか」
「ウロナ!? 正気なの、罠かも知れないのよ!?」
騎士リタが
「ありがとうございます。では……我が主の元へとご案内致しますので
にっこりと──まるで
「ご主人様……大丈夫……なのでしょうか……?」
勇者ウロナの半歩後ろに隠れていたキィーラは不安そうな表情で訴えかける。騎士リタも賢者ホロアも同じ
もし──これが罠なら、あの人形は何処かで自分たちに闇討ちを仕掛けるかもしれない。
仮に──罠じゃなかったとしても、自分たちはあの人形に導かれるまま魔王と対峙しなくてはならない。
いずれにせよ、あの人形に着いて行くという行為は
騎士リタも賢者ホロアもキィーラも──それぞれが
こちらには勇者ウロナがいる。女神に愛された、最高の
しかし、相手は世界を滅ぼしかけている史上最悪の魔王。
勇者ウロナが一捻りした
勇者ウロナが
勇者ウロナが数え切れない程の人命や街を救ったように、魔王カティスは数え切れない程の人命や街を落としてみせた。
万が一、魔王カティスが勇者ウロナに対して卑怯な
「ウロナよ……本当にあやつを信用する気か?」
「私は反対だ。……みすみす相手の思惑に乗ることなんて無い筈だ」
「ご主人様……わたし……怖いです」
それまで、成り行きとはいえ自分たちの意思で行動出来ていたからこそ彼女たちは言いようのない不安を押し殺すことが出来ていた。
しかし、魔王の使いである
──不安だ、嫌だ、怖い、怖い、怖い────。
頭の中でネガティブな感情がぐるぐるしている。足が
そんな、見動き一つ出来なくなってしまった彼女たちに、少年は、優しく、力強く、何時ものように、声を掛ける。
「大丈夫だって。何かあっても俺が何とかしてやるからさ」
それは彼女たちがよく聞いた、何時もと変わらない声だった。
何時もそう言って、彼は涼しそうな顔で
何時もそう言って、私たちを救ってくれた。
そんな、彼から見れば何の
その言葉を聞いて、ほんの少しだけ安堵の息を
「分かった……貴方がそう言うなら彼女に着いていきましょう。その代わり────」
「何かあったらお主が儂らを守るんじゃぞ」
勇者ウロナにそう言うと騎士リタと賢者ホロアは構えていた武器を下ろして、先行するレトワイスを追って朱に染まった廊下を歩いていく。
「キィーラ……歩けるか?」
勇者ウロナが震えるキィーラの肩にそっと手を添える。その優しい言葉は、その優しい手は、キィーラに
「…………もう大丈夫です。ご主人様……わたしたちも……お二人に続きましょう」
キィーラがそう言うと、勇者ウロナは彼女の手を握りって騎士リタと賢者ホロアの後を追って歩き始めた。
人形は何も語らず黙々と歩みを進め、一行も会話を聞かれないように
どれぐらい歩いただろうか、
「……質問、していいか?」
レトワイスに続きながら階段を登っていた勇者ウロナは、今まで黙って歩き続けていた彼女に言葉を掛ける。
他の三人は“だめだめ”とジェスチャーで勇者ウロナに
「外が急に朱くなったけど、これはあんたのご主人様の
「
聞き覚えるある現象だったのか、賢者ホロアも意を決した様に眼を見開くと会話の環に交じってくる。
「二十年以上前──魔王カティスの動きが活発だった頃に
「心当たりがあるのですか、ホロア様?」
「あぁ、そうじゃ。朝であろうが夜であろうがお構いなしに今の様な朱い夜になる現象──魔王カティスが活動する時にこれが発生しているという
「フフッ──まさしくその通りで御座います」
レトワイスは嬉しそうに声を
「我が主は
「ハァッ!? じゃあ空を朱くするのは
「ええ、その通りですよ」
「…………なんと、かの魔王は意外とお
「ええ、我が主はお茶目さんなのです」
「
「
「…………? 勿論、
「ぜ、全世界!?」
レトワイスが
自分の出現を知らせるためだけに、空を朱く染め上げるような軽い
「今ごろ皆様の国は大騒ぎでしょうね。なにせ、二十年振りに空が朱くなったのですから。いよいよ、魔王と勇者が相対したのかとざわついている頃だと思いますよ」
レトワイスは主である魔王カティスのことを
「じゃあ、もう一つ。この城には魔王の配下は居ないのか?」
確かに
城に足を踏み込んでから今の今まで、
魔王の配下は確実に存在している。何故なら、勇者ウロナたちは今まで幾度なく魔王の配下と戦ってきたからである。
なのに、その配下の者たちがこともあろうに
だから、勇者ウロナはその疑問を唯一、城にいた魔王の従者であるレトワイスにぶつけた。
「配下の者ですか? 彼等なら我が主から
答えは
単に魔王から休みを与えられただけで、だから城にはいないのだと。
ただ、それは勇者ウロナの“プライド”に
「俺らが来るのを分かったうえで、配下を城から退かせたのか?」
「はい、その通りですよ。
──舐められている。そう、勇者ウロナは感じた。
普通なら大量の部下を配置して侵入者に備える筈。それを魔王カティスはこともあろうに、
なら今この城には、
だから、つい──勇者ウロナはレトワイスに
「あんたは──自分の主人が俺にやられる心配はしていないのか?」
「いいえ、ちっとも。勝つのは我が主に御座います」
即答した。疑うことなく、不安に思うことなく、レトワイスは主の勝利を確信していた。
「少なくとも、“
「へぇ……言ってくれるじゃないか」
そう、勇者ウロナの自己中心的な性格を
階段を登り終え、再び長い廊下を歩いていた四人と一体の間にピリピリとした
騎士リタが必死に勇者ウロナを抑えたお陰で
〜〜〜
「さて──到着しましたよ皆様。この扉の先の玉座の間で我が主が皆様をお待ちされています」
それから数分後、大きな扉の前で立ち止まったレトワイスはくるりと身を
「此処に……魔王カティスがいるのか」
そうは言ったものの、そんなこと
玉座の間に続く堅く閉ざされた扉から溢れ出る恐ろしい迄の
それは他の三人も同じだった。キィーラの自慢の三本の尻尾は
ただ一人、勇者ウロナだけはそんな重圧に屈することなく扉をじっと睨みつけている。
そんな彼等をほんの僅かな時間だけ見つめ、レトワイスは
「我が主、勇者様御一行をお連れ致しました」
そうレトワイスが言うと、
確実に
「ご主人様……」
キィーラは勇者ウロナの手を今までに無いぐらい強く握った。
「ウロナ……絶対に勝つんじゃぞ!!」
賢者ホロアは、愛弟子である勇者ウロナに
「ウロナ、絶対にみんなで生きて帰るぞ」
騎士リタは、
勇者ウロナは三人の方を向かず開いていく扉の奥をじっと
「大丈夫だって、絶対に俺が勝つから」
そう言うと、玉座に入っていくレトワイスに続いて勇者ウロナは開いていく扉へと向かっていく。
(なにせ、俺には3つの“
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