RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
プロローグ①:混沌より出づりし魔王、光より遣わされた勇者
RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
@apache2056
序章:勇者キリアリアと魔王カティス
プロローグ①:混沌より出づりし魔王、光より遣わされた勇者
そこは草木枯れ果て千年不毛の大地と化した荒れ果てた荒野。この死した大地の中心部に建つ悪しき魔王の居城は、いつもと変わらず、大小二つの月が放つやわらかな光にただ包まれ
「……我が
月明かりだけが差し込む静寂な玉座の間に響く女性の声。玉座には額から大きな角を生やした一人の老人が座っており、玉座の傍らには
すぅすぅ、と寝息をたてながら玉座に腰掛けて眠る老人は従者である
「お目覚めですか、我が主?」
「はいはい、起きておる起きておる。全く……もうそんな時間か……もう少し眠っていたいのだがなぁ」
「いけませんよ我が主。久々の来客なのですからしっかりとお出迎えを致しませんと」
二度寝を
「それでは我が主、
「構わん、好きにすると良い。あぁ、それから
「承知致しました我が主。……それでは行ってまいります」
従者の人形は再び姿勢を正すと、
やがて──扉に手を掛けた従者は、重く大きな玉座の間の扉を開き、玉座に座る主に再び一礼してから扉をくぐり玉座の間から続く廊下へと出ていった。そして従者が扉をゆっくり閉じたのを確認すると、老人は大きくため息をついてから月明かりが差し込む窓に視線を向けて静かに
──ドオォォォォン……!!
それから数分後、夜の静寂を打ち破る様な凄まじい轟音が城中に響き渡る。遠く──城の扉あたりから聴こえた爆破音に耳を傾けると老人は静かにほくそ笑んだ。
「やれやれ……今宵は折角待ちわびた
年老いた玉座の主は、愉快そうに、満足そうに、不敵そうに呟くと、
「さてと、では
玉座に座ったまま右手を正面に掲げると、
そして、玉座に座る老人──世界から
「
広く玉座しか無い様な
〜〜〜
────少々時は
高さ10メートルを越える分厚い鋼鉄の扉に閉ざされた夜の城内は、廊下に設けられた窓から月明かりだけを招き入れひっそりと静まり返っていた。
次の瞬間────ドオォォォォン!!
凄まじい爆発と轟音を伴い、鋼鉄の扉はまるで崩れた積み木の様に小さな破片になって吹き飛び崩れていった。衝撃で埃が舞い上がり辺りは先程の静寂を一気に失ってしまい、物々しい雰囲気をようする。
「ゲホゲホ…………ッ、こっの
「…………何か悪かったか? 軽い挨拶代わりじゃんかこれぐらい」
「アホーー!! こーんなバカでかい音をさして魔王や魔物に感づかれたらどうするつもりなのじゃー!?」
「ケホケホ……、無駄ですよホロア様。ウロナはそんなこと考えていませんよ……どうせ」
「…………あー、リタの言う通りじゃな……。はぁ……やれやれ、これで魔王に逃げられていたら儂らは国王にどんな責任をとらされるか……聞いておるのか
「はいはい聞いてるって。お師匠様は口
「けほ……はい、ちゃんとここにいますご主人様」
扉のあった場所は土埃が舞い上がり、その土埃の中から誰かを叱責するような童女の声と、それに賛同する凛々しい少女の声と、軽口を返す少年の声と、呼びかけに答える幼い少女の声が響き渡る。
「さーて、それじゃおっ邪魔しまーす」
4人の先頭に立つ黒髪の少年ウロナ=キリアリアは、
夜明かりに映える白い石造りの城内に
そのまま白を基調にした軽装や背中に携えた背丈以上の大剣についた土埃を手で払っていると、彼に遅れて三人の少女達が土埃から抜け出してくる。
「大きな声で………! 一度ならず二度までも…………全く、お主はどれだけ騒ぎを起こせば気が済むのじゃ!?」
長い耳と手にした大振りな杖を上下にばたつかせながらローブを羽織ったエルフの賢者ホロアは向こう見ずな勇者ウロナを古臭い口調で叱責している。
「ホロア様の言うとおりだウロナ。今の騒ぎを聴きつけて城に居る魔物が此処にやって来たらどうするつもりだ!?」
それに同調するように騎士リタも纏った鎧や腰に携えた剣や後ろで結った長い金色の髪に付着した砂埃を手で払いながら、ため息混じりに勇者ウロナを紫色の瞳でジトーっと睨みつつ文句を口にする。
「あの……ホロア様……リタ様…………ご主人様もきっと……何か考えがあって……扉を破壊したんだと……思い……ます……」
「のぅ……キィーラよ。この勇者様はきっと、ただ城の扉が邪魔だからぶっ壊しただけだと儂は思うぞ」
土埃を払うためにきつね色の髪をかき分けて頭部から生えた狐の耳と三本の尻尾、着ている麻布でできた服をパタつかせながら狐の亜人種の少女キィーラは勇者ウロナを擁護しているが、賢者ホロアはキィーラの精一杯の擁護に手を
「しょうがねーじゃん。あの扉、強力な結界魔法が貼ってあったんだからぶっ飛ばすのが一番早いかなーって思ったんだよ」
「確かに結界魔法は張ってあったが、なにも無理やり壊すこともないだろう」
「はいはい、悪かったよ。じゃあ、魔王に逃げられる前にささっと倒すとするか。キィーラ、早く魔王を倒して王都に戻ろーぜ」
「…………! はい、ご主人様!」
とてとて、と近付いてきたキィーラが自分の腕にしがみついたのを確認すると、勇者ウロナは魔王城の上層に向かうためにエントランス奥に視える月明かり照らされた階段に向かって歩き始めた。
そんな勇者ウロナにやれやれ、とため息をつくと騎士リタと賢者ホロアも二人を追って歩き始める。
月明かりだけが照らすエントランスを勇者ウロナはピクニック気分で揚々と歩いているが、他の三人の少女たちは先程の衝撃を聴き付けた魔王城の魔物たちに何時襲われるかと気が気ではなく、常に武器に手を掛けながら慎重に歩いていた。
「なぁ、リタ。一つ
ふと、一番先頭をキィーラと一緒に歩いていた勇者ウロナが少し身体を
その
「何かしら? まさか、今から倒しに行く魔王がどんな奴か……なんて訊かないでしょうね?」
「………………………………。」
「…………訊くのね」
上層へと向かう階段を登りながら、まさかの質問をしてきた勇者ウロナに頭を抱えながら騎士リタは咳払いを一つすると、静かに語りだす。
「魔王カティス──数十年前に突然現れ、我々人類に進攻を開始した恐るべき敵」
呆れたような口調で騎士リタが
「かの魔王は
「奴との戦いに敗れ二つの大国と十三の都市が滅びたわ」
「
「この話は王立学院で教わったと思うんだけど……ウロナ、ちゃんと授業を聴いていたのかしら?」
「聴いとらん聴いとらん。こやつは大賢者である儂の魔法学の授業もろくに聴いとらんかったからのぅ」
「で、じゃ。王国も滅んだ二つの大国も
「逆に魔王の報復で隣国二つは滅亡。我々の王国も魔王の支配する領域への不可侵を余儀なくされてしまった、それが二十年程前の話だったかしら、ホロア様?」
「そうじゃ。以来魔王は姿を見せなくなったがの、魔王の
エントランスの階段を登りきり二階に到達した一行は、次の階に上がるための階段を探して魔王城の長い廊下を歩き始める。
窓からの明かりだけが差し込む廊下に四人の足音と喋り声だけが響き渡る。広大な魔王城はまさしく“
「ホロアはさ、その魔王カティスって奴には会ったことないのか? 確か1000歳越えてるんだろ?」
「むむっ、儂の様な
「レディって……誰よりもお子ちゃま体型じゃねーか」
「お子ちゃま言うなー!!」
「はいはい、二人とも
やれやれ、と
騎士リタに
「魔王カティスが現れた頃は儂もまだエルフの里におったからのう。実際に魔王の事を見てはおらんのじゃ」
「じゃあ……誰もその魔王さんの容姿……わからないんじゃ……?」
先程まで会話に参加していなかったキィーラが素朴な疑問を賢者ホロアを投げ掛ける。魔王が姿を見せなくなったのが二十年以上前、その時
「その点なら心配要らぬぞ、キィーラよ」
賢者ホロアはキィーラに得意気な顔をすると、
「実は儂の里の族長が魔王と直に会っていてのう、その族長から魔王の容姿については聞き及んでおるのじゃ」
「へー、じゃあその魔王とやらは一体どんな格好をしてるんだ?」
「魔王カティス……
「ふーん……つまりこの城にいる角生えた奴を倒せば良いって訳だな?」
「まあ、そうじゃが……随分と簡単に言いよるのう」
やれやれ、と賢者ホロアが勇者ウロナの
今まで誰も敵うことのなかった魔王を気安く“倒す”と言ってのけた勇者ウロナの自信と、それを裏打ちする
「国王も人々も魔王カティスには敵わんと皆、
「…………。」
「かの魔王が隣国を滅ぼした時、儂らは怯えて何も出来なかった。かの魔王が王子の婚約者を拐った時、儂らはただそれを眺めていた。かの魔王が王国に不可侵を要求した時、儂らはただそれに従うほかなかった」
賢者ホロアは
二人には魔王カティスの実際の脅威は分からない。ただ、見聞きしたり教えられた内容から魔王カティスの脅威の
だからこそ、実際に魔王の脅威を目の当たりにした賢者ホロアの反応は、深く刺さるものがあった。自分の話を聞いて騎士リタとキィーラの士気が沈んだのを察したのか、賢者ホロアは顔を上げると勇者ウロナに視線を送る。
「じゃが、魔王の恐怖に怯える日々も今日で終いじゃ。なにせ、こうしてお主がいるのじゃからのう我が勇者様よ」
「…………俺の事か?」
急に自分に話を振られたウロナは少々面を食らった様な表情で自分を指差す。
「そうじゃ。なにせお主は女神シウナウス様より“祝福”を
その少年、ウロナ=キリアリアは女神に限りない“祝福”を受けてこの世に生を受けた。
王国一番の
そんな彼を人々は女神によって
「邪悪なる魔王を討ち滅ぼすべく、天より遣わされた預言の勇者。まさかこんな軽々しい人間だとは思ってもいなかったけど」
騎士リタも賢者ホロアに釣られるように勇者ウロナに微笑み語る。軽い
「俺が魔王を倒すって預言された勇者だから、みんなは俺に着いて来てくれたのか?」
「いいえ……違います、ご主人様」
勇者ウロナの疑問にキィーラは、今まで以上に彼の袖をぎゅうぅっと力強く握りながら即答する。
「もし……ご主人様が、わたしを……奴隷から……解放してくれなかったら……わたしはきっと……あの貴族の……おもちゃにされていたと……思います」
「私も……貴方がサンクティオーヌ卿の挑戦に勝っていなかったら、きっとあの家に嫁がせられていて貴方の騎士にはなっていなかったと思う」
「儂もじゃな。ウロナ、お主があの時ドラゴンから儂を庇ってくれたから今此処に生きて
「だから私たちは信じているの。貴方が魔王カティスを打ち倒して王国に希望を取り戻してくれることを」
三人がそれぞれ自分に対する絶大な信頼を口にしたことに気恥ずかしさを感じた勇者ウロナは視線を逸しながら苦笑いする。
「あっ……ご主人様……照れてる」
「なっ……!? 違うぞキィーラ、俺は別に照れてなんか///」
「顔が赤ーくなっておるぞ勇・者・様♪」
勇者ウロナが
魔王の居城だっていうのに緊張感が無いな、そう勇者ウロナは三人の少女たちに思ったが、それは何時も自分が言われている事だと思い出すと急に馬鹿らしくなってしまい、ついつい三人に釣られて笑いだしてしまった。
極度の緊張状態を解きほぐすように勇者ウロナたちは笑い合う。それは余裕の表れ、
「楽しそうなお時間をお邪魔してしまい大変申し訳ございませんが、少しお時間宜しいでしょうか?」
声がした──勇者ウロナの
──それは、ほんの一瞬の出来事だった。
さっきまで窓から差し込んでいた柔らかな青白い月明かりは血で染めたような朱く禍々しい光へと変色し、そこが既に全く別の空間と化した事を一行に知らしめる。
その異様な出来事と同時に勇者ウロナの背後──進むべき廊下の先からその声は響いた。無機質で、無感情で、まるで魂の
「そんな……わたし……全然気付けなかった……どうして……?」
勇者ウロナに隠れたキィーラは怯えながら
当然だ、狐の亜人種であるキィーラは此処にいる誰よりも感知能力に長けており、パーティ内では危険を誰よりも早くに察知する
そんな彼女が至近距離まで近付かれても感知できなかったからである。今まで彼女が見てきた魔物とは違う、全く以て異質な存在が今目の前にいることにキィーラはおろか、他の三人も思わず息を
「誰だ!? 出てこい!」
勇者ウロナはキィーラを庇う様に一歩前に出ると、廊下の暗がりにいる声の主に
「オ……
そこにいたのは
真っ白い素材で造られた肌の様なもの、血の様に真っ赤に
「お初にお目にかかります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます