ゴールデンウィークの予定
「藍斗、デートしないと」
最低でも月に一回はデートする。これは、二人が決めた(杏哉がごり押しした)約束である。一応恋人だから、恋人っぽいことをしよう。一緒に出掛ければ『仲よく』したことになるだろう。そう考えて杏哉が提案したのだ。藍斗が心底面倒くさそうだったが、なんとか説得をした結果、月一義務デートをするようになったのだ。
「めんど。いつものとこでいいだろ」
「ああ、ノアのとこね。いいよ。明日閉店後ね」
杏哉は、明日閉店後に『約束』を訪れることを、ノアにメッセージで伝えた。キッチンさえ使えれば、ノアはいなくてもいいので、返事はどうでもいい。
「忘れないでよ」
「明日、スマホに『約束』って送って」
「わかった。ところで、ゴールデンウィークは何してる?」
「嫌だ」
間髪入れずに拒否。藍斗は次に何を言われるかを察したのだ。休みのたびに同じことを言われているので、杏哉の言いたいことがすぐにわかった。
「カフェでバイトなんて嫌に決まってるだろ」
「お、よくわかったね」
「とりあえず、無理。お前が一人で頑張れ」
「いや、一人じゃないんだけどさ、二人なんだけどさ、連休中の混み具合知ってる? 絶望だよ、絶望。忙しいのに、『連絡先交換しませんか?』とか聞いてくる、やつ、マジでイラつくんだよね。っつーわけで、お前、予定ないよね」
もちろん空いてるよね、と圧を掛けられている藍斗は、無駄だとはわかっているが、一応、抵抗を試みた。
「ダンス。歌」
「ちゃっちゃととっちゃって。編集はやってあげるから」
「うわ、俺、死ぬじゃん」
「ダンスも歌もすぐできるでしょ」
「ちげーよ。連休明け、死んでるかもしれねーわ」
「だいじょぶ。今までも死んでないから」
藍斗は今までの連休や長期休暇を思い出す。バイトでストレスをこれでも溜めてきた杏哉のおかげで、ベッドの住人になっている記憶がいくつも思い出される。実家暮らしの時は、呼び出されると、数日は家に帰れなかった。
藍斗は舌打ちをしたが、決まりきった未来はどうしようもない。だから、ストレス発散をすることにした。
「なあ、杏哉。俺、ちょっとバイトしてくるわ。お前の手伝いじゃねぇぞ」
「知ってる。オレには、よくノアのところでバイトできるな、とかいうくせに、自分もノアの仕事受けてんじゃん」
「うるせ。俺はただのストレス発散に利用してるだけだ。おまえみてぇにストレス溜めるような仕事はしねぇ」
「あ、殺しはダメだからね。あと、抱かれるのもダメ」
「しねぇよ。今回は、ちょっと、やべーとこの、やべー奴らをボコすだけだ」
「顔隠すの忘れないでよ」
「忘れねぇよ。そこら辺にいるちょっとやんちゃな奴らと違って、あーゆーのに顔覚えられたらしつけーからな」
「そーそー。オレにもめーわくかかるからやめてよ。お前にも、仕事の依頼来るんだね」
「ああ、よく来る。治安が死んでる場所あるだろ?」
「いくつも思い当たる」
「だろ。そういう街からの依頼は耐えねぇんだと。んで、殺さずに話を聞きだせる奴は貴重だから、仕事の依頼がたっくさん来るわけ。ほぼ断ってるけど。っつーわけだから」
「りょーかい」
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