回想:二人で暮らしてみて
「藍斗、服、全部一緒に脱ぐのやめてくんない?」
無事、引っ越しが完了した翌日、ソファで寝っ転がってくつろいでいる藍斗に向けて、杏哉は文句を言った。洗濯機をまわそうとした時、パンツとズボンが一緒になっていた。上に着ていたものも同様である。杏哉はついため息をついてしまった。手間がひとつ増えた。
「なんで?」特に悪いと思ってない様子で、杏哉の方を一切見ない藍斗。
「なんでって、オレが、分解しなきゃいけないじゃん。ちゃんとバラしといてくれないと面倒なの。親にいわれなかった?」
「あー、言われた気がするわ」
「だったら、そのくらいしてよ」
「杏哉だったらいいかなって」
「あっそ。でも、ちゃんと分解しといてよ」
「うるさっ」
「うるさくない」
「じゃあ、一緒に住むのやめるか?」
「たった2日弱で?」
「ああ、俺も言いたいことあんだけど」
そう言うと藍斗は体を起こして、杏哉の方を向いた。
「朝はえーよ」
杏哉は、今朝のことを思い出す。確か
藍斗を起こしたのは朝八時だった。藍斗は不機嫌そうにしていた気がしないでもない。杏哉はいつも休日は朝七時に起きている。
「そんなことないでしょ。普通だよ」
「お前の普通なんて知るかよ。あと、一時間か二時間は寝たい」
「流石に寝過ぎでしょ」
藍斗は心底訳がわからないと言った様子で杏哉を見た。
「は? なあ、昨日、俺が寝たの何時だ?」藍斗は責めるように杏哉を見た。杏哉、自分の記憶を辿った。
「たしか、二時過ぎだっけ?」
「マジかよ。俺、覚えてねえんだけど」
「だろうね」
悪びれた様子がない杏哉を見て、藍斗は盛大に舌打ちをした。
「お前、よく舌打ちするよね」
「誰のせいだよ」
「オレ?」
「そうだよ。あのな、俺は、お前と違って、ショートスリーパーじゃねえのよ。だから、八時間くらい寝たいわけ」
イラついた藍斗の訴えも杏哉どこ吹く風といった様子で、気にするそぶりも見せない。
「でも、オレは、早くお前に朝ごはんをとっとと食べて欲しいの。まとめて洗い物しちゃいたいし。それに、お前、どうせ、昼間に寝るでしょ」
「そう言う問題じゃねえんだよ。バカだろ」藍斗は吐き捨てるように言って、諦めたようにソファの上に丸まった。
「つまり、お互いさまってことで、この話は終わりね」
藍斗は鼻で笑った。
「俺らが一緒に住むっつーのは面倒だな。まあ、でも、口うるせー、全自動家事マシーンがいるって思えば、いいのかもな」
「別にいいよ。お前がどう認識しようがオレには関係ないからね。オレはお前のこと、手のかかるクソガキだと思ってるから」
「そりゃどーも、俺、寝るから話しかけるな」
「はいはい」
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