第22話「やっと本題の話」

 翌日


 晩御飯をみんなで食べ終わって皿洗いをしていると、人が近づいてきた気配がした。


「深奈君、手伝おうか?」


「……じゃあお願いします」


「うん」


 そう言って俺の横に来て洗い終わった皿を拭き始めた。手伝いしにきたのは羽咲さんだ。


「………あのさ、深奈君。実はまだ詳しく言ってないことがあったの」


「……何故強くなるための学校があるのか、ですか?」


「………………最近深奈くんが本当に怖いよ」


 洗った皿を怖がる羽咲さんに渡す。


「まあ、そろそろ俺から聞こうかなと思ってたことですし………」

 

 てかそう言う話は初めに言うのでは?


「ずっと疑問に思ってただろうけど、言わなかったのにも理由があるの」


「理由ですか?」


 皿を渡しながら質問する。


「そう。ここにきてから一ヶ月近く経ったじゃん?その間色々考えて仮説は立てたと思うんだよ。何故訓練しなきゃいけないのか。その仮説を聞きたいんだよね」


「なるほど………」


 考えたことは何回もある。訓練する理由が言われていなかったから投げやりになりかけたことも無かったわけではない。


 ありそうな仮説としては二つ。

 

 一つ目 今後地球に住む人間に害をもたらす者が現れたときのため。


 二つ目 すでに敵がいることが分かっていて、そいつらを倒すため。


 どちらかと言うと二つ目の方が現実でありそうなことだ。裏社会とも言われてるし…。


「……俺の立てた仮説は……」


 かくかくしかじか


「……と、こんな感じです」


「………そうだね。二つ目が正解だよ」


 マジかよ。本当に敵いるのかよ。


 皿洗いが終わったからリビングの椅子に座りながら話すことにした。みんなは格闘ゲーで盛り上がってる。


「現状ってどんな感じなんですか?一応戦争中とかですか?」


「んー。もう少ししたらそうなるかも」


 それは大変だ。今が一番大事な時期じゃないか。


「でも学園長がいれば余裕で勝てるのでは?それとも学園長レベルが敵にもいるんですか?」


「今のところ学園長レベルは一人も目撃されて無いかな」


 安心じゃんか。戦争の勝利が約束されたようなもんだろ。


「でも噂によると相手の一番上に位置する人はまだ接敵してないとかなんとか」


「……………………」


 何とも言えねぇ。

 こっちのトップは姿見せてんだからそっちも見せろっての!不平等だろ!


 と、ここで一つ疑問が浮かんだ。


「………でも学園長から聞いた話だと、一回学園長は立てなくなるほど本気になってやっと勝った相手がいたらしいですけど、その人はどの立ち位置の人なんですかね?」


「んーー、少なくともトップではないし、その右腕レベルでも無いと思うなぁ。幹部っていうの?そういうのでもなかったはず」


「は?」


 いや幹部とかいるの?しかも学園長でギリ勝てる相手がその幹部レベルじゃないって………


「それやばくないですか?」


「そうだよねー。やっぱそう思うよねぇ。絶対もっと強いよねー。相手側のトップの人」


「そんな呑気でいられる理由が知りたい」


 近頃ガチの争いが起きるかもってのに、何でこんなのほほ〜んとしてんだよ!

 学園長に頼りすぎて終わる未来が見える。


「理由ならあるわよ」


「っ!??」


 後ろから耳元で急に話に入ってきたのは七瀬さんだ。

 吐息ががががぁぁぁ。


「………はあ、少し考えたら分かることでしょ」


「………え?」


「楽しめる時間がある時に楽しんどけっっ!!ってことでしょ」


「馬鹿なの?」


 真剣に聞こうとした俺が馬鹿だった。この人普段は真面目っぽい感じなのに俺の前だとアホになるよな。これが本性か。


「ふふっ、でもそれはあるかもね」


「え、まじすか?」


「だってそんな怖いこと考えてる間にも時間は過ぎちゃうし、だったら今を楽しみたいじゃない?」


「ほらね!深奈だけなのよ、そんな昭和の考え方してるの」


「比較的一般の考えだと思うのだが?」


 昭和の考えかぁ。………俺昭和の時代いなかったんだけど。

 

 でもまあ羽咲さんの気持ちもわからなくもない。


「じゃあもう忘れて楽しみますか」


「いや、忘れることはできないかなぁ」


「そうよ。こんな大事なこと忘れられるわけないじゃない。馬鹿なの?アホなの?」


「なんなんだよ!」


 二人してクスクス笑ってやがる。


 …………なんかイラついてきた。少しいじめてやるかな。



       天罰を下す。



「…………俺に負けかけたくせに…………」


「んなぁ!?」


「あの時羽咲さんが割って入っていなければなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「あの時は!う、ちぅ、ち、違うじゃん!」


「返答になってませんねぇぇぇぇぇ!!!」


「し、深奈君………。悪い顔してる」

 

 あらあら、そんな顔してましたか。無意識でした。

 というかそんなこと言ってる人は逃げられるとでも思っているのかな。



       天罰を下す。



「…………そういえば、学校の学園長が言っていたんですが、羽咲さんの忘れっぽさは有名らしいですね」


「!?!?」


「いやぁ、俺も大事なこと話されてないこと何回もあったから身にしみてわかるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「い、いや!それは………………おお、お、親のDNAで!!」

 

「こればっかりは神田君の言ってることが事実すぎて反論できないねー羽咲さん」


「うううぅぅぅ。南ちゃーーーん」


 そこに南さんが参戦。こっち側で。


「あ、アンタ……っ。アキさん泣かせて私も傷つけて、な、何がしたいのよ!」


「僕を敵にしない方がいいと思いますヨォ」


「うぐぐぐぐ………っ!」


「し、深奈君は酷い!何気に気にしてるのに!忘れたくて忘れてるんじゃ無いんだから別にいいじゃない!」


「宿題忘れた小学生ですか……」


 もうスッキリしたし、これ以上いじめても何も得れないし寝るか。


「そんじゃ寝ますわ。お疲れ様————」


「ああああああー!!!!なんで勝てないんですか!!なんで…勝てないんですか!!」


 とそこでテレビでゲームしていた日菜さんが叫びながらコントローラーを投げかけているところを美坂さんに止められていた。夜だし静かにしてもらいたい。


 …………え、なんで俺を睨んでるの?


「し! ん! な! さ! ん!決闘を申し込みます!!」


「えええぇぇぇぇぇぇ」


 まさかの初心者に勝負を挑んできた。


「俺やったことないんだけど………」


「い! い! か! ら!」


「はい………」


 結局無理矢理やらされる感じでコントローラーを握った。


 結果は言わずもがな。


 ーWINNER SINNAー


 初心者に負けて真っ白になってる日菜さんはみんなに任せて、俺はさっさと寝る支度を始めた。




————————————————————


 あとがき


学校が始まり、最近は暑い日と肌寒い日があり、宿題もあり、空には月がある。


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