第18話「訓練開始&作戦?開始」



 俺は今、すでに学校の教室にいる。

 少し早かったのか教室には数人の生徒しかいない。

 

 今日から本格的に戦闘訓練をやるって聞いている。

 よく考えてみれば学園最強の学園長に教えてもらえるなんて光栄だ。

 聞いた限りでは頭の回転がキモいらしい。

 どんなこと考えて戦ってるのか気になるな。色々聞いてみるか。


 と、そこに忙しいであろう学園長が来た。


(噂をすれば、だな)


「よおシンナ。お前学園くるの早い組か?」


「今日はたまたま早く起きたんで早めに来ただけです」


「そうか。まあなんでも良いけど、今日は体動かすからな。心の準備しとけよ」


「はい」


 と、急に学園長が耳打ちしてきて、小声で


「ところでシンナ、気になる女子はできたか?」


「できてません!!!」


 声を大にして言い返した。


「クックッ、そうかそうか。ま、頑張れよ」


 そう言ってこの部屋から出て行った。

 ニヤニヤしやがって。

 そういえば忘れてたけど、あの人恋愛物見るの好きなんだった。

 面倒な気しかしない。



 昨日、戦闘訓練を見学していたが、やはり皆化け物じみてた。俺の寮にいる人たちと同じくらい強くて速かった。

 確かにアレには普通なら勝てない。

 他の男子達が引きこもりたくなる気持ちがよーく分かった。辛かったろうな。


 俺ももしかしたらそっち側に行くのかな。


 と、そんなことを考えていたら後ろから話しかけられた。


「おはよう、深奈君」


「あ、おはよう」


 声の主は愛菜さんだ。 

 昨日来たばかりでクラスに馴染めてない俺を気遣って、話しかけてくれたのだろう。


「今日からは深奈君も訓練参加するんでしょ?」


「そうだね。まだ皆からすれば弱いけど、色々教えてくれると助かるよ」


「任せて!誰でも初めは初心者だから。……深奈君は運動神経とか良い方なの?」


「んー、まあ普通かな。一般的だと思うけど、それがどうかした?」


「運動神経いい人が、しかもそれが男性ならすごく強くなると思うんだよね」


「深奈は運動神経良い方ですよ」

 

 (え?この声………)


 声がした方に視線をやるとそこには予想通り七瀬さんがいた。ついでに南さんと椿さんもいる。


「そうだね。多分良い方かな」


「な、何で皆ここにいるの?」


「深奈君が財布を忘れて行ったからよ」


 椿さんがそう言いうと七瀬さんが鞄から俺の財布を出した。


「え!本当だ……。すいません。ありがとうございます」


「はい。……全く、アンタも羽咲さんに似てきたんじゃない?」


「……え」


 俺そんな忘れっぽくないです。


「………それにしてもまさか深奈があの学園長のクラスに飛ばされるなんて、本当びっくりだわ」


「本当にね。このクラスの人たち皆強いから、深奈君も引きこもっちゃうかな」


「気使うの面倒だからやめてよね」


「引きこもりません」


 この人達、俺のこと舐めてるよな。

 というかすげー目立ってる!早く帰ってもらわないと。


「あの、財布届けてくれてありがとうございました。でもここだと目立つので帰ってくれると助かります」


「それもそうだね。行くよ、二人とも」


「「おーけー」」


 南さんが常識人でよかった。七瀬さんだけだったらなんか文句言ってきそうだからな。


「あの深奈君、今の人たちは?」


「同じ寮の人です。財布届けてもらっちゃいました」


「そうなんですね」


 恥ずかしいところを見られてしまった。今度からはよく見直してから寮を出よう。

 

「あ、私学級委員の仕事あるのでそっち行ってきます」


「頑張ってねー」




 それからは特に目立ったことはなく、ホームルームが始まった。


 ホームルームが終わったらすぐに戦闘訓練開始らしい。昨日もそんな感じだったからな。


「よし、全員来たか。悪りぃが今日も俺はシンナの面倒見る予定だ。たまに見にくるけど基本はペアでいつも通りの訓練をしろ。そんじゃ始めろ」


 今日も学園長とワンツーマンか。

 学園最強の人に教えてもらえるのはありがたいことだけど、少し緊張するんだよな……。


「よし、シンナ。早速だけどどのくらい出来るのか知りたい。テキトーにかかってこい」


 早速すぎるでしょ。

 まあ最強さんの言うことなんて否定する度胸ないですけど……。


「分かりました」


 そう言って俺は殴りかかった。

 この前と同様、顎を狙った。


 でもマジで当たらない。

 もちろん全部本気で殴っている。

 この前の寮で羽咲さんとやり合った時も一発も当たらなかった。でも今回はそれとは次元が違う気がした。

 何が違うか。それは全て小さい動きで交わされていること。というか速すぎで当たった気になってしまうくらい速いということ。


 もちろん羽咲さんも速かった。目で追えないくらいには。

 でも学園長の場合、軽く残像というものが見えるほどだ。



「はあ、はあ、はあ、はあ…………は、速すぎませんか?残像見えるんですけど……」


「あっはっはっは!もうへばったか!」


 くそ。全く歯が立たない。遊ばれてるよな、俺。

 

「でも筋力は流石男って感じだな。女子の初心者からしたら倍近くはありそうだ」


「はあ、はあ……そうですか」


「あとはそうだな。暗殺の才能があるからなのか、頭の回転が速そうだな。何気に今の攻撃でも、どこからこう出せばこうなる、というような予測を瞬時にできていた気がする。まあ全く当たって無いんだけどな」


(暗殺の才能のことやっぱり知ってるのか)


 殴る攻撃をしただけで色々分かっているようだ。学園長すげーな。


「………それで、自分はこれからどういう訓練をしていけば良いですかね」


「そうだなー。……まずは基礎を叩き込む。後は体力作りだな」


「なるほど……」


 何をやるにしても基礎は大事だ。ここで習得しなかったら後々後悔するよな。

 気合いれないと。


「っと、その前に。お前にも俺たちがここまで強い力を出せる理由、というか原理を教えてやる」


「やっとですか。薬でも飲んでるのでは?」


「アホか。んなわけないだろ」


 マジかよ。結構ガチでそうじゃないかなって思ってたのだが………。


「知ってしまえばそんな簡単なの?て感じの答えだ。聞く分には、な。ここからは少し頭を使う授業だ」


 といい、学園長は近くにあった石に腰を下ろす。


「シンナは、人間が普段の日常でどのくらいの筋肉を使っていると思う?割合で言ってみろ」


「それ前に聞いたことありますね。確か……

20%くらいですかね?」


「残念。日常では1%も出してねぇよ」


「は?」


 1%も出てないの?

 まあ確かにそうか。考えてみればそんなに重いものがないからな。


「では、一般の人間が本気で筋肉使っていると思っているときは何%くらいだと思う?……例えばパンチングマシーンを殴る時とか」


「あ!それが20%では?」


「残念。アホか。3%も出てねーよ」


「さ、3%………」


 マジか………。そんなことある?100%も力使えるのに3%で本気って………本気じゃなくないか?


「………要するに何を言いたいんですか?」


「…要するに、俺たちが強いのはそのパーセンテージを上げてるからなんだよ」


「……それ、結構体がボロボロになりそうな感じなんですけど……」


「だから俺たちは日々訓練してるんだよ。もしもの時、体が壊れないようにな」


 なるほど。納得がいく説明だな。

 さっきの話が本当なら、今の俺が10%の力を出したらえげつないパワーになるだろう。壁くらいは破壊できそうだな。

 それと同時に腕も壊れるだろうけど……。


「ちなみに俺はそのパーセンテージを最高で70%弱くらいまで出したことがある」


「な、70!?体壊れなかったんですか?」


「ギリギリ立つ力が残ってたくらいだ。まあ目の前の光景は平たい大地だったけどな。きもちよかったよ」


 そりゃそうだ。3%くらいの力のパンチで大体100キロから200キロくらいの重さだ。それだけでも手が痛くなるのが一般人だろう。

 それが70%なんて考えたくない。腕が消え去るのでは?


「俺が教えてるあいつらは平均で大体15%くらいだ。一年くらいでこの数値は高い方だろうな。よく頑張ってるよ、皆」


「15%ですか………。その伸びって性別でも変わるんでしょうか」


「多分男の方が伸びが速く限界が高い。女子は一年で15%。男子で一年だと最低でも20%はいくんじゃないか?ちゃんと毎日やれば、だけどな」


「……そうですか」


 男子と女子とでは差が生まれる、か。

 男の方が強くなるのは確信してる感じだったな。

 …………よし!


「………目標が見えました。これで少しやりやすくなりました」


「そうか。……ちなみにどういう目標だ?」


「まずは一ヶ月でこのクラスの人達を越すことです」


「………………………」


 めっちゃ真顔で『無理だろ』って言われてる気がする。

 俺だってきついと思う。

 でも学園生活にも期間はある。何年制なのかは知らないがあまり長くはないだろう。

 だからこそ、現最強が近くにいる今が頑張り時だと思った。


「……大丈夫です。引きこもったりはしませんから」


「………………くくくく………あーっはっはっはっはっは!!やっぱお前最高におもしれー奴だな!良いぜ。それ手伝ってやるよ!」


「ありがとうございます!」


「よし!そんじゃまずは基礎からだな。いいか、根本的に必要なのが筋肉の……………」



 こうして俺の一ヶ月でクラス全員ぶっ倒す作戦が開幕したのだった。


 ついでに寮の人たちも倒すことにした。







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