第15話「想像以上の学園長」


 月曜日


 現在時刻 七時半


 今日が初登校日。土曜日に学校のことは大体聞かされたからあまり緊張もしてないし大丈夫だろ。


「深奈君準備できた?」


「はい」


 羽咲さんが部屋に迎えに来てくれた。

 今日は初登校ということで羽咲さんと行くことになっている。何か恥ずかしいな。

 

「もう他の人たちは行ったんですか?」


「うん。今頃学校に着いたんじゃないかな」


「早いですね」


「学校自体はすぐそこだからこんな早く行かなくても良いんだけど、皆朝練してるのよ。意識高い系ってやつかな」


「すごいなぁ」


 朝から体動かすなんて本当にすごいな。俺なんて朝のラジオ体操くらいしかしたことないぞ。


「そういえばクラスってどうなってるんですか?」


「ランダムに配置されます。仕組んだりとかはないよ」


「なるほど」


 となると同じ寮の人と同じクラスになることは確率的に低そうだ。


「もうそろそろ行きましょうか。学園長も待ってると思いますし」


「……………会いたくないです」


「………正直私もです」


 聞いてる限り普通の人間じゃない。恋愛好きの最強。男か女かは分からないが、どちらにせよやばい人だろう。


「まあいい人ではあるので、気楽に行きましょう」


「はい………」


 

 学校に着いた。

 学校に入ること自体は初めてではない。だから少し歩いたらすぐ着くことはわかっていた。拉致られたあと、ここで俺は目を覚ましたからだ。

 でもあの時は少し焦っていたこともあり、あまり記憶がない。食堂のメニューは覚えてるけど………。


「………まじで女子しかいませんね……」


「そうだね。まあだんだん慣れてくると思うよ」


 凄く居心地が悪い。さっきから視線を集めている気がする。これは本当に大変だな。早々に数少ない男子の人と仲良くなりたいところだ。

 同じクラスになれれば一番良いのだが。


「ここが深奈君の下駄箱です。覚えてね」


「はい」


 昇降口にある下駄箱の数は千近くあるだろう。こんなに生徒いるのか?


「教室に行く前に学園長に挨拶しに行かないといけないから少し付き合って」


「分かりました」


 ついに学園長とご対面か………。なんか緊張してきた。何かされないかな。急に面接とか………。


「……………………」


「ふふっ、もしかして緊張してる?」


「まあそうですね。してます」


「気楽にしてて良いよ。あの人おかしいところはあるけど根は優しくて良い人だから」


 気楽に慣れませんね。

 でもよく考えてみたら学校の校長とかって日常では全く喋らないから今回頑張れば終わりだ。頑張るぞ!



「着いたよ」


「………………………」


 いつの間にか着いていた。着いていたのは良いが…………扉デカすぎだろ。

 なんだこれ。高さ五メートル位はありそうだ。


「お、大きい扉ですね」


「本当にね。何でこんな大きくしたのか全く分からない」


 学園長は想像以上におかしな人なのだろうか。怖くなってきた。


「それじゃあ入るわよ。すぐ終わると思うから、気楽にね」


「はい」


 コンコン


「失礼します。学園長、転入生の挨拶に来ました」


「………おお、そうか。少し待っててくれ」


 中から声が聞こえてきた。そして声を聞いた感じ学園長は女性だということが分かった。



「……………………よし、入って良いぞ」


「はい。失礼します」


「失礼します」


 扉を開けて中に入った。

 部屋の真ん中に大きな机があり、そこには赤髪(ロング)の女性が座っていた。


「久しいじゃないか、明希。まさかお前がまた新入生を連れてくるとはな」


「はい。お久しぶりです」


「………………そこの子が?」


「はい。深奈君、自己紹介して」


「分かりました。神田深奈です。歳は17歳、好きな食べ物は寿司、嫌いな食べ物はキノコ類です。よろしくお願いします」


「ちょっと深奈君!?名前だけでいいのに!」


「え、そうなんですか」


「……………………」


 あ、やばい。すげー睨まれてる。緊張して全く考えずに自己紹介してしまった。俺死んだな。


「あの、学園長!深奈君は自分のことを知って欲しくて言ったのであって………」


「あっははははは!まじかお前!俺と全く同じじゃねえか!かっはははははは!」


「…………え?」


「ああ、悪い悪い。久しぶりに笑ったわ。いやー、好きな食いもんと嫌いな食いもんが俺と全く同じだからよ」


「はあ…………」


 羽咲さんが安堵のため息をついた。


「そ、そうなんですか」


「ああ!いやー明希。お前面白いやつを連れてきたな!コイツ気に入った!俺は嬉しいよ」


「喜んでもらえたなら良かったです。あと自分のことを俺って言うのやめてください」


「お前も知ってるだろ?癖になってるから直らねーよ」


「…全く……………」


 どうやら気に入られたらしい。

 というか想像してたのと全く違うな。おっさんかもと思ったこともあったが、この感じだと男と言ってもいいくらいだ。

 羽咲さんがあまり会いたくないって言っていたのもよく分かった。


「やっぱ堅苦しいのは性に合わん!おい少年、名前はなんて言うんだ?」


「今自己紹介したんですけど!?」


「俺はおもしれーとわかってるやつの名前しか覚えられねーんだ。名前は?」


「神田深奈です」


「よしシンナ、俺の持っているクラスに来るといい」


「が、学園長!?」


「実際はもうお前が行く予定だったクラスがあるんだけど、今回は特別だ。クラスチェンジさせてもらう。佐々木、手続き頼んだ」


「了解しました」


「!?」


 急にどこからか現れた佐々木という人は一瞬にして消えた。

 一瞬見られた気がしたが………。


「学園長、相変わらず勝手ですね」


「そう褒めるな、照れるだろ」


「褒めてないんですけど………」


「あのー、自分はどうすれば良いんですか?」


「今から教室に連れて行く。俺もそろそろ行くところだったんだ。明希、コイツ借りるぞ」


「はい」


「羽咲さんはこの後どうするんですか?」


「私は寮母だからこの後寮に帰って掃除してよっかな」


 と羽咲さんがふと耳元に近づいてきて、


『学園長はこの学園で一番強い人だから。あとああ見えて気に入った人に対しては優しいから、何かあったら相談しても良いかも。頑張ってね』


 そう言って手を振りながら帰っていった。


 近づいてきた時鼻をくすぐるような匂いがしました。


「よしシンナ、行くぞ」


「はい」


 俺はクラスメイトがどんな人なのか、どう接しようか考えつつだる絡みしてくる学園長の腕を払いながら教室に向かった。


————————————————————

 あとがき


 勉強したくない


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