第13話「部屋に戻りたいです……」


 次の日


 今日は日曜日だ。

 今日も朝から皆のご飯を作った。

 

 食事後皿を洗っていたら南さんが手伝いに来てくれた。


「いやー、ごめんねー全部任せちゃって」


「いえいえ、勝手に来させられたとは言え、急に来た自分を住ませてくれてるので、このくらいはさせてください」


「………………………」


「?」


「神田君は……心が広いね」


「な、何ですか、いきなり。褒めてもお菓子しか出ませんよ」


「じゃあもっと褒めよっ」


「嘘ですー」




 皿を洗い終わって皆のいるリビングに向かうと、皆でテレビゲームをしていた。

 俺は参加せずにソファからずっと見ていた。

 やっているゲームは格闘ゲーム。コンボなどが重要なゲームだ。やりたいとは思ったが女子を泣かせるわけにはいかないし、女子の中に入りたいとも思わなかった。

 だから俺はそばにあったソファでくつろぎながら見ていた。


「うっ、ふぅー、………うりゃー!えぇぇぇぇぇぇー!」


「がはははは!弱いなあ!」


「うぅぅぅぅ!も一回しましょ?もう一回!」


「次私やりたいです!」


「順番ですよー。仲良くねー」


 元気で何よりだ。さっき負けたのは七瀬さん。勝ったのは南さんだ。

 ついでに勝ち残りらしい。


 次は南さんと八坂さんだ。


「今度こそ南さんに勝ちます!」


「ヒナちゃんじゃあまだ勝てないかなぁ」


「うぐぐぐぐぐっ」


 この中だと南さんは強い方なのだろう。

 このまま見ても良いのだが、やりたくなって仕方ないので部屋に戻ることにした。


「あ、ちょっと待って」


「え?はい。何ですか?」


「今日、深奈君と少し戦ってみようと思っているんだけど……」


「ゲームでですか?」


「違います!現実でです! 特に用事とかはないよね?」


「読書という用事が………」


「一時間後の10時頃中庭で集合ね」


 おかしいなぁ。用事あるって言ったのに……。

 てか戦ってみるってなんだよ。戦闘訓練か? めんどいなぁ。


 昨日、学校の説明を受けたとき言われたのは、この学校には座学がほとんど無いということ。その代わり、戦闘訓練が主な授業らしい。

 座学よりは良いと思ったが、いざ戦闘訓練するって言われるとめんどくさくなる。


(やりたくねぇ)




 一時間後


 俺は動きやすい服装に着替え中庭に向かっていた。

 ついたらすでに羽咲さんがウォーミングアップしていた。


 他の皆と一緒に。


「神田君遅刻ー」


「遅いわよ。何やってたの?」


「いや時間ピッタリですけど………。あとなんでいるんですか?ワンツーマンでやるのでは?」


「皆、深奈君がどれくらい出来るのか見てみたいって言うから、せっかくだし皆で訓練しようかなと。………だ、ダメだった?」


 そんな可愛く言われたら断れないです。


「いや、別に問題ないですけど、恥ずかしいですね」


「誰でも初めはそうだよ」


「あんた男なんだからちゃんとしないさいよ!恥ずかしいなんて言ってんじゃっ、ないわよぉーー!」


「痛ぁ!」


 何故殴る?

 あと何でこんなテンション高いんだよ……。

 

「まだ戦闘訓練開始してないのでは?」


「本番では戦闘の合図なんて無いわよ!そこが甘い!」


 うぜぇー。


「さいですか。それでまず俺は何をすれば良いんですか?」


「そうですね。まずは私と戦ってみましょう。深奈君は思うがままに殴りに来てください」


「女性を傷つけるのは嫌なんですけど」


「「「「「…………………」」」」」


 え、何この空気。皆『何言ってんだ?』みたいな顔してるんだが………。


「あははっ!そうか!まだ私の戦闘見てなかったね。それじゃあまずは見ててもらおうかな。その方が思いっきり出来るでしょう?」


「分かりました」


 羽咲さんの指名で相手に南さんが選ばれた。少し嫌そうな顔してたけど、大丈夫か?

 二人とも位置につく。


「それじゃあいつでもいいよ」


「ふぅー……………っ!!」


 バシッッッ!!!


「は?」


 南さんが思いっきりダッシュし殴りかかった。速すぎる。目で追うのがやっと。でも羽咲さんはそのパンチを片手で受け流し、逆の手で腹パンを食らわした。


「うぐぉ!!!」


 そのまま地面に叩きつけ両手を背中につけさせ動けなくさせた。


「うあぁ……っ!ギブ!ギブギブギブ!」


「はーい私の勝ち。まあ今回は私の実力を深奈君にある程度知ってもらいたかったからすぐ終わらせたけど、深奈君どうだった?」


「………部屋に戻りたいです」


「ダメです」


 いや待て。今何秒だった?十秒、いや七秒くらいで終わってたよな。これ死ぬだろ。 

 俺、最強になれるらしいけど、この人が最強だし、俺いらなくないか?


「俺って羽咲さんより強くなれるんですか?」


「訓練すれば私を一瞬で倒せるくらいまで強くなると見込んでいますよ」


「……………まじかよ」


 俺、負けた南さんの攻撃すらあまり見えてなかったんだぞ?どうすればこんな強くなるんだよ。


「ちなみに去年ここに来たとき皆、今の深奈君より弱かったと思うよ?」


「まじすか。どうしたらこんな強くなるんですか? 全く想像がつかないんですけど」


「まあまあ、詳しい話は後でするから、とりあえず戦ってみましょう。本気で来ないと怒るからね?」


「…………はあ、手加減してくださいよ」


「当たりま………っぐ!」


 俺は話しかけて、羽咲さんが返答しようと口が開いた瞬間、舌を噛ませようと顎にパンチを食らわせようとした。でも惜しくも当たらず後方に引かれた。


「やり方がゲスいわね」


「話しかけといて返答も待たないなんて、悪役の手口じゃない」


「ひどいですね。会話の返事返そうとしたのに殴ってくるなんて」


「本番では戦闘の合図、無いって先輩に言われたんで、ねっ!!」


 一歩前進して殴るように見せかけて、そのまま回転して足で蹴ろうとした。でも足を掴まれて地面に叩き落とされた。


「うがっ!」


「すごいですよ!初めてやり合ったとは言え、ここまで頭を回らせながら戦闘できる初心者、そうそういないですよ?」


 めっちゃ笑顔で喜んでる。

 自分を殴ろうとした人に対してする顔じゃないだろ………。


「はあ、はあ、はあ、はあ」


「今の動きはなかなかでしたね。初心者にしては」


「まだまだ雑魚ね」


「雑魚で悪かったなぁ!」


 確かに頭の中で考えながら戦闘はしてたかも知れない。無意識にだけど。

 でも全く通じない。

 皆は薬でも飲んでるのか? じゃないと南さんがあそこまで速く動けてた理由が見つからない。


 そのあとは全員一回ずつ俺とやり合ったけど、それぞれでボコボコにされた。痛い。


 気がついたら昼時を過ぎていて、急いで昼ごはんを作った。チャーハンを作ったら皆運動した後だからかすごく食べてくれた。


 午後は何しようか考えたが、身体中痛いので休むことにした。






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