第12話「逆セクハラ」

 

 あれから約一時間が経った。

 現在時刻、午後9時。良い子は寝る時間だ。

だから皆を部屋に返すことにした。

 ……………嘘。返すはずがない。全員ここに正座させている。良い子ではないからな。


 別に説教しているわけではない。

 だからといって何にも言わないわけでもない。

 俺はただ、数分に一度、こう言っているだけ。


「おいババアども!さっさと俺を避ける理由教えろやゴルァァァ!」


 と。

 もちろんババアというのは嘘だ。全員若いし、美人&可愛い系の人間ばかり。


 初めはこんなに棘がある言い方はしてなかった。でも約一名舐めた態度で言い返してきたので一度公開処刑並の酷いことをして黙らせた。その結果さらにみんな黙り込んでしまい少しずつ苛立ってきてこの文脈になった。

 俺は悪くない。もはや被害者。


「……はぁ。いい加減教えてくださいよ。俺ここに来て二日目ですよ?何でこんな短期間でこんなに避けられなきゃいけないんですか?」


「…………………………」


 まだ黙るか………。

 仕方ない。この手は使いたくなかったのだが………


「………次、俺の質問に答えなかった者は、さっき七瀬さんにした『事』、やりますから」


「ひっ!!!」


「「「「「っ!?!?!?」」」」」


 いい反応してる。面白いなぁ。やべ、Sに目覚める。


「聞きますよー。俺を避ける理由を教えなさい」


「……………………………」


「では七瀬さんから始めまーす」


「つ、椿さんが!…………………って…」


「ちょっと七瀬ちゃん?言わないでって言ったでしょ?私のために我慢して」


 七瀬さんが冷や汗をかきながら喋り出した。さっきの公開処刑が効いてるみたいだな。グヘヘヘヘ。


「椿さん、次喋ったら一週間晩飯抜きで」


「っ!」


「それで、七瀬さん。なんて?」


「だから!椿さんが、あんたの……その……ど、ドウテイ、ヲコンバンウバウッテイッテタカラ、ミンナソノシーン…ヲ……ソ、ソウゾウシテダマッテタノヨ!………わ、私は想像してないからね!」


「…………………………」


 分かった。全て理解しました。

 1.昨日部屋に来たのはおそらく椿さん。明日行う夜這いの下見に来たのだろう。

 2.朝、美坂さんがおかしかったのは椿さんの命令だろう。おそらく俺の好みのタイプを知るために、可愛い系代表の美坂さんを送り込んで反応を見ようとしたのだろう。


 としばらくこんな事を一人で考えていたら七瀬さんの恥ずかしいメーターが爆発した。


「うぅ………ちょっと!なんか言ってよ!」


「ああ、ごめん。忘れてた」


「はぁ!?」


「えーっと、つまり皆さんは、椿さんに犯される俺の姿を想像して興奮してしまい喋らなかったと?」


「興奮はしてないから!それセクハラになるから!訴えるよ!」


「いや、先に椿さんのセクハラを訴えてくれよ…」


「あら。嫌だった?」


 椿さんが試すような顔で言ってくる。

 そりゃあ………


「はぁ……まったく。嫌なわけがな……ではなくて!嫌ですよ!というか童貞だって言ってないですよね!ノーコメントって言ったから!真実は教えてないから!」


「まあまあ、そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ。それよりも、七瀬ちゃん?約束破ったわね? 言ったわよね?約束破ったら一週間私の奴隷にするって」


「仕方ないじゃないですか!あのまま皆黙ってたら、またあんな………公開処刑が………あぁ」


「やる時はやる男なんで。そこんとこよろしく」


「………敬語使わなくなったわね。ついに」


「ついにというか出会って二日目ですけどね。七瀬さん以外には使う予定です、今は。まあ仲良くなった証拠でしょうよ。握手します?」


「するわけないでしょ! というか、私があんたに対して敬語使ってないからべつにいいわよ」


「それは良かった」


「あら?七瀬ちゃん、もしかして深奈君のこと、好………」


「そんなわけないでしょうが!!!」


「うぐぅっ!!」


 何故俺が殴られる?理不尽だ……。

 でも敬語を使わないことを許してくれたことは正直びっくりだ。


「というか、出会ってから二日目の夜に男を襲おうとするとか、どんだけ変態なんですか?」


「べ、別に変態ではないでしょ?皆このくらいの歳になったら卒業しているって聞いたし、私も思春期の乙女だから少し興味を持っただけよ」


 え、この歳で卒業してる人多いの?皆してるの? それはないだろ。

 椿さんは多分本か何かを見て興味を持ってしまったのだろう。

 表社会の時の記憶は無いのか?


「はぁ……………良いですか?よく聞いてください。その情報は嘘です。この歳でヤる人なんて二、三割いるかいないかくらいですよ?」


「………え?皆ヤってるんじゃないの?」


「アホですか?詳しくは知らないですけど、間違いなくその歳でヤってる人は多くないです」


「…………………………」


 顔が赤いですね。

 と、ここで今まで黙っていた南さんが口を開く。


「ま、まあ。落ち着いて………」


「わ、私は悪くないわよね!?嘘を振りまいていたあの雑誌の会社が悪いわ!ど、どうしてやろうかしら?」


「まあ確かに、この学校のことはよくわかりませんが、表社会とは少し普通というのが違うのかも知れないですしね。というわけで、夜這い、又はあれを捨てるなどは心から愛した人にしてください」


「うううううぅ……」


「………深奈さん、物知り」


「…本気になった椿さんを丸く納めさせるなんて………なかなかやるみたいね」


「し、深奈君、ごめんなさい。避けるようなことして。でも何か恥ずかしくて………。皆避けたくて避けてたわけじゃなくてね?」


「分かってますよ、そんなの。でもできれば次からこういう類のことは一番大人で経験豊富そうな羽咲さんが言ってくれると助かります」


「は、羽咲さんって経験豊富なの!?」


「ち、違います!経験なんてしたこ…………こ、こほん。ま…まあ、皆には少し早いかもね?そういうことはもっと大人になってからにしなさい!」


「「「「「「………………」」」」」」

((((絶対経験したことないな))))


 まさかの羽咲さんが未経験だということが分かり、少し悪いことをしたなと思った。

 でも今回は俺、完璧被害者だろ。


 みんなと出会ってから一回しか夜を越してないが、皆のこと(性格)がだんだん分かってきた。

 まあ楽しくやっていけそうだ。




 あと何故かこの件が終わったあと、七瀬さんが俺のことを『あんた』ではなく『深奈』と呼び捨てで呼び始めた。


 ランクアップ!




————————————————————

 あとがき

 

 訂正することがあるかもですが、それはご了承下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る