第6話「新鮮味もなんもない」


 寮内にて。

 

 俺は南さんに案内をしてもらっていた。


「ここが共有スペースのリビングよ」

「おお!」

「朝ご飯、昼ご飯、晩ご飯とかはここで食べることが決められているから」

「へぇ……!」




「ここがトイレよ」

「おおー」

「綺麗に使ってね」

「はい」




「ここがお風呂場よ」

「広!」

「覗きはたとえ同性だとしても処刑だから」

「処刑なんですか……相手の了承を得ていたら?」

「……その辺はあまり決めてないけど、私たちは一緒に入ってることあるし………追々ということで……」




「そしてここが君の部屋の012号室ね」

「おお!」


 ここに拉致されたのは気に食わんけど、新しい生活が始まると思うとワクワクしてくるな。どんな部屋なんだろう。


「中、覗いてみていいですか?」


「君の部屋だしね。ご自由に」


 ワクワクしながらドアノブに手を乗せたとき、一瞬南さんの顔が暗く見えた。


 (ん?まあいいや)


 俺は勢いよくドアを開けた。…が、その瞬間俺は固まった。

 理由は、なんか見覚えのある部屋だったから。


「こ、ここは………」


 そう、ここは俺が前住んでたアパートと同じ構造の部屋なのだ。


「新鮮味もなんもねぇーーー!」


「ああー…やっぱり君の部屋も前住んでた部屋と同じ構造?」


「はい………え?やっぱり?」


「うん。私たちもここに来た時同じような反応したよ。新しい部屋だーって開けたら前住んでたのと同じ部屋。まあ悪くはないんだけど……なんかスッキリしないよねぇ」


 まさかこれが伝統行事とされているなんて………。残酷だ………。

 でも他の人が引っ掛かるところは見てみたいな…。


「とりあえず一通りは説明したから、一回リビング戻ろっか」


「り、了解です」


 リビングに戻ったら羽咲さんがソファでくつろいでいた。


「あぁ、おかえりなさい。部屋どうだった?全く同じだったでしょ?」


「………はい…」


「あれ!?全く喜んでない!?」


「あれ、やめた方がいいですよ。反応しづらいんですよねぇ、やられた側は」


「全くですよ。そこそこ期待してたのに、裏切られた感がすごい…………」


「やっぱり新しい部屋の方がいいのかなぁ。無理矢理連れてきちゃったから少しでも前の生活と同じにしようとしたんだけどなぁ」


 羽咲さんも羽咲さんなりに気を遣ってくれていたのか。………何か少し悪い気がしてきた。

 まあ、拉致する方が悪いだろうけど……。


「「「「ただいまー」」」」


 …あ。この寮の先住民達が帰ってきたのか?


「みんな帰ってきたっぽいね」


「そうね。みんなどんな反応するかな?男の人がいたら」


「………なんか緊張します…」


「だ、大丈夫!優しい人たちだから安心して!」


「………………」


 ん?南さんが俯いてる。なぜ?

 あれ?羽咲さんまで俯き始めた。マジでなんで?

 何故俯いているのか聞こうとしたら、時すでに遅し。ドアが開いてしもうた……。


「いやー、今日の練習はハードだっ………」


 早速目が合いました。4名がご入店ですね。


「……………ど、どうも……」


 しばらく見つめ合った。それが何秒間なのか何分なのかはわからないが、体感的には一時間はあった。

 しばらくしてお互いを見つめ始めた4人がついに口を開いた。



「「「「…………お、男ぉぉぉ!?」」」」



 ………この学園の女子は男を見たらみんなこの反応をするのだろうか。是非とも検証してみたい。


 とりあえず説明したいんで逃げないでくれますかね!?







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