第5話「普通ですね……」

 

 それからは特に話す気も起きなかったのでテキトーに聞き流しながらラーメンを啜っていた。

 

「ということなんで…………ちょっと聞いてますか?」


「聞いてますか?」


「なんで繰り返すんですか!もう!聞いてませんでしたよね!」


「はい」


「認めましたね………。はぁ、なんでこんな人が殺しの才能なんて物を………。よく考えてみれば物騒な才能ですよ。そんなの極めても自分は満足するけどみんなには嫌われるだけですよ。友達いないぼっちになるだけですよ」


 なんか声小さくして聞こえなくしてるっぽいけど全部聞こえてます。さっきと全く違う人になってます。


「自分嫌われたくないんですけど……」


「嫌われませんって!好かれますよ!きっと!!」


「さっきの聞こえてないと思ってます?」


「さっき?」


 目をパチクリとしながら言う。


「無理がありますよ」


 はぁ………。なんか疲れた。食べ終わったし、とりあえず休める場所に行きたい。


「あのー、ここで生活するってことは寮とかで寝たりするんですよね?そこを案内してもらっていいですか?もう今日は疲れたので………」


「そうですよね。分かりました。では話の続きは明日で。今日は部屋でぐっすり眠ってください」


 






 寮に行く道中


 少し気になったことがあったので立ち止まった。


「あのー、気になったんですけど、ここにきてから男を見ていないんですが…………」


「あれ?言ってませんでしたっけ?ここの高校は男子少ないんですよ。あなたも含めて10人いるかいないか……」


「…………………ん?」


「ん?」


 何言ってんだこの人。10人いるかいないか?

 ナニソレキイテナイ。


「何言ってるのか全くわかりませんが」


「すいません。言い忘れてました」


 そう言って再び歩き出した。


「ちょっと待って!なんでそんなに男子少ないんですか!?」


「んー、ここは思春期の子を強くするために建てられた学校で、見込みがある人しかここに連れて来ないんですよ。本当は男子の方が力もあるし体力もあるけど、見込みがあるのは大抵女子なんですよ〜。理由はまだ解明されてませんけど、男子も増えてくれたら嬉しいんですけどねぇ」


 な、なるほど。つまりここにいる人は全員選ばれた人ってことか。その中で男子が選ばれることは少ないと……。





 それから色々考えていたらいつの間にか寮に着いていた。


「ここが深奈君の新しい家です」


 そこには特に特別なものは何も無さそうな二階建てのシンプルな寮らしいものが建てられていた。


「何というか………普通ですね」


「豪華じゃなくてすいませんでした!」


「ああいえ、特に深い意味はありませ……」


「羽咲さん寮の前でうるさいですよー、あれ?」


「え?」


 知らない人が背後から来た。学校帰りなのか、カバンを肩から下げている。この寮の住民だろうか。

 というかこの人羽咲っていうのか。


「ああ南ちゃん、こんにちは。この人は今日来………」


「男!?」


 俺を見ながら急に叫び出した。そうか、男子はそんなにいないからこんな驚いてんのか。


「うるさいですよーって言ってる人がうるさいですよ」


「んなっ!?」


「やっぱうるさい」


「っ!?」


「深奈君、あんまり彼女をいじめないでください」


「すんまへんでした」


「うぐぐぐぐっ!」


 少しいじりすぎたか?顔真っ赤にして怒ってる。


「喧嘩はしないでね?これから一緒に生活する仲なんだから」


「は!?」


「よろしくお願いします、先輩」


「嫌よ!初対面の女性にこんな失礼すぎる態度とる男と住める!わけが!ない!!」


「南ちゃん一回落ち着こ?ね?」


 腕をブンブン振りながら怒ってる。

 めっちゃ睨んでるし。


「…マジですいませんでした。やりすぎました。どうか許してください」


「ほら。深奈君も謝ってるし許してあげて?」


「…………」


 めっちゃジト目で睨まれてる。


「………今回は羽咲さんに免じて許してあげるよ。でも次はないから!いい!?」


「はい」


「よろしい」


「うふふっ、仲良くしてあげてね?」


「…………はぁ、本当にここに住むんですか?ここ女子しかいませんよ?まあ大体の寮はそうだろうけど……」


「そうですよ。僕は別にここで住んでもいいですけどここの住民が嫌かもしれませんよ?男子が少ないのは聞きましたがいないわけでは無いんですよね?もういっそ思い切って男子寮作りましょうよ」


「それがそうもいかないなのよ。うちの学園長が恋愛物を見るのが好きで、混合の寮にしないと暴れるぞ、とか言ってまして……」


 なんつうめんどくさい学園長だ。どうせおっさんだろ。ていうか暴れてもいいから作ろうぜ、男子寮。


「………学園長がもし暴れたらどうなりますか?」


「この学校は間違いなくチリと化して消えますね」


「どんだけ強いんだよ……」


「まったくよ、あの学園長……」


 少年少女を強くするために作られた学校だ。大体予想はついていたが、やはり生徒に教える立場のものは強いっぽいな。


「もう夕方になりそうだし寮の中に入りましょう」


「そうですね」


「はぁー、学校疲れたぁー」


 そういえば聞きたいこと全部はまだ聞いてないな。

 …まあ余裕がある時にでも聞くか。





————————————————————

  あとがき


 夢 無し

言うなら小説家




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