第2話「裏社会の高校です」
それからは本当に寝ようとしていた。考えるのが嫌になったのでそれから逃げようとしたが、おそらく30分ほど経った今でも起きている。
理由はわからんが、何となく脳が寝かせてくれない気がした。なぜだ?この現実から逃げたいんだ寝させてくれ脳よ。
『………コツ、コツ、コツ…』
(な、なんだ!?)
音? 外からだな。
等間隔で聞こえる。足音っぽいな。
なんなんだよマジで。
『コツ、コツ、コツ、コツ』
音が大きくなるごとに心拍数が上がっていくのが分かる。
確実にこっちに近づいているよな。
(……もう帰りたい)
「コツ、コツ、コツ…………」
止まった。この部屋の前で止まったよな。
この後、俺はどうなるんだよ!? これ絶対やばい流れじゃん!? この後何処か連れてかれて拷問とか受けるやつじゃん!
そこで俺は自然と戦闘体勢に入った。
戦闘体勢といっても自分は武術を習ったこともないし、喧嘩すらしたことない。それでも戦闘体勢はなんとなくとれた。
(少年漫画はよく読んだんだ!)
ガチャン
お、落ち着け俺!落ち着けばなんとかなるから落ち着け!
頼む心臓!今は静かにしてくれよぉー!
扉が開いて光が入ってきた瞬間、俺は躊躇なくすぐに飛びかかった。
「うりゃゃゃゃゃゃゃ!!!あんまなめてっと足元すくぅ、…………ぞ?」
「え?…………ええっとー、は、初めまして、神田深奈君。えっとー、そ、その体勢は…………何?」
「え? あ、ええっとーそのー、お、お構いなく」
「そ、そう」
は、ハズカシィ!!!!
と、というかこの人可愛いな。桃色の髪、ショートボブ、それでいてスタイル抜群だ。
そ、そうじゃない。まず聞きたいこと聞こう。
「あのー、ここは何処ですかね?自分なぜか記憶ないんですよ。」
「そ、そうですよね。えー、ここは簡単に言えば………裏社会の高校、ですかね。まあ普通の高校とは少し学ぶものが違いますけどね」
「う、裏社会の高校?」
大丈夫なのかそれは。
なんか怖くなってきたな。本当はやばいところだったりするのかな。
「う、疑ってますよね!?ほ、本当ですよ!ここはちゃんと学校です!」
両手を縦にブンブン振りながら言ってくる。
「そ、それで、僕はなんでその怪しい学校にいるんですか?」
「あ、怪しくないですよ!ちゃんと学校です! え、えっと、なぜ深奈君がここにいるか、ですよね。それは、私たちがここに連れてきたからです。無理矢理」
「家に帰してくれぇぇぇぇぇぇ!!!!」
俺はドアに向かって走りながら叫んだ。
が、ドアの前で止められる。
「ひ、酷いことはしてませんよ?痛いこともしてません。そりゃあ勝手に連れてきたのは反省してますよ」
「反省して済むなら警察はいらないよ!とにかく家に帰りたいんですけど、ここは何県ですか?」
「秘密です」
コ、コイツッ
「まあ、たくさん質問したい気持ちは分かります。でもとりあえず場所を変えましょう。私についてきてください」
「嫌です」
「……………………あの、今なん「嫌です」
すごく頬を膨らましてる。
「……なんでですか」
「いや、何でも何も無いですよ。僕拉致られてるんですよ。この後何処に連れてかれるかもわからないし、貴方のことも信用してないし………」
「食堂に行こうとしてました。信用はして下さい。」
「僕を舐めてますか?」
この人あれだろ。天然とか言われるやつだろ。それともアホなだけかな。
「な、舐めてませんよ!至って真剣です!早く行きますよ!お腹空いてないんですか?」
「確かに腹減りまくってるな。仕方ないので行きますよ」
そう言うと彼女はパァッと明るくなり、
「それではいきましょう!」
と生き生きとして歩き始めたのであった。
「付いてきてくれたということは信用してく……」
「信用は全然してないから!」
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