　テュポーン砦付近。戦況は少しずつではあるがヘスティア、エロスが優位になりつつあった。

何か打開策を見つけなければ、ヘリオスさんが来る前に敗走する…。

「かわいいよ、本当にかわいいよもう負けは確定してるのに必死に食い付いてきてさぁ！」

何度目か分からぬ鍔迫り合い、だが今回は違った。剣によって視界が一部遮られた場所からの強烈な膝蹴りが繰り出されたのだ。

「うっっ」

突然の不意打ちに避けることが出来なかった。

「みじめよね、本当に。どう、足搔いたって神に人間が勝とうなんて無理だという事がこれで分かったかしら」

「確かに、力にしてもカリスマ性においても全てにおいて負けてるかもしれない。でも、負けられないんだよ！お前たちからしたら、ちっぽけな存在かもしれないけど。だけどな、窮鼠猫を嚙むって言葉があるようにお前たちが負けることもあり得るんだよ！」

諦める訳にはいかない、立ち続けなければいけない。最早、剣を握るのもキツくなって来たけどまだ戦える…！

「ほう、まだ立ち上がるか。面白い」

「ありがとな、ヘスティア。いい蹴りのおかげで頭が冴えてきたよ」

見えた恐らく唯一の打開策が上を見上げると、エロスと歩夢さんの熾烈な戦いが巻き起こっていた。「歩夢さん、聞こえるか？」

「おう、なんとか生きてるみてぇだな」

「そちらもね。この状況を突破する一か八かの策、乗ってみる？」

「面白そうだな、乗った!」

「なるほどな。なんとかやってみるぜ」

まだ、ヘリオスは来ない、か。

「どうしたのぉ？もう、降参かなぁ？死にたいのぉ？なんて、キャハハ」

「死ぬのはテメェだ、バカ」

「あぁん？」

予想通り、こういうタイプは挑発に弱い。この勝負勝てたかもな。

「聞こえなかったか？弱いって言ったんだよ。さっきからチクチク矢を飛ばすだけで当たりもしねぇ。下手くそ！」

まぁ、実際は幾つかは当たってるけどな…。

「ざけんな…。私からお母様を奪った奴らに味方した事、人間だから恩情を与えていたけど…殺す…みんな纏めて殺してやらぁぁ！」　

目にも止まらぬ勢いとは、この事か。そう言わんばかりの怒涛の矢、矢、矢！爆ぜる矢、そして彼女の怒りを表しているのだろう炎の矢。とにかく矢のオンパレード。

「これは避けるの難しいな…でも、やれるな。潤はあそこか」

さぁ、一か八かの大勝負、神様に人の意地ってもんを見せてやるか。全ての鍵は俺が握ってる。

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