第22話 表の戦い・裏の戦い
戦場に響く剣戟の音、矢の空を切る音、爆ぜる音その全ての音は混ざり合い、1つのメロディーを奏でいた。そのメロディーを唇を噛み締め管制室から見つめる少女、高坂由貴
私の今の実力では足手まといどころか間違いなく死んでしまう…。2人の戦う様子は私にとって、眩しいくらいで直視する事すら難しく感じる。
「目を逸らしてはなりませんよ。それは戦っている彼らに失礼という物です」
「分かっています。でも、私は何も出来ないでいる。それがやっぱり悔しいんです…。私も戦えたら少しは有利だったかもしれないのに」
今、私がやっている事はただの案山子のようなものだ。いや、案山子にすら慣れてないかもしれない。それが余計に自分への怒りをかきたてる。
「貴方は彼らを信じていないのですか?」
「そうじゃありません!」
信じている。だけど、やっぱり一緒に戦いたよ…。1人は寂しいよ…。
「由貴、振り返ってみなさい」
メーティス様の言葉に従い、後ろを見るが全員モニターに視線が釘付けだ。一体、どこを見ればいいのだろうか?
「由貴。貴方の目には何が写っていますか?」
「何って、みんながモニターを見てる、それだけですけど」
「ええ、それであっています。ナジェ、オトナシ、彼女たちに出来ない事で、貴方に出来る事はなんですか?」
ナジェさんやオトナシさん、多分イツキもだろう。彼らに出来なくて、私に出来る事…差など対して無いはずだ。
「フフッ。分からないみたいですね。答えは、戦えるかの有無ですよ。彼女たちが、ああして真剣に見つめているのは不安だから、というのもありますがそれでも皆が帰って来る事を信じていられるからです。でも、それ以上にまだ未経験の多い彼らの戦いを見て、アドバイスをして伸ばせる箇所は伸ばしてもらい、ダメな部分は課題として伝える為に見ているのです。イツキは貴方へのトレーニングプログラムを組んだり、彼らの戦いから学べる箇所は無いか探しています。皆、戦えませんが、それでも彼らなりに戦っています。これ以上は言わなくとも大丈夫ですね?」
ここまで言われて気付かない私じゃない。後方支援の勉強も兼ねてここにいたけど、潤くんや歩夢くんの力を目の当たりにして大きな壁を感じてしまった。でも、そんな暇はないんだ。2人を見て私も学べる部分は学ばないと。ただ、前線にでて戦うのが全てじゃない。そんな事、早く気付くべきだったな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます