第21話 混迷の戦場

 「潤、大丈夫か?!」

「なんとかね。あと数ミリズレてたら死んでたかも…。」

本当は爆発の影響で少し気を失っていたけど、それ以外は特に影響がなさそうだ。強いて言えば耳鳴りくらいだろう。

「歩夢さん、状況は?」

「エロス、とか言う奴が援軍として来た、くらいだ」

「そう…アテナさんは?」

「分からねぇ。今、ヘリオスがアテナの元へ向かってる。その間の時間稼ぎをするよう言われてたが…2人なら何とかなりそうだな」

歩夢さんはそう言いながら敵将2人を見据える。

「何、人間如きがあたしらを見てんだ?殺すぞ」「それより、エロス。貴方、アテナを任せていた筈ですよね」

「ん?つまんねぇから補助に任せてきたの。だってー、こっちの方が何倍もおもしろそうで興奮するー!みたいな」

「貴方という神は…」

アハハハハ、と狂気すら感じられるその笑いを戦場にこだまさせるエロスに辟易しているようだ。今ならやれるかもしれない…がどうする?歩夢さんの様子を伺うと、静かに右手を制止の構えをしていた。

様子を見ろ、か。

「じゃあ、私が援護するからヘスティアは援護宜しくー」

言うや否や無数の矢が雨のように降り注ぐ。

「あれだけの矢を避けきるのは難しそうだな。っ!潤、後ろだ!」

振り返るとヘスティアが眼前まで迫っていた。振り下ろされる剣を剣で受け止めるが、距離を取って2撃目、3撃目が来る。その斬撃を剣で受け止めるだけで手一杯で攻めに転じられない…。

「もっと楽しめるものと思っていましたが所詮人間はこの程度、という事なんでしょうね。今、私が楽にしてあげますわ」

言い返したいがそんな余裕なんてある筈も無く、唇を噛み締める。


「やろう!」

援護に向かう歩夢を牽制するように爆ぜる矢が飛ぶ。

「おっとぉ、君の相手は私だよ。たーっぷり遊びましょー」

「くそっ!」

エロスに斬りかかるが、相手は弓、対してこちらは剣。どちらに分があるかは一目瞭然だ。その刃は届く事なく、虚しく虚空を切るだけだ。


一方、ヘリオスはメーティスからの報を受け、エロスの軍を相手に戦っているアテナの救援に向かっていた。「間に合って下さい…。アテナは大丈夫でしょうが、今回が初陣の彼らがとにかく心配です。まずはこちらに有利な状況を作るのが最優先です…」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る