第20話 ミラ・ヘスティア

 「見えてきた。あそこが合流地点だ」

視界の先に映るのは1つの小さな寂れた砦。パッと見た感じは敵はいなさそうだけど。

「あそこはテュポーン砦。かつてゼウスを破った怪物の亡骸が形骸化して生まれた自然の要塞です。見たところ、敵はいないようですが油断しない…」

ヘリオスさんの言葉が終わる前に光弾が飛んできた。

「敵か⁉だが、どこから?」

「あらあら、残念ね。私の弾に当たって死ねないなんて。私に殺されるなんて、とても光栄なのに」

冷たい氷のような声が場に響く。先程までいなかった筈の敵が目の前にいる。そして、自分たちは囲まれていた…。

「どういう事だ、ヘリオス!敵なんて影も形も無かったぞ」

「落ち着きなさい。敵将はヘスティア、彼女が得意とする戦法です」

平静なトーンで話してはいるが動揺しているのが伝わる。

「とりあえず、敵の包囲網を突破してアテナさんと合流する事を第一に考えるべきでは?!」

「考えるのは後だ。来るぞ!」

特攻してくる補助機の攻撃を避けながら倒していく。ある機体は剣で、また別の機体は槍で襲い掛かってくるが対した強さでは無い為、対処のしようがある。が問題なのは数が多い事にある。一機を相手にしていても、また別の機体が来るので油断は出来ない。ヘリオスさんの補助機も一緒に戦っているが補助機同士の性能では少しだけ向こうが上のようで押されている状況だ。

「ふーん、意外とやるのね。人間なんて対した強さではないなんて思っていたけど、どうやら違ったみたいね。じゃあ、私も出ようかしら」

「歩夢、後ろだ!」

キィン、と鈍く敵の刃と俺の刃がぶつかる音が響く。こうして、神を間近で見るのは初めてだが、この威圧感は紛れもない本物だ。

「助かったぜ、潤」

「大丈夫!?潤」

「俺なら無問題。傷1つないよ。ありがとう、由貴さん」

「中々にやるではないか、人間」

静かに厳かに、自分に語りかけるその神は声だけでも十分に圧倒されるが退くわけにはいかない。その強い気持ちで相手の剣を押し返す。その次の瞬間、矢が目の前に現れた。それと同時に矢が爆ぜた。「ぐぅぅぅ!」

ゼロ距離からでの爆発は流石に避けきる事が出来無かった。

「お母様、見ていましたか?今、正義の矢が当たりましたよ」戦場に似つかわしくない甘ったるい声が今度は響く。

「エロスまで来ましたか。アテナは無事なんでしょうか…」

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