第15話 彼女が戦う理由
悔しい…両親を早くに亡くして、親戚の元で育てられた私にとって何より求められたのは
『何が出来るか』だった。
何も出来ない子はいらない、誰に言われた訳でもなくその考えは自然と私に染み付いた
「お母さん…」
目を閉じるといつも母が語りかけてくる。目を瞑って、意識を集中させて
「由貴…」
母さん、どうして悲しそうな顔なの?
「由貴、何してるのです?」
分からないよ。せっかくのチャンスだったのに、それも不意にしてしまった。
「由貴はそれでいいのですか?」
嫌だよ。でも、もう無理なんだもん。
「そんな事はないですよ。これからです。ここで諦めてはいけません」
でも…。
「みんな貴方を待っています。行きなさい」
母さん…。
「由貴様、ここにいらっしゃいましたか」
聞き慣れた声に目が覚める。母さんと話しているうちに、どうやら寝ていたようだ。
「イツキ。ごめんね、役立たずで」
「そんな事はありません、由貴様。少し私の話を聞いて貰えませんか?」
「うん」
初めて見るいつにないイツキの表情に嫌な考えが頭をかけめぐる。
「由貴様。私たちは人にまだ可能性があると信じて戦っています。そして、ゼウス神達に人の可能性があると証明する為に由貴様を始めとした3人を集めました。しかし、由貴様が脱落を希望されるのであれば止めはしません。しませんが、由貴様はそれだけのお方なんですか?」
イツキは目を逸らす事なく真っ直ぐに私を見つめ、問いかける
「一つ、質問いいかしら?」
「何でしょうか?」
「私達以外の人を集める事は出来ないの?」
「出来ません…。私、即ち神性接続回路を作成されたのはヘファイトス神、そしてヘカテ神です。そのヘファイトス神も私たちを作成されて間もなく戦死なされました」
つまり、作りたくても作れないという事のようだ。そして、ヘファイトス様の戦死と完成のタイミングが同じなのは偶然なのだろうか?
「事情は理解したよ。私も、ここで終わりたくないのは本音。だから、私は私の可能性を証明する為に戦います。でも、一つだけ条件があります」
「それは?」
私は告げた自分の覚悟を。
「理解しました。ですが、それは2人にも」
「ちゃんと話すわよ。もちろん、ヘカテ様達にも」
私の可能性を証明する戦い。それは人の可能性を証明することにも繋がるはずだ。
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