第9話 安らぎのひととき
やはり、同じ立場の人が一人いるかどうかだけで気持ちというのはこんなに変わる物なのか、としみじみ実感する。先程までは、見ず知らずの場所で人は俺だけという事で漠然とした不安が拭いれなかったが上野さん達と会っただけで、それも少しだけ緩和する事が出来た。
「どうした?ボーッとして、もしかして俺達と会えた事がよっぽど嬉しかったか?」
「違うよ。これからの戦いを考えていたんだよ」
「あら、隠さなくても大丈夫よ。私達も何だかんだ言って不安だったのよ。イツキがいてくれたから、何とか大丈夫だったけど」
同じだ、急に見ず知らずの場所というのは誰でも不安になる。
「潤、聞いてくれよー。最初に来たの由貴みたいでさ、後から来た俺に泣き付いてきたんだぜ?やっと、人に会えたー!って」
クックックとイタズラっぽく笑う上野さんの後ろではオトナシさんが、静かに頷いている。
「ちょっと、それ言わないでよ!」
「コホン。楽しく談笑しているところ申し訳ないのですが、次の話へ移って宜しいでしょうか?
「あ、すみません。お願いします」
「ようやく、僕の出番という事だね!いやー待ちくたびれたよ!」
高坂さんの言葉に今度はまた知らない声が聞こえてきた。後で、人物整理をしなければ頭がパンクするかもしれない。
「紹介しましょう。我が」
「ヘカテさ。知らない方の為に説明するとしたら魔術師。この軍では医療や後方支援を主にしているよ」
メーティスさんの話を遮り怪訝な顔をされている事すら意に介さず、自己紹介を続ける様子はある意味見ていて清々しくなる。
「ヘカテ様は悪い方ではないのですが、自由すぎるところがありまして」
ナジェが後ろからボソッと耳打ちしてきた。彼女が言うのだ、よっぽどなのだろう。
「ヘカテ!いい加減にしなさい。私達に時間的余裕が無いという事は」
「分かってるよ。久しぶりに人と話すもんで嬉しくて、ついね」
感慨深く目を細めるヘカテさんの様子だけでこれまでの戦いが想像を絶する物だという事は想像に難くない。その中で俺達に救いを求めてきて、それに俺たちが応えた…それだけで安堵できるということもある。俺がそうだったように。
「さて、本題に入ろう。まずは、ガイア・システムについてだ。準備はいいかね、君たち?」
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