第7話 その名は希望

 彼女の名前を色々考えるが、どれもピンと来ず納得が出来ない。ふと、先程の話が思い出す。明らかなまでの不利な状況でも諦めず、懸命に戦い続けている。自分達にとって益がある訳でもなく、ただ人を守る為の戦い。希望…その時、ある言葉が脳裏に思い出される。いい名前あったじゃないか。

「なに、ニヤニヤしてるんですか。気持ち悪いです。拘束が外れただけでそこまでニヤつくとは予想以上でした」

ビックリした…一体、いつからそこにいたと言うのだ。

「ニヤついてるつもりは無かったんだけどな」

「では、何を?」

「名前…君の名前を考えていたんだよ」

「なるほど納得しました。では、 協力して下さるのですか?」

さっきは覚悟が足りずに言葉に詰まってしまったが、今なら言える。

「ああ、俺なんかで良ければ協力させてほしい」

「それでは、名前を私に付けて貰えますか?」

この子に名前を付ける、だけどそれでいいのだろうか?この子は本当にそれを望んでいるのだろうか?「

どうかしましたか?やはり、協力するのは」

「違うよ。協力出来るのならしたいけど、そうじゃない。君の意思が気になっただけだよ、会ってすぐの俺に名前なんかを貰っていいのかな?って」

「なるほど、理解しました。ですが、心配は無用です。名前を付けるのは確かに貴方です。でも、名を貰う相手は私がちゃんと選んでいます。なので自信を持って私に名前を下さい」

相変わらずの真顔ではあるが、強い意思が宿ったその瞳は迷いなく俺を見つめていた。

「分かった。では、君の名を告げるよ」

「はい、お願いします」

息を小さく吸いこんで…

「ナジェ、それが君の名だ」

名を告げた瞬間、胸が熱くなった。

「契約完了…潤ありがとうございます。ナジェ、素敵な名前ですね。名前の意味などはあるのですか?」

「希望を意味する言葉、ナジェージダからだよ。昔、知り合いに教えて貰ったんだ。これから、宜しくナジェ」

右手をそっと差し出す

「何でしょうか?右手を折ってほしいのですか?」

「違うよ!親愛の握手だよ。契約、という事は相棒って事だろ?」

「なるほど、理解しました。これから宜しくお願いしますね、潤」

美しい花を見た。満開ではなく四分咲きではあるがそれでも可憐で美しく、いつの日か訪れるかも知れない満開が楽しみになる、そんな笑顔だった。

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