第2話

今日は朝練がないので、比較的ゆっくり登校した。大勢の生徒たちに交じって校舎に入って、そのまま教室へ向かう。

私・雪咲音々の所属する2年B組は今日も平穏で、仲のいい生徒同士で集まって他愛のない話をしている。

自分の席につき支度をしていると、横から少し気だるそうな声がした。

「音々、おはよ」

隣の席を見やれば、クラスメイトの海霧蒼がこちらを見ていた。

彼は文武両道・眉目秀麗で、性格もいいからとにかく皆の人気者。

私の夢を聞いても笑わなかった、数少ない親友でもある。

「ん、おはよー」

私は言葉少なにそう言って、また準備に取り掛かった。

私と彼の距離感はいつもそんな感じで、それがとても心地よい。

ちらっと見ると、彼は窓の方を見ていた。

…マイペースだな。

いつもと同じ、静かな朝だった。


✻ ✻ ✻


いつも通り授業を受けて、時折寝ている蒼を起こして、お昼の時間になった。

蒼は昼になると急に元気になって、廊下側の席へ向かう。

「涼太、昼食べるぞ」

蒼が声を掛けたのは、仲良しの佐倉涼太くん。中性的でとにかく可愛い、私のもうひとりの親友。

蒼はそのまま涼太くんを連れてこちらに戻ってきて、今度は私に声を掛ける。

「いつものとこ、行こ」

「うん」

私もお弁当を持って彼らについていく。

最初は皆、謎の3人組に驚いていたけど今は

いつもの光景になって誰も気に留めない。

私たちがいつもお昼を食べるのは校舎の中庭で、そこはとにかく日当たりがいい。

人もあまりいないから、リラックスして食べることができる。

「そういえば音々ちゃん、もうすぐバスケの大会だよね?」

「そだよー、来週の日曜かな」

「音々たち、どことやるの?」

「えっとね、○▲高校」

「あーそこ強いじゃん。俺たちこの前練習試合でやって負けたわ」

「おうまじか」

蒼は男子バスケットボール部に所属しているから、気兼ねなく色々話せる。

ちなみに涼太くんは美術部。すごい似合う。

「じゃあ音々ちゃん,応援しに行くね」

「ありがとー!」

涼太くんはバスケの試合がある時、必ずお弁当を作って応援しに来てくれる。

彼お手製のお弁当はものすごく美味しい。

「じゃ俺も行くわ」

「え、蒼は部活あるでしょ」

「サボるわ」

「おい」

蒼に呆れながらツッコミを入れると、涼太くんはそれを見て楽しそうに笑う。

蒼は全く反省していなくて、正直これは来週見にきてもおかしくないなと思った。




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