第4話 燻製専用のかまどを新しく作ろうかな……
「「ごちそうさまでしたー!」」
豚バラブロック450gを二人でぺろり。女子の食べる量として妥当かどうか。キャベツも合わせると相当量のカロリーだなー、クラッカーとかもってこなくてよかったなー、と恐怖もわいてくるけどお肉の幸せパワーにはかなわない。
「一気に食べちゃったねー。やっぱりヒカリン料理上手だね!」
「はっはっは、それほどでもありますよー」
手に持っているのはノンアルコールビールだけど、状況のせいか二人とも気分良くなっております。とはいえ今日のメインイベントはここからだけども。
クーラーボックスの中から取りい出したりますこの薄い鉄板。学食の廃棄品から一斗缶をもらい、鉄板用ハサミでサクサクと切り込みを入れた代物。コイツが何かと申しますと。
「あ、それが燻製機?」
「そうです。あ、アキさん。薪をテキトーに削っておがくず作っておいてください。火口よりちょっと分厚い感じに。それをチップにしますんで」
「そんなテキトーで大丈夫?」
「大丈夫かどうかを見るための実験ですし」
「なるほど?」
先ほどまで焼き網を乗せていたかまどに平皿。そして鉄板を組み合わせて作った四角い筒を乗せる。最初の火力はすでになく、熾火になっているので空焼きにはちょうどいいかな?
その間に、焼かなかったお肉のブロックを取り出して串にさして風通しのいいところに。味付け卵も網に乗せて同じ場所に。
「おん・ばやべい・そわか」
風天真言で軽い旋風を作ってお肉に当て続けておく。これで空焼きと最初の燻製が終わるときにはいい感じに表面が乾いているだろう。中まで乾燥させた方が本当はいいんだろうけど、あらかじめ低温調理で火を通してるし大丈夫……のはず。
「ヒカリン、ほんとに便利な魔法多いよね」
「まあそれは密教の諸天がたくさんいるおかげですね」
印を組む以上、両手がふさがるのでこれぐらいのメリット合ってもいいと思う。というかあの漫画の主人公もこんな不便な術でよく退魔師できたな。まあ時々片手で印を組んでたけど。
あとはまあ、単純に私が切った張ったの喧嘩が苦手だというのもある。なので一発の火力を増やすよりはいろんな術をつまみ食いでとったせいでめちゃくちゃ器用貧乏なことになってしまった。まあ、本気のダンジョン攻略じゃなくてエンジョイ勢なのでこれでも困らないのだけど。
「まー、ヒカリンのおかげで私も楽できてるしいっかー」
「その分力仕事はお任せしますよ」
「はいはーい。あ、力仕事といえば、馬人間の新人君の話聞いた?」
「ああ、なんか動物に変身するスキルの持ち主でしたっけ?馬じゃなくて鹿だって聞きましたけど」
「あれ、そうだっけ?それで『黒杖』君と組んで素材狩り始めたんだとか」
「え、彼が誰かと組むとかあるんですか?にこやかに対応ししつつ、話しかけんなオーラバリバリの彼と」
「人間嫌いなだけでコミュ障ってわけじゃないから、理由があればやるんじゃないかな」
私が第一弾の燻製(ミックスナッツとドライフルーツとポテトチップス)を準備し、その工程をアキさんが画像に撮りながら、何ということもない世間話をする。
そんな風にして、私達の休日は過ぎていった。
あと、ダンジョンの中の木でも燻製は無事にできた。実に美味しかったのでまたやりたい。燻製専用のかまどを新しく作ろうかな……。
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