第11話
ずぶ濡れなのにそのまま走り回ったのが悪かったのか、翌日からモニカは熱を出した。
教会の奉仕も休んで寝込んでいたので、フォクシーと顔を合わせなくてすむのがありがたかった。
フォクシーは一度見舞いに来たが、モニカは「移るといけないから」と言い訳して会うのを拒否した。
顔を合わせる勇気はなかったが、これまで付き合ってくれたフォクシーにお礼も言わずに逃げるのは自分勝手な気がして、モニカは代わりに手紙を書いた。
見栄を張って吐いた嘘に利用してしまったことを謝り、付き合ってくれたことに礼を述べ、楽しかった、ありがとう、と素直な気持ちを書いた。
それから、あの女性に花祭りで求婚するのなら、もう「恋人のふり」に付き合ってもらうことは出来ないから会ってくれなくて大丈夫。彼女と幸せになってください、さようなら。と書いて父に頼んでフォクシーに渡してもらった。
フォクシーが「モニカを捨てた」とか「二股をかけていた」などとあらぬ疑いをかけられぬように、モニカは見舞いに来てくれた友達に真実を打ち明けた。
正直に話して謝ると、彼女達もモニカに謝った。
てっきり嘘を吐いていたことを責められるかと思っていたが、彼女達は「自分達がモニカのことを酷くからかったのが原因だ」と言い頭を下げてくれた。
それから、ダイアナがやって来て、泣きそうな顔でモニカに謝った。
「私、ぜんぜんフォクシーに相手にされていなかったから、モニカのことが妬ましかったの」
花祭りも近いことで、フォクシーがモニカと寄り添っている光景を想像するとたまらなくなったのだと言う。
今のモニカにはその気持ちが良くわかった。
あの女性にフォクシーが花を贈る姿を想像すると、体が粉々になりそうなほど苦しかった。
そうして、花祭り当日がやってきた。
熱はすっかり下がっていたし、自分が参加しなかったらまるで当てつけみたいだと思い、モニカは花祭りに参加することを決意した。
(フォクシーとあの女の人を見ても、ちゃんと笑ってお祝いを言えるようにしよう。大丈夫よ。最初から、嘘だったんだから)
胸の痛みを隠して笑顔を浮かべ、おめでとうと祝福しよう。
モニカはそう決めていた。
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