第14話 間違いなく助けを求めてる!急げ
外に出ると、黒猫クーにバッタリ出くわした。もの知り猫のリューも一緒だった。
あたしは、
「……というわけなのよ。これって、やばくない?」
それを聞いた黒猫クーと、もの知り猫リューは、お互いの顔を見合わせ、笑った。
「何を笑っているの?何がおかしいの?」
「ミー姉ちゃんは、想像が豊かだね」
「その陰謀説は、空想です」
「どうして?」
もの知りリューは、いつものように人差し指を突き立ててから、解説し始めた。
「第一に、三人組であること。これは偶然でしょう。世の中に三人組なぞ、
「ああ分かった分かった」
「つまり、三人組であることは、何の根拠にもなりません」
「なるほど」
「グループを結成していなければ、顔見知りが三人そろっていたというだけの話になります。たとえば、
「もういいって。じゃあ、奇怪なゴーグルは、どうして置いてあったの?」
「お話の内容から察すると、
「暗視ゴーグル?」
「真っ暗でも見える
「猫並みは、言い過ぎじゃない?」
「いいえ。近ごろでは、
「ふーん」
「その暗視ゴーグルなら、島民三千人のうち、猫の飼育に関わる全員が持っていますので、珍しくも何ともありません」
「虫取り網は?」
「小学生でも持っています」
「大人が持っているのって、変じゃない?」
「暴れる猫を、動物病院へ連れて行く目的で捕まえる場合、洗濯ネットや、虫取り網を使いますから、何ら不思議ではありません」
「じゃあ、一覧表は?リストに載っている猫を、捕まえるんだって」
「新たに飼ってくれる
「ブチ猫ブーの避妊手術の件は?」
「勝手に避妊手術するわけにはいきません。仔猫の誕生を希望する里親もいますから」
「確かに。そういう里親だって、いるワな」
「ブチ猫ブーの里親に連絡が取れないか、もしくは、転勤か何か、何らかの事情で、今すぐ引き取れないのでしょう」
「それに、ローコーは、僕たちの飼い主じゃないから」
「じゃあ、何なの?」
「里親が見つかるまで、三食昼寝つきで、預かってくれているんです」
「里親が、見つからなかったら?」
「ネコロポリスで、海を見ながら眠るんだ」
なんだ、そうだったのか。あたしは、我ながら、自分で自分が、嫌になった。おっちょこちょいにも程がある。
ガックリと肩を落としていると、黒猫クーが
「気にすること無いよ。親子でもないのに、ましてや、相手は、人間ではない猫なのに、無償で、見返りのない愛情を注ぐなんて、裏に何かあると
「うーん」
「でも、本当に、何もないんだ。一緒に暮らしていれば、よく分かる。あの人たちの
「そうです。三百六十五日、雨にもマケズ、風にもマケズ、雪にも、夏の暑さにも負けぬ、丈夫な体でエサを配って回り、
「彼らの、猫へ対する献身的な愛情が、猫さらいではない最大の
ローコー大統領たちを疑った、あたしが悪かった。
「これで、謎は解けた」
「謎は、まだ残されています。第一に、ロシアンブルーのシャドーは、どこへ消えたのか?」
「そうね」
「第二に、断末魔の悲鳴を上げたのは、猫なのか?猫だとしたら、無事なのか?」
「猫じゃなければ、いいね」
「第三に、三毛猫ミーさんを襲った連中は誰なのか?以上、三点の謎が残されています」
あたしは、心の中で思った。
「いいえ。まだ、謎は、残っている。どうして、あたしの姿が、人間には見えないのか?どうして、アメショーのショーは“あたしの心”を受け取らなかったのか?その理由がクリスマスに分かるとは?」
「どうしました?」
もの知り猫のリューが、顔を覗き込んだ。
「ううん、なんでもない」
とはぐらかして、三つのキーワードを整理してみた。
「違和感を感じたのは、
「物と、場所と、スポーツか。三つに共通するヒントがあるはず。まずは、猫柱が立っているネコロポリスへ行ってみよう」
あたしたち三匹は走り出した。
ニャアアアアア
と、空へ吹き上げる音が聞こえる。
「まさか、もう
「それは有り得ません。もし、誰かが
「じゃあ、誰もいないのは、一目瞭然だね」
三匹は、
「よし。次へ行こう」
ニャアアアアア
という風の音が大きくなっていくのは、気のせいだろうか。
ニャアアアアア
「あれ?誰か、助けてって言った?」
「ううん」
「誰も、一言も発していませんが?」
もう一度、耳を澄ましてみる。
ニャアアアアア
まるで、救いを求めるように「助けて」と
「間違いなく、助けを求めてる!急ごう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます