第5話 幸せな自分を感じられるパワーキャンドルが胸に
使い古しの
「大統領
驚いた猫の顔は、人間に似て面白いらしく、黒猫クーが、あたしの顔を
「物置小屋とは、言い得て
「これじゃ、ネズミすら
「ネズミは、いないよ。僕たち、猫がいるからね」
「違うって。ネズミさえ住まないボロ家だっつってんの」
「住めば都だよ。ローコーは、見た目よりも、中身を大事にする、
平屋の
その中で、一匹、ブツブツと何か言いながら食べている猫がいる。耳を済ませて聞いてみると、
「まーた今日もドライフードのカリカリやん。もっとマシな食いもん出さんかい。人間は、刺身やチーズを食べてけつかるっちゅうに、ワシら猫は、来る日も来る日もカリカリやて、ええ加減にせえっちゅうねん。みんな、そう思うとるはずやのに、文句も言わず、大人しゅう食べよる猫たちも猫たちや。なんで
よくも次々と
「あの、つぶやき野郎は誰だい?」
と訊ねた。黒猫クーは、お手上げといった仕草で、
「何事につけ文句ばかり言っている、ぼやき猫のモンクーだよ」
「ぼやき猫か」
満足を知らずに、何へ対しても
「よし、ちょっと待ってな」
あたしは、
「モンクー。これ」
あたしは、
「なんや?これ」
不思議そうに顔を上げたモンクーは、球体に鼻を近づけ、
「
とクンクン
「食べものじゃない。今のあんたの心に必要なもの」
「こない、けったいなモン、
プイと横を向いたモンクーと顔を合わせるように、隣で朝ごはんを食べていた猫が、
「もらえるものは、もらっておきなよ」
と声をかけた。
銀色の地に、黒の
「くれるだけで充分じゃないか」
と
「君が食べているカリカリだって、ローコーたちが皿に盛ってくれたんだろう?」
「せや」
「しかも、
「しゃあかて、来る日も来る日もカリカリじゃ、文句の一つも言いたなるわい」
「だったら、来る日も来る日も、大好物のチーズだったら、文句いわないかい?」
「毎日やったら、飽きるやろ」
「その通り。問題は、カリカリじゃない。毎日が同じメニューだと飽きるってことが問題」
「せやから、カリカリは飽きた言うとるやないか」
「だったら、食べたいものを自分で獲ってくるといい。刺身が食べたいのなら、海で魚を獲り、ウロコを
「泳げへん猫が、海で
「泳げないんだったら、大好物のチーズを作るといい。牛を育て、乳をしぼり、煮て、
「そないな
「あれも出来ない、これも出来ないって、じゃあ、何なら出来るのかな?」
「はて」
「文句を言う前に、出来ることを言ってごらんよ」
「できること?」
「君は、
「そんなん、やりゃ出来るやろ」
「じゃあ、やればいい。誰も止めないよ」
「ほな、明日から、やるわ。いや、
「ということは、今日から、
「わからん。いや、無理かも」
「じゃあ、
「アホか」
「だって、何も捕まえられないし、何も出来ないんじゃ、食べるものが無いよね」
「無いなあ」
「食べる物が無いんだったら、食べる物があるだけで、幸せじゃないかい?」
「来る日も来る日も、カリカリやで?」
「海に入らなくても、山で
「そら楽でエエこっちゃ」
「楽だよね?」
「楽やな」
「それが
「えらい単純やな」
「そんなものだよ。食べることは、小さな満足だから、なかなか気づかないけど、小さくたって、満足な今に気づかず、文句ばかり言ってちゃ、気分が悪くなるだけ、
日本の関東地方は、
「ほな、どないせえっちゅうねん?」
「大きな満足なんて、そう滅多にあるもんじゃない。だけど、小さな満足なら、沢山ある。毎日ある。その小さな満足に気づいて、幸せに暮らすか、気づかずに、文句ばっかり言って暮らすか、決めるのは、他の誰でもない。自分だけなんだ」
「なんでワシだけや?」
「モンクーの人生だからね。私の人生じゃない」
あたしは思わず、
「そうさ」
と
「モンクー自身で決めることさ」
あたしは、緑色の発光球をモンクーへ差し出し、
「この球は“
と説明した。
「これを、クリスマス・プレゼントとして、モンクーにあげる。受け取るかどうかは、モンクー
モンクーは、しばらく、
「やっぱり、要らんわ」
と断った。
「エッ?」
と意外な表情を浮かべたあと、
「でもな、もらってくれえ言うんやったら、もらってやってもエエで」
と、あたしの手から光の球を
すると、緑の発光球は、モンクーの左胸へ吸い込まれて消えた。
「なんや、これまで、満足せんうちに、もっと、もっと言うて、
「別人になったか?」
「まず、自分にできる身の
「それをいうなら別猫でしょ」
「おおきに」
と、生まれて初めて、
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