幕間 とある聖職者の独白

「ようやく静かになりましたか」


 アカネが気絶して重みが増したのを確認し、オルバードは息を吐いた。


「女性に重いというのは失礼でしょうかね? まぁ、そう呼ぶには幼いですか」


 オルバードはぶつぶつとひとりごちる。お喋りなのは悪い癖だと同朋にも言われているが、こればっかりはどうしようもない。

 それにしても騒がしい餓鬼だった。聖女でなければ殺していただろう。

 本来、オルバードは子供嫌いなのだ。


「ワタクシがギンジを殺したとか、おかしなことを口走っていましたし。心外ですねぇ。ちゃんと『転移』から当ててあげたのに」


 そう、オルバードは殺していない。さっきギンジに当てた奇跡は『黒炎』より『転移』が先だった。

 空間の奇跡を先に当てたので、ギンジは今頃どこか別の地域へ飛ばされているはず。


「つい腹が立って『黒炎』の方もかすらせてしまいましたが。運が良ければ生き残るでしょう。ウフッ」


 くたばるなら、それもまた一興。

 ギンジは死ぬ。間接的な原因が自分にあろうとも、視界に入らなければオルバードの罪ではない。


『上』に命じられていた仕事が終わったので気分がいいし、念願のゴミ掃除も出来た。オルバードはあくまで平静に歩きつつも、内心では踊り出したい気分だった。


「我慢の日々もあと少し。早く死んで欲しいな――聖女様」


 足元の空間をねじる。

 オルバードの体が景色と混ざり合う。カメレオンのように色が重なり、世界との境界線が曖昧になった。

 座標は神都ルーゼンアラムだ。神々の総本山でアカネを立派な聖女にしてやろう。

 オルバードは希望溢れる未来に胸を膨らませながら、『転移』を発動させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る