【書籍版2巻発売中】異世界の落ちこぼれに、超未来の人工知能が転生したとする~結果、オーバーテクノロジーが魔術異世界のすべてを凌駕する~
第163話 人工知能、王都が滅びる程のブラックホールを受け止める②
第163話 人工知能、王都が滅びる程のブラックホールを受け止める②
「……王都に受けたら、跡形も残らないじゃないの。上層も下層も関係なく滅びるわよ」
さしものカーネルも、未来に待ち受ける惨憺たる結末に冷汗を流していた。一瞬よろけそうになるも、深く深呼吸するとプロキシと向かい合う。
「済まないわね。あれ、何とかしてもらっていい?」
「言われなくとも。カーネル様は念のため、退避ください」
「ばか言ってんじゃないわよ。アカシア王国が死ぬときは、アタシも死ぬ時よ。仮にもこうなってしまった以上、誰かが責任持って納めなきゃでしょう。公爵如きの名誉じゃ力不足でしょうけどね」
「現場の事も考えて下さいよ……まあ、カーネル様の前線出たがりな癖は今に始まった事じゃないですけど――ここにいるアカシア王国の益荒男達に、新しい大仕事だ……座していれば滅ぶしか道はない。トロイを否定出来た誇り高いアカシアの騎士達はどうする!!」
プロキシが号令を放つと、戦慄を残しながらも騎士達は奮い立ち、魔術による遠隔一斉攻撃の準備にかかった。
「
「
「
その準備をしていたのは、
「
「到着するまでは、私達で何とかするしかないのぉ」
魔術人形に囲まれた
どちらも、ブラックホールを放たれる前にヴォイトを撃ち落とす選択をした。
一方クオリアは一人、別の解を導き出していた。カーネル達や
『Type SWORD BARRIER MODE』
人工知能として、最適解を導き出すのと同時に。
どこかいつもの無表情の裏側で、“感情の整理”を始めている様に、隣にいたエスには見えた。
その通りだった。
最適解を出すよりも、覚悟を決める時間の方が長かった。それを実感していたクオリアに、エスが問う。
「クオリア、説明をお願いいたします」
クオリアの体に重ね合わされていたものを、エスは見た。
人に非ず、心さえ持たない、鋼鉄の人形が深く混じっていた。
「お前は、人間からどれだけ離れ――」
「――斉射!!」
騎士達から、魔術人形達から地水火風、溶岩深海雷撃の爆音がこだました。
虹色の超常現象が、上空でぽつりと浮かぶヴォイトへ向かっていく。
「予測修正無し」
クオリアはそう呟いたのは、その虹色がモノクロ一色に見えたからではない。
振り下ろされたブラックホールに、たちまち全ての魔術やスキルが呑み込まれてしまったからだ。
『食べ物!! 食べ物!! いただきまあああああす!!!』
ヴォイトの抑揚の定まらない欲望だけが、全員の耳を塞いでいた。
誰も何も口に出来ない。ここまで手も足も出ないという戦慄に、沈黙せざるを得なかった。
「最適解、算出」
『Execution Teleportation』
『Execution Superposition』
『Execution Quantum』
テレポーテーションでブラックホールの目前に移動し。
量子干渉機能で、傘のように開いた展開した
「予測修正在り……最適解、変……っ……!」
フォトンウェポンの盾を翳す腕に、衝撃が跳ね返る。たった一秒で右腕の骨は為すすべもなく崩壊していく。更にフォトンウェポンの荷電粒子を突破したブラックホールの飛沫が背後に飛んでいく。下方でただ見上げる事しか出来ないクリアランスや
半径100kmとはいかなくとも、あの飛沫だけで真下の“美味しい”は全て消え去る。
「エラー。至急分裂したブラックホールを――」
しかしその間に、一つの影が超速で到達する。
『ドラゴン』
「
真っ黒な飛沫を
しかしドラゴンの原理を分析している暇もない。“ありがとう”を口にする余裕も無い。今上から圧殺しようとしている何千倍も大きいブラックホールを、それに量子干渉する為のプログラムを創り上げる事に全てのパフォーマンスを捧げた。
既に全身が致命傷帯びていく中、遂にクオリアは一つの解を見つける。
「最適解、算出……ぎ、くぁ……」
“ブラックホール”がその形を維持できなくなり、シャボン玉のように消えた。
同時、全身が咀嚼されたように潰れていたクオリアと
『あれ? 食べれない。なんで?』
お腹をすかせた破滅の伝説は、まだ上空に屯していた。
クオリアは勿論忘れていない。ただブラックホールを無力化するだけでは意味が無い。その元凶である、大咀爵ヴォイトを破壊しなければ、何の意味も無い。
だから最初から、その最適解を紐解いていた。
「大咀爵“ヴォイト”を無力化するための最適解、算出」
『Execution Teleportation』
意識を失っていた
「最適解を実行する為に、
『Execution Teleportation』
クオリアもテレポーテーションを実行したが、エス達の待つ真下へ飛ぶことはない。
クオリアが向かったのは、ロベリア邸だった。
もう、人には戻れない事をロベリアへ知らせるために。
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