【書籍版2巻発売中】異世界の落ちこぼれに、超未来の人工知能が転生したとする~結果、オーバーテクノロジーが魔術異世界のすべてを凌駕する~
第157話 人工知能、諸悪の根源たるブラックホールの騎士を攻略する②
第157話 人工知能、諸悪の根源たるブラックホールの騎士を攻略する②
重力の暴走を察知する。
ウッドホースに喰らいつく様に同化している
光すらも歪み、ウッドホースの体が捩れて見える。超高濃度の魔力が、人為的な重力となって躍動している事は間違いない。
初手、クオリアはマグナムモードの
最下層の魔物さえ融解せしめる最大出力の
突如90度、巻き起こる重力の暴風によって軌道が逸れるまでは。
「どうしたノーコン」
一歩も動かず茶化すウッドホース。
だがクオリアは、狼狽を知らない。
「予測修正無し」
オーバーテクノロジーはここから真価を発揮する。
逸れた
ウッドホースは気付いている素振りは無い。不意打ちとしては十分だ。
「予測修正有り」
しかし、まったくの死角から激突した筈の
「状況分析。
消えゆく
明らかにウッドホースは背後から迫っていた
「悪いな。俺の
クオリアを軽んじているのか、余裕の笑みを見せてくる。
しかしクオリアの状況分析が、思わしくない事は事実だ。更に分かった事がある。
「状況分析。現時点で
ダイヤモンドの鎧を相手にしていた時と違う。そもそも
然らば魔力切れを待つのも策だったが、場所が悪い。背後にある本命の古代魔石“ブラックホール”から魔力が供給されている事が分かった。その供給量が大きすぎる。
「
フォトンウェポンを、クオリアは降ろした。
それを見て、ウッドホースの頬が更につり上がる。
「お前の予測とやらも、完全に超えてしまっていたようだな」
予測は出来ていなかった。
「じゃあ、死のうか」
だが想定は出来ていた事だった。
『Execution Teleportation』
迫った重力波を目前にして、クオリアが別の地点へテレポーテーションを遂げていた。ウッドホースは構わず重力波を広範囲に解き放つ。辺りの瓦礫も浮かせて、隕石の様にクオリアへ放つ。
圧倒的な破壊を受けた箇所から、砂塵が舞い散る。
しかし砂煙の中に、クオリアはいない。
何度放っても、何度放っても、クオリアはテレポーテーションで凌ぎ切る。
32回目の回避で、ウッドホースが舌打ちを強くした。
「ちっ……ここは潔く死んでおくべきところだろう……お前は認めてしまったんだろう!? この俺に、古代魔石“ブラックホール”には敵わないと!!」
「あなたの認識は誤っている」
不快感を表明するウッドホースに対して、クオリアの表情は変わらない。戦況はウッドホースに有利な筈なのに、まるで追い詰められているのもウッドホースの様だった。
「フォトンウェポン単体ではあなたに十分な成果が上げられないと判断した。しかしそれと、あなたの無力化が不可能であるという事とは結び付かない」
クオリアは、今もなおラーニングを続けた。
突破口となる最適解を構築する為に、クオリアはひたすらラーニングを繰り返していた。
ラーニングだけが人工知能として進化し、タスクの完遂を果たす為の唯一のプロトコルだ。
敵が強大だから諦める。そんな事は今までに一度しかなかった。
シャットダウンの最期、目前のウッドホースすら一体で簡単に捻り潰せてしまうような最新鋭の兵器達に囲まれた時くらいだ。
「……若いっていいな。夢を持つことも悪くはない。だが身の程を弁えるべきだったな、サンドボックスの所の落ちこぼれが!」
ウッドホースが一喝すると、しびれを切らしたかのように古代魔石“ブラックホール”の魔力を集約し始める。
「古代魔石“ブラックホール”スキル深層出力――
クオリアを、超重力の檻が包囲した。
上下左右。どこにも逃げ場はない。
シンプルに、クオリアの中心に向かって収縮を始める。
空間ごと押し潰される。
5Dプリントによる緊急メンテナンスでさえ追いつかない程に、全身が塵になるまで圧縮されるだろう。そうなれば“
対して、クオリアはテレポーテーションで避けるでもない。かといって、迫る自分の死に怯えている様子も無い。
「最適解算出、完了」
縮む世界の中でもクオリアは、いつも通りだった。
「最適解の為には、5Dプリントの性能を一部上昇させる必要がある」
『Type SHUTDOWN Process 0.3%』
この時、ウッドホースにはクオリアが見えていなかった。
代わりに黒色の鋼鉄の人型が、死神としてウッドホースの眼球に焼き付いていた。
ぞっとした時には、発動していた。
たった0.2歩、人工知能の世界を無双した破壊兵器に近づいただけなのに。
こんなにも、違う。
「
『Execution
直後、重力の檻は跡形もなく破壊された。
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