【書籍版2巻発売中】異世界の落ちこぼれに、超未来の人工知能が転生したとする~結果、オーバーテクノロジーが魔術異世界のすべてを凌駕する~
第128話 人工知能、『PROJECT RETURN TO SHUTDOWN』の全貌を語る②
第128話 人工知能、『PROJECT RETURN TO SHUTDOWN』の全貌を語る②
人型自律戦闘用アンドロイド“シャットダウン”。
たった0.1%の機能を参照するだけで、クオリアを誰も届かない存在にする。
たった0.1%の機能を参照するだけで、明確に0.1歩だけ人から外れてしまう。
「現在の状態について補足説明する。
クオリアはシャットダウンに戻るまでの道筋を説明した。
技術の根底にあるのは、“
“
つまり今、クオリアの存在と呼応した量子世界に、シャットダウンがいるのだ。
“クオリア”と“シャットダウン”が両立。
これが
後は、
だが結果、器用に機能のみを抽出している状態とはいえ、0.1%だけとはいえ、シャットダウンがクオリアを侵食し始めているのだ。
「0.1%の
それを口にすると同時、嫌なタイミングでクオリアの体が一瞬だけ透き通った。
人型自律戦闘用アンドロイド“シャットダウン”の黒い装甲が、見えてしまった。
要は、クオリアという存在は
量子力学の世界の住民でもあるシャットダウンとは、存在の強さが違い過ぎた。
強すぎる力は何もしなくとも、クオリアから存在の権利を奪い去ってしまう。
「シャットダウンの概念が“
だからクオリアは、“美味しい”を先程まで知覚出来なかったのだ。
しかしクオリアは持っていたエスのオニギリを口にした。
誰の口にも合わないのは明白な失敗作だった。
それを齧ったクオリアは無表情だった。
「美味しいから逸脱している……しかし、しかし」
しかも無表情のまま、“美味しい”ではない筈のオニギリを何度も噛み締めるように食べた理由も二人には分からなかった。しかし何となく、“エスの温かさ”を美味しそうに味わっているのは分かった。
それが、“不味い”やそれを類似する単語を登録していなかったからなのか、“美味しい”も”不味い”も感じなかったからなのか、ロベリアとスピリトには分からなかった。
「説明を続行する」
それでも味覚は戻ったと信じたいロベリアとスピリトに、クオリアは人間を安心させる言葉を紡ぐ。
「現在の兵器回帰率である0.1%の場合、可逆性を有しており、
透き通っていたクオリアの体が、元の肌色に戻った。
ここでロベリアが、先程までシャットダウンだった部分を見ながら質問を投げる。
「ねえ、クオリア。何%を超えたら、どうなってしまうの? 後戻りできない点はどこ?」
「演算中……」
スピリトも固唾を呑んでクオリアの返答を待った。
「演算結果。0.1%の参照の結果フィードバックの結果、
「……そして、それが100%に達したら、どうなるの?」
恐る恐る。スピリトの様子はそれに尽きる。
にも関わらずクオリアは、ただ結果を出力した。
「100%に達した場合、クオリアの肉体および存在は完全に置換され、消滅する」
二人の姫は、言葉を失った。
今クオリアを覆っているオーバーテクノロジーは、消滅への片道切符となる可能性があるのだから。
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