第79話 人工知能、雨男の雨を知る
「あれは……
カーネル達が駆け付けた時、まだクオリアも
驟雨でずぶ濡れのクオリア。
全身を血で塗りたくった
ただ降りしきる豪雨の中、互いがどこかに行かないように視線で射止めていた。
「説明を要請する。あなたは何を目的としているのか」
「……」
『ギィ……ィィ』
返答せず、狐面をまだ息だけある
今度は
「知ってるか? 歪に繋げられた魔術人形技術の成れの果て、
「
「……けど、
忌々し気にカーネルがディードスの頭を見た時には、近くで悶えていた
食べ物は、残さない。
「ここへは、
直後、
さっきまでディードスだった物が、その顎から零れる。
「
「あなたは本来拘束で無力化するべきだったディードスの生命活動を停止させた。あなたは誤っている」
「いずれにしろ、賄賂でも渡して無罪放免だったさ」
「また、あなたが魔術人形を捕縛したと認識している」
狐面がクオリアを向く。
「ならどうする」
「あなたを無力化し、情報をインプットする」
「まだ捕まる訳にはいかねえな」
ほんの僅か、残像が上に伸びたのを数名の騎士が認識する。
クオリアもそれを理解し、真上に目をやっていた。
一瞬だけ、
「よそう。クオリアの“ラーニング”とやらは厄介すぎる」
クオリアへの警戒心を吐露する
その背後に数体の少年少女が現れた。
雨合羽のフードに覆われていたものの、エスはその正体を理解した。
「元主人の支配下にあった魔術人形です。しかし私達のネットワークからはロスト扱いになっています」
「この騒動の中、連れ去られたっていう魔術人形ね。アナタ魔術人形を集めて何をしようっていうの? 第二の蒼天党にでもなるつもり?」
「暴力じゃ何も為せねえよ。俺の目的は寧ろ暴力とは真逆にある」
「魔術人形なんて戦力を並べておいて言う事?」
「……魔術人形を武器としてしか見ない奴はそう言う」
「だがいずれ、てめらはそんな間違った考え方を持たなくなる」
「どういう意味よ」
「クオリア。俺の目的を聞いたな」
一方でその視線からクオリアは感じ取る。狐面に覆われ、殆ど閉ざされた情報の中でもその心の片鱗を感じ取る。
自分の身さえ焦がしても構わないと言わんばかりの、憤怒のそれを。
「……人、獣人、魔術人形。誰もが明日も生きている世界にする事だ」
「説明を要請する。それはどのような世界か」
「今に分かる。だがその為には魔術人形の協力がいる」
魔術人形が数体、
自発的な前進の後に、僅かに抑揚のついた声が溢れる。
「私達は雨男を支持します」
「……どう見ても、エスと同じく自我に目覚めてるって奴よね」
カーネルも冷や汗をかきながら、その魔術人形達を見上げる。完全ではないにせよ、その眼光に意志が宿っている。クオリアはおろか、これまで人生経験が豊富であるカーネルにも見て取れる結果だった。
エスがハローワールドの一員に自分から入隊したのと同じく、魔術人形達もまた自分から
「説明を要請する。あなたは古代魔石“ブラックホール”の流出を早急にロベリアにインプットした。あなたはそれをどうやって知ったのか。何故それをロベリアに伝えたのか」
その時、小雨へと移りかけていた雨足が急に強くなった。
「そういえば、あの日もこんな土砂降りだったか……」
土砂降りの中、
「再度説明を要請する。あなたの音声が雨に阻害されている」
「眠っているからだ。上層のとある十字架の下で、俺の恩人が。だからブラックホールは、起こさせねえ」
そう言い残すと、周りの魔術人形と共に空へ再び消え去った。
今度は再出現しない。本当に辺りから消え去っていた。
「追跡なさい」
クリアランスに追跡の指示を送るカーネルだが、内心は難しいと踏んでいた。訝し気に細めた目が、その残念さを物語っている。
「状況分析。
クオリアも同じ判断を下していた。
「魔術人形ごとフェードアウトしたわね。魔術だけでは説明がつかないんだけど」
「状況分析。
分析結果を、続ける。
「
「……それはあり得ないわ。人間の体に魔石は猛毒で、付与した人間は全員死亡したと聞いているわ。
カーネルが首を横に振ろうとも、クオリアの結論は変わらない。
と、それ以上の思考に進捗が無かったのは、
「上層に、古代魔石“ブラックホール”の出現を確認。至急急行する」
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