第3話

「今度こそ飯を調達して来た」


 俺は魔法空間で仕舞っていたフットラビットの死体をリミナに見せる。


「お兄ちゃん! も、もしかしてそれって伝説のフットラビット!?」


 リミナはかつての記憶にないくらい目が輝いている。


「伝説ではないがフットラビットではあるな」


「やったー! 夢にまで見たご馳走っ! お兄ちゃん、早く食べようよ!」


「今から料理するから待ってろ」


 ご馳走……か。

 俺は過去に戻る前に冒険者として最高でS級冒険者だった。

 俺が持っているオリハルコンを使った武器もS級冒険者になって初めて許可される危険な魔物が蔓延るダンジョン迷宮で入手したものだ。

 何の才能天職も無かった俺だが、ただひたすらにレベルを上げて、上げて……ダンジョンで手にした魔物や物は自分の物になるルールから、俺はフットラビットより美味しい魔物の料理を食べたことがあった。

 今度こそ勇者と魔王を完全に倒してリミナを生存させる!


 そんな事を考えながらも料理していたフットラビットの切り分けた肉が焼けて良い匂いが漂い始める。


「こんなものかな」


 俺は肉を皿に乗せて、健康を配慮しつつ苦さが薄めの薬草を炒めたものを乗せた。

 フットラビットの残った肉と骨は晩御飯用に魔法空間で仕舞っておく。


 そして皿をリミナの分と俺の分を食卓に運んだ。


「うわぁー! 美味しそう! 食べていいの!?」


「あぁ。Cランクの魔物程度いくらでも取って来れるからな」


ほんほう本当?」


「食べながら喋るのは良くないが俺は強くなるために変わったからな。例え魔王や勇者が来てもリミナのためなら蹴散らしてやるさ」


 絶対にな。


「流石に盛り過ぎだと思うけど……でもありがとう!」


「あぁ。それくらいはしてやるさ」


 そんなたわい無い会話をして食事を終えた。


 さて、勇者が来るまでに俺は更に強くならないといけない。

 何故なら勇者は魔王を凌駕し世界に平和をもたらす救世主と伝承にあるからだ。

 もっとも、あの勇者が救世主とは到底思えないがな。


 それはともかく勇者は魔王を凌駕するなら俺は今よりもっと強くならないといけない。


 強くなるには強い魔物を倒すのが手っ取り早い。

 そうと決まれば一刻も早く冒険者登録をしてS級冒険者になる必要があるな。


「リミナ、今から出かけてくるが日が暮れるまでには帰ってくる」


「え? いきなりどうしたのお兄ちゃん?」


 リミナは困惑気味だがこれも全ては勇者を倒すためだ。


「強くなるためにレベルを上げてくる。それだけだ」


 俺は村を出て全力で走りながら王都を目指す。

 王都は以前のレベル1だった俺なら走り続けても半日以上かかる距離だ。

 だが今の俺なら違う。

 俺はレベル100であり単純に考えてレベル1より100倍の速度を出せる。

 

 あっと言う間に王都が見えてきたので王都の門番がいる入り口より少し距離がある場所で速度を落として歩いていく。


「止まれそこの者。ここから先はサントミラル王が治める地。ここを通りたければ身分証明になる物か銀貨2枚を払って貰おう」


 身分証明になる物で有効なのは基本的にステータスプレートか冒険者プレートだ。

 ステータスプレートは流石に見せる訳にもいかない。

 そして冒険者プレートも過去に戻る前の物だから持っていても意味はない。

 つまり銀貨2枚を払うしかないと言うことだ。


「銀貨2枚だ」


「銀貨2枚、確かに受け取った。通ってよし!」


 俺はかつての記憶を頼りに冒険者ギルドへと向かった。

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