第2話

 何故か戻ってきた意識に我ながら驚き、俺は目を開けた。


「そんな馬鹿な……まだ俺は走馬灯を見ているのか?」


 目の前に広がる景色はかつて滅ぼされたはずの俺の故郷、ポゴロン村。

 そして何より身長は少し縮み、声も若返っている。


 これは夢や走馬灯、それとも魔王の仕業だろうか?

 それとも、ありえない話だが……過去に戻ってきたのだろうか?


 果たして夢か現実か、それを証明する便利な物がある。


 ステータスプレートやこれまで身につけた技術だ。


「魔法空間」


 問題なく発動し、ステータスプレートを取り出すことに成功した。


 さて、夢か現実か……。


_______________

データ:レイヤ、男、15歳

ステータス▽

村人【レベル100】

体力:0

魔力:1000

力:1000

守り:1000

知力:1000

魔耐性:1000

速力:1000

スキル▽

剣術Ⅴ

槍術Ⅳ

弓術Ⅲ

体術Ⅳ

無属性魔法Ⅴ

[ユニークスキル▽]

クロニクルリベンジ

【派生技能▽】

天殺流

流星槍術

魔力充填

速反撃

魔力速球

魔法空間

_______________


「ユニークスキル!?」


 レベル100なのは死に際に魔王を倒した気もするからレベルアップした可能性がある。

 だが、年齢は若返り、ユニークスキルまで発現する。

 何より俺の体力は0になっている。

 これが夢でないなら何だと言うレベルだ。


 スキルの詳細は基本的にステータスプレートのスキルを触れると詳細が表示される。

 たぶんユニークスキルも同じだろうからと思い実行する。


 するとスキルと同様にユニークスキルの解説が記されていた。


_______________

クロニクルリベンジ

消費魔力:0

効果Ⅰ:一度目の死亡時に最も強く抱いた願いを効果Ⅱ以降に適用する(発動済み)

効果Ⅱ:一度のみ時を遡る(発動済み)

効果Ⅲ:死の概念を超越し死亡を常に無効にする

効果Ⅳ:常に体力が0になり痛覚が無効化されないがデータの欄を何度でも自在に変更できる

_______________


「これのおかげか……」


 どうやら夢ではなく、俺はこのスキルによって過去をやり直すチャンスを与えられたようだ。


 だったら話は早い。

 勇者が来るまでの5年間で更に俺自身を鍛え、勇者を殺す。

 そしてその後に更に俺自身を5年間鍛えた後にやって来る魔王とその配下達を殺す。

 完璧な計画だ。


 だがその前に……。

 無性にリミナに会いたくなってきた。


 俺はかつての記憶を頼りに走って家まで向かった。


 家の扉を開けると昔のようにリミナが出迎えて来てくれていた。


「リミナっ!」


 気がつけば俺はリミナに抱きついて泣いていた。


「おっ、おおお、お兄ちゃん!? どうして泣いてるの? 何かあったの?」


「あっ、すまない。つい嬉しくて……」


 流石にいつまでも抱きついているわけにはいかないな。

 俺は着ていた服の袖で涙を拭いてリミナを離した。


「変なお兄ちゃん……。それより、いつもより帰りが早いけどもう今日のご飯は狩れたの?」


 ご飯?

 狩り?

 ……そう言えば俺の天職が村人のせいでいつも村からは食べ物を分けて貰えず、俺が外の動物を狩ってたんだっけ……。


「完全に忘れてた……。ちょっと取りに行ってくる!」


 俺は全力で走りながら村の外へ出て動物や魔物がいないか探す。


「……見つけた。あれは確かフットラビットだったな」


 フットラビットは魔物の中でも中くらいの強さとされている。

 魔物の強さには基準があって、F→E→D→C→B→A→Sと言った様にランク分けをされている。


 そしてフットラビットはランクC。

 なかなかの強さだが今の俺の敵ではない。


「天殺流奥義その一、飛斬」


 これは魔力を剣に込めて、その魔力をエネルギーへと変えることでそのエネルギーを飛ばして攻撃することができる。

 またエネルギーの威力は込めた魔力の量やその武器の魔力の通しやすさ魔力伝導率による。


 ついでに言えば俺の武器である剣、槍、弓、籠手に使われているオリハルコンは魔力伝導率100パーセントであり、込めた魔力をそのまま威力に変えることができる優れものだ。


 そして俺の込めた少量の魔力は、村人とは言えレベル100の魔力量の少しだ。


 BランクからAランクの中でも弱い魔物ならばだいたい一、二発で倒せるだろう。


 俺はオリハルコンの採取用ナイフで解体して血抜きをしてから家に全力で走って帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る