逆行村人の復讐〜この身の全てを掛けてでも〜

こんみっち

本編

第1話


 闇の様な紫色の霧に包まれた城ーー通称魔王城に俺、レイヤはやって来ていた。


 あの忌まわしき日から20年。

 剣術、槍術、弓術、体術、無属性魔法の技術を身につけ、20年前に俺の故郷ーーポゴロン村を滅ぼした魔王とその一味のアジトにやって来ていた。


 いや、前言撤回。

 忌まわしき日からは25年だったな。

 25年前、勇者キョウヤ・ナカガワは俺の妹であるリミナを無理矢理裸にした後に一方的な肉体関係へと落とし、我が物へとした後に殺したのだから。


 マジで魔王と勇者だけは滅ぼす!


 そんなことを決意しながら俺は改めて自身のこれまでの努力が形ステータスプレートを眺めた。


_______________

データ:レイヤ、男、45歳

ステータス▽

村人【レベル89】

体力:8900

魔力:890

力:890

守り:890

知力:890

魔耐性:890

速力:890

スキル▽

剣術Ⅴ

槍術Ⅳ

弓術Ⅲ

体術Ⅳ

無属性魔法Ⅴ

【派生技能▽】

天殺流

流星槍術

魔力充填

速反撃

魔力速球

魔法空間

_______________


 俺の天職は村人。

 人は皆、5歳になれば天職の儀を受け、天職を授かる……筈だった。

 しかし俺は前代未聞の天職である村人。

 ステータスの強化補正が一切なく、着けられる防具もない。

 明らかに他のどの天職よりも劣る最弱の天職だった。

 

 次にスキルだが、これはⅠが素人、Ⅱが一人前、Ⅲが熟練者、Ⅳが達人、Ⅴが秀才といっ目安になっている。


『スキルは誰にでも開花し、それを磨いた者は派生技能が現れる』


 これは憎き勇者の仲間であるマーリンと呼ばれる少女が言った言葉であり、今では有名な定説でもある。


 俺の派生技能は他の文献や資料には同じような派生技能は無かったが、こうも書かれていた。


『派生技能は一つの個性であり、強い意志のもとに磨き続ければユニークスキルにも劣らない強力な可能性がある』


 ユニークスキルとは生まれつきの才能が唯一無二のスキルとなったものだ。

 もちろんただの村人である俺にはそんなものはない。


 魔王打倒は俺の通過点に過ぎない。

 魔王を倒し、レベルアップすることでその力で勇者を倒す。

 これが最低ラインの復讐だ。


 既に俺は魔王直属の手下である四天王、炎のバナス、水のウォルネ、風のシーナル、大地のアノスを倒し残るは親玉である魔王だけだ。


 時間稼ぎにも思える程の長い回廊を抜けると遂に魔王のいる謁見の間へとやって来た。


 俺は思いっきり扉を開けた。


「……何故我が配下を殺した?」


「は?」


 は?

 人の故郷を滅ぼしておいて何言ってんだこの魔王は。

 何でお前が怒ってんの?


「貴様の天職、見させて貰ったぞ。貴様の様な村人如きに我が配下を殺す資格など無い! ……もう一度聞くが何故我が配下を殺した!」


 そもそもコイツの話なんて聞く必要なんてない。

 さっさとコイツを殺さないとな。


「魔法空間」


 俺は魔法空間と言う無属性魔法の派生技能で魔法で作られた空間にしまっていた愛用の片手剣と槍を取り出して右手に剣を構え、左手で槍を持った。


 二つともオリハルコンと呼ばれる最も硬く魔法を通しやすい鉱石を素材に使っているオーダーメイドの武器だ。

 例え魔王の攻撃でも壊れることなないだろう。


「流星槍術その一、メテオアップ」


 これは槍に魔力を通して杖の様に魔力媒体としても使うことで武器の攻撃力を上げつつ身体強化と呼ばれるステータスを1.2倍程度強化する無属性魔法を同時に発動することができる。


「魔王、お前は覚えてないのか?」


 最後にこれだけは聞いておく。

 俺の故郷であるポゴロン村を滅ぼしたことを覚えているのか。


「答えになっていない! そもそも貴様は何の恨みがあって我が配下を殺した!」


「天殺流奥義その三、隼瞬閃はやぶさしゅんせん


 これは体内に一瞬で極限まで魔力を注ぎ込み、その魔力を一気に剣を持つ右腕と両足の筋肉に分割することで数秒だけだが今の俺なら力と速力は5000を超えるだろう。


 だが魔力を500……俺の魔力の半分以上消費するので外す訳にはいかなかった。


 そしてその一撃は確かに魔王に命中した。


 だが魔王は俺の追撃をくらうと共に苦し紛れの一撃で俺の体を貫いた。

 そしてその一撃は俺の命を奪うには十分な威力だった。


 そして魔王はあっけなく粒子となって消えた。


「……こんな……ところで」


 だが徐々に意識は遠くなる。

 復讐は遂げられない。

 それが悔しくて堪らない。


「……!」


 もう俺は声が出ない程弱っているらしい。

 幼い頃の思い出が蘇ってくる。

 死に際に見る走馬灯と言うやつだろう。


 悔しい。

 せめて……せめてあの日25年前より前に戻れたらっ!


 俺は強く願い、意識を手放した。

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